2024年 4月 25日 (木)

「バリバリ働きたいのに!」育休復帰後、職場仕切る後輩に単純作業させられる女性看護師の嘆き でも、月7日の早退・欠勤もあって... 専門家の見方は?(2)

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   「これからバリバリ働こうと思っていたのに!」。3人の子を持つ30代後半の女性看護師の投稿が炎上気味だ。

   育休を経て介護施設の職場に復帰したら、自分が一から仕事を教えた「後輩」が仕切っていた。「だいぶ利用者さんも変わりましたので...」と、投稿者は単純作業しかできないという。そのうえ、上司からは「楽なポスト」への異動を勧められた。

   この女性の子が病気がちで、月に7日も早退、病欠する理由からだったが、女性は異動を拒否して元の仕事への復帰を望んでいる。

   「自分勝手すぎる。職場の大迷惑」という声が圧倒的だが、育休の遅れを取り戻したいという女性の願いは、許されないのか? 専門家に聞いた。

  • 看護師としてバリバリ働きたいのに(写真はイメージ)
    看護師としてバリバリ働きたいのに(写真はイメージ)
  • 看護師としてバリバリ働きたいのに(写真はイメージ)

育休後、責任ある仕事から外れる「マミートラック」とは

   <「バリバリ働きたいのに!」育休復帰後、職場仕切る後輩に単純作業させられる女性看護師の嘆き でも、月7日の早退・欠勤もあって... 専門家の見方は?(1)>の続きです。

――今回の件の背景には、育休後の職場復帰では、どうしたらスムーズに仕事をしていくことができるか、という問題があります。川上さんが研究顧問をされている、働く女性の実態を調べる「しゅふJOB総研」で、この問題を調査したことがありますか。

川上敬太郎さん「投稿者さんは、育休が明けて元のフロアに戻ったにもかかわらず、単純業務しか対応させてもらえないことに強い不満を感じているようです。これは、産休育休後に責任ある仕事や出世コースなどから外されてしまう『マミートラック』に入れられた状態のようにも見えます。
投稿者さんが『マミートラック』に入れられたと理解するべきなのか否かは、職場が投稿者さんに対して単純業務しかお願いしない理由によって変わります。
『しゅふJOB総研』の調査では、仕事と家庭の両立を希望する主婦層に『上司は育児等、家庭の制約がある主婦層の社員に対しても、仕事の成果を求めるべきだと思いますか』と尋ねたところ、85%が『思う』と回答しました。
◇上司は主婦に仕事の成果を求めるべきか

そう回答した理由として、79%の方が『働く以上は主婦であっても成果を出すべき』と答えています。家事や育児など家庭の制約を受けることが多い主婦層は、早退や欠勤などが起きやすい生活環境に置かれています。しかし、働く主婦自身が大半は、仕事で成果を求められるべきだと考えています。職場は仕事の戦力として雇用しているわけですから、当然のことです。
投稿者さんが、ご自身が望む仕事で成果を出せるにもかかわらず、単純業務しか任されないとしたら、職場側の偏見によって『マミートラック』に入れられたように見えます。しかし、月に7日間早退・欠勤してしまい、成果が出せる状況ではないのであれば、職場としては投稿者さんに『戦力として』、今は単純業務に従事してほしいと考えているのだと思います。
当然ながら、単純業務も職場に必要な大切な仕事です。その場合、投稿者さんが単純業務をしっかりとこなすことが成果となります」

意欲があることと、仕事がきちんとできるかは別

子どもが病気になると、すぐ保育園に迎えにいかないといけない(写真はイメージ)
子どもが病気になると、すぐ保育園に迎えにいかないといけない(写真はイメージ)

――たしかにそうですね。しかし、投稿者は復帰後バリバリ仕事をして後れを取り戻したいという思いが強いあまり、自分が育てた後輩が職場を仕切り、大事な仕事から外していると思い込んでいるように見受けられます。

川上さん「投稿者さんがバリバリ仕事したいと意欲を持つことはすばらしいことだと思います。しかし、意欲があることと、望む仕事がきちんとできるかどうかは別です。投稿者さん自身が冷静に判断する必要があります。
投稿者さんが望む仕事はきちんとできるのに、育児という制約に対する職場側の先入観によって仕事から外されたのであれば、職場に問題があると思います。しかし、意欲だけが空回りして、さまざまな支障が生じてしまう状況があるのに、改善策を出すこともなく、不満を口にし続けているだけなのだとしたら、投稿者さんは職場の足を引っ張っていると思います。少なくとも職場の同僚の方々には、後者だと映っているようです。
しかも、投稿者さんは早退したり休んだりしてはいけないと言われているのではなく、それが可能なかたちで職場に貢献してほしいと言われています。投稿者さんに求められているのは、今の自分が最も職場に貢献できることは何かを理解し、実践することです」

――ところが、投稿者は異動の話も断ってしまいました。どうしても元の仕事に復帰したいために、後輩に「連休中にマニュアルを作ってほしい」と依頼までしています。

川上さん「後輩に『連休中にマニュアルを作ってほしい』と依頼するのは、自分は休むけど、後輩には休み中も仕事するよう求めるわけですから、それでは道理にあいません。先輩という立場を使ったパワハラに相当すると考えられます。異動の話を断ったことも含め、冷静さを欠いた判断をしてしまっている可能性があります」

看護師の仕事は「利用者第一」のはずなのに

同じく看護師という夫に育休取って育児参加してほしいが(写真はイメージ)
同じく看護師という夫に育休取って育児参加してほしいが(写真はイメージ)

―― 一方、育休からの復帰経験者の中には、「焦ることはない」と寄り添う発言や、「病児シッターに預けなさい」「夫や双方の親と話し合いをしてワンオペ育児をやめる工夫を」というアドバイスもありました。

川上さん「投稿者さんが望む仕事に就くためには、やはり当然考えるべきことですね。職場から求められている仕事と投稿者さんが望む仕事との間にズレがあるのであれば、そのズレを埋めるための手段を考え出す必要があります」

――川上さんなら、ズバリ投稿者にこれからどのように仕事をしていったらよいか、アドバイスをしますか。

川上さん「投稿内容を拝見して、どうしても違和感を覚えてしまうのは、入居している施設利用者さんに対して、投稿者さんがなすべきことができているのかどうかが見えてこないことです。施設で仕事するうえで最も大切であり、看護師として最も気にしなければならないことは、利用者さんにご満足いただける仕事ができるか否かではないでしょうか?
少なくとも、ご自身の希望が叶えられないことへの不満ばかり先立って、利用者さんを第一に考えている様子がうかがえません。後輩や同僚、上司の方々が利用者さんのことを第一に考えているとしたら、やはり投稿者さんも目線をあわせる必要があります。
もし、ご自身の希望第一に考えているとしたら、職場で戦力として見なされないどころか、周囲に余計な業務負荷をかけるマイナスの存在になっている可能性があります。とくに、最も大きなしわ寄せがいく後輩は、つぶれてしまうかもしれません。連休中にマニュアル作成を依頼するようなことは絶対にやめるべきでしょう」
施設利用者を第一に考えてほしい(写真はイメージ)
施設利用者を第一に考えてほしい(写真はイメージ)

――なるほど。看護師の仕事では「施設利用者第一」という視点が最も大事なのに、それがまったく感じられませんね。

川上さん「投稿者さんがまずすべきことは、看護師として施設利用者さんにどんな看護を提供すべきかをイメージして、その実現のために自分ができることは何かを確認することです。そうすれば、そのためにどう仕事していくべきか、どのような人間関係を築いたらよいか、夫とどう共稼ぎ生活を続けていったらよいかが見えてくるはずです。
そのうえで、月に7日間早退・欠勤したとしても、投稿者さんが望む仕事で十分役に立てると考えるのであれば、その方法を職場側に提案していただきたい。それでも、職場側が一切耳を貸さないようであれば、転職を視野に入れることも検討してよいのではないでしょうか。
逆に、利用者さんを第一に考えた時、今の自分が最も役立てる仕事は単純業務だという結論になるかもしれません。その場合は、単純業務をしっかりとやり切ることです」

休日出勤や残業が評価される空気はよくない

人手不足で看護師の残業が続く職場なのか(写真はイメージ)
人手不足で看護師の残業が続く職場なのか(写真はイメージ)

――今、看護師が不足している状況ですから、何とか投稿者が職場と打ち解けて仕事復帰できるといいですね。

川上さん「その職場のことですが、少し気になるのは、投稿者さんが『育休で迷惑をかけた分、早く仕事を覚えたい』と言っていること。また、『あなたが育休中に彼女(後輩)は、休日、年末年始も自分の都合は言わずに出勤して残業もしていた』と先輩看護師から指摘されていることです。
ひょっとすると投稿者さんの職場の中には、育休取得すると迷惑をかけたと見なされてしまう一方で、休日出勤や残業が評価されるような空気があるのかもしれません。看護師という職務の特性から致し方ない面もあるのかもしれませんが、休みづらく、ムリしなければ業務が回らない体制を改善する方法を追求する必要はあるのだと思います。
看護師は厳しい人手不足なだけにとても難しい課題だとは思います。しかし、投稿者さんのようにバリバリ働きたいと考えている人材が、月に7日間早退・欠勤するようなことがあっても望む仕事に従事し続けられる環境を整えることは、人手不足だからこそ重要なはずです。
投稿者さんの仕事に対する姿勢には改めるべき点があると感じますが、ただのワガママと否定するだけでなく、よりよい職場にしていくための参考として耳を傾けることもまた、大切なことなのだと思います」

(福田和郎)

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