仕事ができる人になりたければ、「数字」でとらえよ! できる人に共通する「型」伝授
考えてもムダなことを見極めよう...「変数」への意識が仕事の成果に直結
ステップ3では、「変数」を見つけるようにする。ビジネスには、「考えるべきこと」と「考えてもムダなこと」があり、それを見分けるのが「変数」という概念だ。
「変数が何か」をつかむことが仕事の成果に直結する。
これについて、自社で開発したシステムを、法人営業で契約を取る業務を例に説明している。変数を見つけるためには、やることを時系列で整理するのがポイントだ。
たとえば、「最初のアポイントを入れる」「お試し期間としてシステムを試してもらう」「契約の申し込みを獲得する」という3つの工程に分ける。こうすると、アポを増やしながら、どこを頑張ればいいのか、「なぜ?」を繰り返すうちに、連絡やフォローの「回数」が「変数」であったことに気づける。そして、気づいた人から成長する。変数ではないものには固執しない、他人の成功論はすべて変数ではなく「仮説」だ、と安藤さんは考えている。
このテーマを推し進め、ステップ4では、「真の変数」に絞ることを強調している。変数は放っておくと増えていくからだ。そこで必要になるのが「変数を捨てる」という考え方だ。間違った努力をしている部下がいたら、上司は「それは変数ではない」とフィードバックする。
また、上司や会社が変数になってもいけない。どんな人が上司であろうと、部下にとっては平等でフェアな職場づくり、チームづくりが必要だ。組織の中の「カリスマ」への依存は危険であり、「環境のせい」にする経営者は失格だ、と厳しく指摘している。
最後の5つ目のステップが、「長い期間」から逆算すること。つまり、短期的と長期的、2つの軸で物事を見ることだ。
通して読んでみて、「変数」の考え方が独創的だと思った。また、「売上を上げろ」と、精神論で発破をかけるのではなく、「何が変数なのか」を理詰めで考える科学的な姿勢も好ましい。コロナ禍で経営環境が厳しいいまこそ、それを言い訳にするのではない発想が求められている。そこに答えたのが、ベストセラーになった要因ではないだろうか。
(渡辺淳悦)
「数値化の鬼」
安藤広大著
ダイヤモンド社
1650円(税込)