2024年 4月 20日 (土)

メンタルが不調になったら、とにかく休もう。

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   メンタルが不調な人に勧めたいのが、本書「元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術」(あさ出版)である。タイトルにあるように、サラリーマン経験のある精神科医が書いた本だ。回復して、前よりもよくなるというその秘訣とは?

「元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術」(尾林誉史著)あさ出版

   著者の尾林誉史さんは精神科医・産業医。東大理学部を卒業後、リクルートに入社。厳しい営業の日々にうつ状態になったという。

   異動した職場の後輩がメンタルを崩したため、産業医の面談に付き添って行ったことがあった。そこで、「休んでください。クリニックは自分で探してください」という対応に怒り、退職して医学部編入試験を受け、弘前大学医学部に合格。現在は、東大医学部付属病院精神神経科に所属しながらクリニックの院長を務める。

  • 心の水位が下がっているときの対応法とは
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メンタル不調かどうか、4つのチェックポイント

   最初に、メンタル不調、抑うつ状態になっているかどうかをチェックする4項目を挙げている。

1 なんだかうつうつとしている
2 最近、大好きなことに、楽しんで取り組めていない
3 三大欲求(睡眠、食欲、性欲)が弱くなっている
4 おっくう感があって、やる気が起きない

   これらの4つの状態が2週間以上続いていたら、心の水位が下がっているので、以下の対応を勧めている。

・仕事の量が多過ぎるなら減らせるか?
・仕事の質にやりがいを持てるようにできるか?
・人間関係をスムーズにできるか?

   これらを総合的に判断して、工夫や改善がある、周囲のサポートが得られるというのなら、状況は好転する可能性もある。しかし、望めない場合はどうするのか?

   もうダメだなとなって心に症状が出ているのだから、「まず休むこと」だ。「期間は1か月から2か月ぐらい。ちゃんとダラダラすると短くなる」と書いている。

   何日か食べなくてもいいし、運動なんてしなくてもいい。風呂に入らなくてもいい。できないことを納得して休むことを優先する。

   配偶者や親の理解が得られないこともあるが、仕方がない。この段階では、会社を辞めるなどの結論を出さず、不安と焦りと折り合いをつけて、正しく休むことがなによりも先決だ。

   調子が戻っても、仕事モードに入るのを急がないこと。会社のメール、LINEなどは見られないようにしておくことも大切だ。仕事や家事をすると、以前の自分と比べて、気持ちが萎えてしまうので、やらない。雑誌をめくる、動画を観るといった、負荷の軽いことから始める。

ちゃんと休むと、4段階で回復していく

   ちゃんと休むと、4段階で回復していくという。セロトニンなどの神経伝達物質が少しずつ増えて、心のウォーミングアップが始まる第1段階。

   すると、休むことに飽きてきて、自分の好きなことに少しずつ取り組むようになる第2段階がやってくる。でも、頑張らないようにする。少しずつ持続力や集中力が戻ってくる。

   第3段階になると、働きたいという意欲が出て、リワークを始める。休職した場合のリハビリのことだ。日中ちゃんと起きているとか、ある程度の作業負荷に耐えられるよう、机に向かうだけでいい。ネットで興味のあることを検索するでもいいそうだ。作業をしているような姿勢と状況を作り、準備していくことが肝心だ。

   第4段階で、復職への準備をしていく。会社によって、復職の制度には違いがあり、いきなり週5日のフルタイム勤務が求められる場合は、準備が必要になる。

   尾林さんの診察を受けた2人が体験を語っている。そのうちの1人、外資系IT企業に勤務する43歳の女性は、転職試験もリモート、仕事もリモートで始まった。睡眠時間を削って仕事をするうちに眠れなくなり、下痢や吐き気が続き、オンラインで泣き出してしまい、産業医と面談し、尾林さんを紹介された。

   休職して休めと言われたが、どうしたらいいかわからなかったという。ところが、5、6週間目で世界を覆っていた膜が、急にすーっとなくなり、はっきり見えるようになった。2か月たったところで、復職を希望し、翌月から週3日、残業なしで働くようになった。

   「ふられた仕事を全部こなさなくても、まあいいや」と思えるようになり、自分に対する意識が変わったそうだ。尾林さんは、理想的な形での回復だが、「誰もがこんなにスムーズにいくわけではない」と付け加えている。

メンタル不調なら、職場の人とはなるべく接触しないで

   クリニック・ドクターの選び方、治療・薬などで知っておいたほうがいいことにも章を割いている。

   精神科の薬には、抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬、気分転換約・抗てんかん薬の5つのグループがあり、薬によって最大用量はまったく異なることや薬を飲み続けることは、負けでも悪でもないことを書いている。

   さまざまなQ&Aも載っている。「会社の親しい同僚とは、連絡を取り合ってもいいでしょうか?」という質問に対して、「仲がいい同僚だったとしても、ダメージを受けるので、なるべく接触しないほうがいいでしょう」と答えている。

   会社の人と接すると、どうしても働いていたときのことを思い出し、何を言われてもダメージを受けるからだそうだ。決まった人事労務担当者1人だけと、月に1回だけメールでやり取りをすることを勧めている。

   評者の周辺でもメンタルな不調から回復した人は少なくないが、残念ながら最悪の事態に至った人もいる。本書を当事者だけでなく、管理職にも読んでもらい、メンタルヘルスへの理解を求めたいと思った。長時間労働になるほどメンタル不調の傾向が増えていくからだ。

(渡辺淳悦)

   「元サラリーマンの精神科医が教える 働く人のためのメンタルヘルス術」
尾林誉史著
あさ出版
1650円(税込)

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