決済手段乱立時代の生き残りに「秘策」あり! 百貨店カードの新スタイルをつくるJFRカード 二之部守社長に聞く(前編)

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   「JFRカード」(大丸松坂屋カード)がリニューアルして、2022年1月にリニューアル1周年を迎えた。それに合わせて実施したキャンペーンなどが、ユーザーから好評を得ている。また、独自ポイントプログラムである「QIRA(キラ)ポイント」がオトクに貯まる、地域の対象店も着々と増えている。

   そんなJFRカードのさらなる成長に打って出た施策のひとつが、「地域」に着目した展開だ。東京、名古屋、大阪、福岡で「局地戦で勝つ!」――。J.フロント リテイリンググループで、決済・金融事業を手掛けるJFRカード株式会社の二之部守社長に聞いた。

  • 「金融サービスをもっと身近にする」と話すJFRカードの 二之部守社長
    「金融サービスをもっと身近にする」と話すJFRカードの 二之部守社長
  • 「金融サービスをもっと身近にする」と話すJFRカードの 二之部守社長

マルチブランド&プライムロケーションでの店舗展開がグループとしての強み

――長年、アメリカン・エキスプレス・インターナショナルに勤務されていました。JFRカード株式会社の社長になられた経緯を教えてください。

二之部守社長「J.フロント リテイリングの当時の社長で、現在は取締役会議長をつとめる山本良一さんとお仕事で一度食事をしたことがきっかけでした。それがご縁で、ありがたくもお声がけいただきました。やはり成長の可能性があることが一番で、やり方によっては大きく成長できるな、と感じました。
   JFRカード株式会社の規模は、競合のカード会社と比べると、それほど大きくありません。でも、会社が投資をしていなかった領域がいくつかあって、そこに手を打つことで可能性が見出せると感じました。人材やシステム、マーケティングなどで、できるところがまだまだあったのです。社員数は、私が社長に就いた時で230人。今では280人ぐらいですが、これは目が届く範囲でいろいろな変革を起こしていける規模といえます。グループの戦略や強み、課題を分析して、しっかりと戦略立てて実行していけば、成長できる可能性を感じたのです」

――コロナ禍もあって、母体である百貨店業界は苦戦しています。そのなかでも、百貨店系のクレジットカード会社を選んだ理由はなんでしょう?

二之部社長「今、百貨店業界は非常に厳しい状況ではありますが、やり方によってはチャンスが生まれる面白い業界だと思います。親会社のJ.フロント リテイリングは、大丸、松坂屋、パルコのほか、GINZA SIX、BINOといった商業施設を運営しています。さらに、2026年末には名古屋の栄地区に隣接する錦3丁目に、ホテルとオフィスを併設する大きな商業施設がスタートします。このように、マルチブランドで展開していることがグループとしての特色です。
   これらの強固なブランドと顧客基盤は、大きな強みだといえます。また、プライムロケーション(一等地)で店舗を運営していることも、もうひとつ強みです。たとえば、東京駅をはじめ、上野、銀座、名古屋の栄や大阪の心斎橋、福岡などに店舗を構えています。マルチブランドで、かつ、プライムロケーション(一等地)で展開するグループとしての総合力が、他のカード会社との差別化にもつながる、JFRカードの魅力だと思います」

百貨店ポイントの「価値」を高める手法を模索

――厳しい百貨店業界ですが、百貨店カードの存在感を高めていくには、どうすればいいのでしょう?

二之部社長「カード利用で大きな誘因となるのが、ポイント施策だと思います。やはりポイントはお客様にとっては魅力で、百貨店のカードもずっと取り組んできました。
   もっとも、現在の百貨店を取り巻く環境は、売上が消費全体の中で絶対額が落ちているとともに、消費の中でのシェアも低くなっています。たとえば、eコマースのショッピングは20兆円ぐらいの市場規模があります。一方で、百貨店業界はピークで9兆円7000 億円近くあった売り上げが、最近は4兆4000億円ほどです。現に、お客様は以前なら百貨店で買ってきたものをオンラインで買うようになってきています。
   ということは、さらに百貨店の売り上げが減り、シェアが低くなったら、百貨店で利用できるポイントの価値も相対的に落ちていくことになります。つまり、ポイントの価値自体は変わりませんが、ポイントの利用価値が縮小していくということです。端的にいえば、貯めたポイントが使われなくなってしまうのです。そのため、それを補っていくような、お客様に対して、魅力あるサービスを提供することが喫緊の課題だといえます」

――そこで、JFRカードではどのような戦略でサービスを展開しているのでしょうか。

二之部社長「弊社では、百貨店は『大丸・松坂屋のポイント』、パルコは『PARCOポイント』、GINZASIXは『GINZA SIXポイント』、そして、当社のカード独自の『QIRAポイント』など、さまざまなブランドのポイントがあり、それらグループのポイントをつないでいく戦略をとっています。これにより、まずはグループ内で、ポイントの利用価値を高めていきます。それこそがまさに、2021年にスタートした独自のポイントプログラム「QIRA(キラ)ポイント」の狙いでもあります。さらに、加盟店でカードを利用すると、おトクにポイントが貯まるスキームを立ち上げて、加盟店事業を拡大しています。貯めたポイントは、加盟店の『地域ポイント』として地域で利用できるようにする仕掛けになっています」

――「地域ポイント」について詳しく教えてください。

二之部社長「名古屋の栄地区には、J.フロント リテイリングが松坂屋とパルコ、商業施設のBINO(と、2026年完成予定の複合施設)を運営していますが、JFRカード加盟店のレストランやヘアサロンなどもたくさんあります。こうした特定の地域でJFRカードを利用するとポイントがたくさん貯まり、使えるサービスというわけです。このように、地域に特化して展開しようと考えています。現在設定している重点エリアは、大阪心斎橋、京都烏丸、神戸元町、名古屋栄、上野御徒町の5エリアです」
二之部社長は「百貨店カードでは貯めたポイントが使われなくなってしまっている」と話す。
二之部社長は「百貨店カードでは貯めたポイントが使われなくなってしまっている」と話す。

――こうした戦略の狙いは何でしょうか。

二之部社長「当社の強みは、店舗を構えている東京駅、銀座、上野、名古屋栄、大阪の心斎橋や福岡といった地域だと思います。日本全国で勝負をしようとは思っていません。また、地域といっても、たとえば東急沿線の二子玉川や自由が丘では勝負しません。私はいつも『局地戦』と言いますが、戦場を広げてしまうと、戦えなくなってしまうからです。また、競合のカード会社と同じようなことをゼロから始めても、同じ結果には絶対になりません。しかも今は、スマートフォンから決済できるため、ドコモ、au、さらにはPayPay、楽天といった新たなライバルが出てきました。もう時代が変わっているのです。やはり、『ここで勝つ』と定めて、まずは局地戦で戦って、小さい勝利を重ねていく。そのために私たちのビジネスは、地域を重点エリアとしていくことが必要だと考えています」

   <決済手段乱立時代の生き残りに「秘策」あり! 百貨店カードの新スタイルをつくるJFRカード 二之部守社長に聞く(後編)>に続きます。

(聞き手 牛田肇)



【プロフィール】
二之部 守(にのべ・まもる)

JFR カード株式会社 代表取締役社長 兼 J.フロント リテイリング株式会社 執行役

東京大学文学部卒業。ニューヨーク大学経営大学院 MBA 修士課程修了 ファイナンス専攻、1986年にアメリカン・エキスプレス・インターナショナル日本支社入社。2000年11月同社グローバル・ネットワーク・サービス 日本/韓国地区副社長。05年8月トラベラーズチェック・プリペイドサービス副社長などを経て、11年9月、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのビジネスデベロップメントⅡのヘッド。15年10月ビジネス・アドバイザリー・サービス代表、17年2月Origamiアドバイザーを経て、18年3月から現職。
1961年生まれ。

姉妹サイト