2024年 4月 26日 (金)

異例の「ミニ」補正予算編成...自・公対立が映す連立政権の「限界」

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   ガソリン高などに伴う物価上昇に対応するため、政府は2022年4月26日、総額6.2兆円の「総合緊急対策」を決定した。しかし、決定過程をみると自民・公明両党の意見対立がたびたび表面化し、内容が二転三転するグダグダぶり。政府内からは「自公連立政権の寿命もそろそろか」と突き放すような声まで出始めた。

  • 物価上昇の緊急対策を決め「国民生活を守り抜く万全の備えをとる」と岸田首相
    物価上昇の緊急対策を決め「国民生活を守り抜く万全の備えをとる」と岸田首相
  • 物価上昇の緊急対策を決め「国民生活を守り抜く万全の備えをとる」と岸田首相

崩れてしまった自民党のメーンシナリオ

   政府・与党の迷走ぶりを象徴するのが、総額2.7兆円という2022年度「ミニ」補正予算案の編成だ。

   岸田文雄首相は4月26日夜の記者会見で、「補正予算を今国会に提出、成立させ、いかなる事態が生じても国民生活を守り抜けるよう万全の備えをとる」と、もっともらしく説明した。

   だが、J-CASTニュース 会社ウォッチが「岸田首相の指示した『物価高対策』...今国会で補正予算成立できるか? 自・公せめぎ合い、自民党内の主導権争いも絡む」(2022年4月8日付)でも詳報したように、政府も自民党も当初、今国会で補正予算を組む気など、さらさらなかった。

   時間を少しさかのぼって確認しておくと、首相が「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の策定を閣僚に指示したのが3月29日。財源には、国会の同意なしで支出できる通常の予備費5000億円、新型コロナウイルス対応のための予備費5兆円、計5.5兆円の22年度当初予算の予備費を活用するという内容だった。

   この時点の政府・自民党のメーンシナリオはこうだ。

   まずはガソリン高対策などスピードを重視した「総合経済対策」を組む。対策の規模を数兆円に収めれば、予備費の支出で足りる。総合対策で足元の物価上昇への対応をアピールしたうえで、本格的な経済対策を改めて検討。これを参院選で与党のアピール材料として活用して勝利を勝ち取り、秋の臨時国会で本格的な補正予算を編成する――。

   自民党の高市早苗政調会長は3月末の時点で「補正予算は考えていない」と明言。党内でも財源問題は「終わったこと」という扱いだった。

   自民党内の水面下の主導権争いもあったが、それはさておき、事態が一変したのは、連立を組む公明党が補正必要論を唱えたためだ。

   公明党は「予備費が不足すれば政権の責任だ」(山口那津男代表)とボルテージをあげ、今国会中の補正予算編成を求め続けた。参院選に向け、「公明党の働きかけで補正予算が編成された」という「戦果」を勝ち取りたい思惑とされる。

妥協策として導き出された「ミニ」補正予算

   だが、慌てたのは自民党だ。今国会で補正予算を成立させようとすれば、予算委員会などでの審議が必要になる。当然、野党が政府案を上回る規模の対案を出し、政府案は不十分と批判するのは確実で、与党批判の舞台をわざわざ野党に与えることにもなる。参院選に向け、敵に塩を送る行為に等しいというわけだ。

   春先に補正予算を組んだケースは過去にもあるが、その直後の国政選挙で自民党は手痛い敗北を喫している。参院選の出馬予定者を中心に「補正反対」論が巻き起こり、自民党幹部は板挟みの状況に追い込まれた。

   約1か月にわたり自公協議を続けた結果、妥協策として導き出されたのが「ミニ」補正予算という前代未聞の一手だ。

   今国会中の補正予算の編成で公明党の顔を立てる一方で、中身は予備費の積み増しなど最小限にとどめれば国会での審議時間は最小限で済むうえ、公明党は「今国会での補正成立」という「戦果」を手にできる。連立を維持するための苦肉の策といっていい。

   だが、こうした内情はメディアによって詳しく報じられ、野党に「財源の私物化だ」と政権の攻撃材料を与える皮肉な結果となった。

   自公間に残したシコリも大きい。ある自民党関係者は「もし参院選で与党の票が伸びない事態になれば、責任の押し付け合いになる。連立に亀裂が入る可能性も否定できない」と声をひそめる。

   「ミニ」補正予算が映し出すのは、選挙目当てで結びついた自公連立政権の「限界」かもしれない。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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