2024年 4月 20日 (土)

日米同業他社「決算書」比較すると...東洋経済「図解で攻略!決算書大解剖」、ダイヤモンド「マンション管理」、エコノミスト「地銀&メガ」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

  • 決算書を読み解く(「週刊東洋経済」の特集から)
    決算書を読み解く(「週刊東洋経済」の特集から)
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日米の同業他社を比較すると決算書がよくわかる

「週刊東洋経済」(2022年6月4日号)
「週刊東洋経済」(2022年6月4日号)

   「週刊東洋経済」(2022年6月4日号)の特集は、「図解で攻略!決算書大解剖」。決算書の特集といえば、ライバル誌「週刊ダイヤモンド」の「最新超楽チン理解 決算書100本ノック」(2021年6月26日号)や「決算書100本ノック! 2022年版」(2021年12月11日号)が役に立ったが、「週刊東洋経済」の本特集は新機軸を打ち出した。

   テスラとトヨタ自動車。アップルとソニー。ネットフリックスと日本テレビホールディングス(HD)など、日米同業他社の決算書を比較して分析、そこから見えてくるものをズバリ解説しているのだから、面白くないはずがない。

   コンセプトはこうだ。「難解な決算書はビジュアル化し、複数の企業同士や経年で比べてみることで、簡単に攻略できる」。実際の企業の決算書を基に始まる。

   電気自動車(EV)世界最大手の米・テスラとトヨタ自動車を比べて、こう見出しを付けている。

「『身軽さ』で高利益率実現」

   年間出荷台数(2021年度)は93.6万台とトヨタの1割強だが、テスラは営業利益率19.2%を記録した(2022年1~3月期決算)。業界上位の利益率を誇るトヨタでさえ10%前後だから、「ありえない数字」と驚嘆された。

   その秘訣は、身軽さと効率化にあった。決算書を見てみよう。まずはテスラ。賃借対照表によると、総資産は8兆770億円(621億ドル)だが、総資産回転率は0.86回とメーカーとしては高い。

   バッテリー生産を内製化しているものの、有形固定資産は約2.5兆円(188億ドル)と少ない。販売体制も系列のディーラーを使わない直接販売でオンラインが中心だから、販売促進費を大きく削減している。純利益を生産台数で割った1台当たり利益を見ると、トヨタの倍以上の水準だ。

   一方のトヨタ。グループ全体の販売台数は1000万台を超える。多くの工場や設備が必要になり、有形固定資産だけで12兆円を計上している。テスラは約2.5兆円だから、いかにテスラが身軽なのかがわかるだろう。

◆ソニーとアップルを比較

   日本企業としては成功モデルと称賛されるソニーと米・アップルを比較した記事も、興味深い。時価総額はアップルの2.3兆ドル(約300兆円)に対し、ソニーグループは14兆円。

   なぜ、こんなにも差がついたのか。ビジネスモデルは何が違うのか。アップルは主力製品のiPhone事業の売上比率は52%だが、アップルストアなどサービス事業も売上と利益を伸ばしている。全世界で10億人とされる巨大なiPhone経済圏の威力の賜物である。

   かたやソニー。祖業のエレキ部門は売上全体の24%に過ぎない。エレキを上回るのが、ゲーム機「プレイステーション5」を持つゲーム事業の28%であり、映画事業、音楽事業も好調だ。

   ゲーム・映画・音楽のエンタメ3分野で、売上高の51%、営業利益の64%を稼いでいる。規模も稼ぎ方も違うが、「お互いに意識し合う存在であることは間違いない」と見ている。

   このほか、米・グーグルと日本のヤフーなどを抱えるZホールディングス(HD)、米・アマゾンと楽天、中国・アリババ3社の比較などが興味深い。

   国内企業同士でも、セブンイレブンとイオン、JALとANA、伊藤忠と三井物産などを比較しながら分析。損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CF)という財務3表をビジュアルで理解しながら、企業研究も出来るのだから、ありがたい特集である。

マンション管理の「格付け制度」が始まった!

「週刊ダイヤモンド」(2022年6月4日号)
「週刊ダイヤモンド」(2022年6月4日号)

   「週刊ダイヤモンド」(2022年6月4日号)は、「住人も購入検討者も必読! マンション管理」と題した特集を組んでいる。

   マンション管理制度が4月から大きく変わり、管理組合の「モノカネヒト」の問題が浮上するというから、マンションに住む人にとって見逃せない内容だ。

   一言でいうと、マンション管理の「格付け制度」が4月から始まり、その内容によって「天国と地獄」の差が生じるというのだ。施行されたのが、「改正マンション管理適正化法」。条件を満たした管理不全マンションについては、行政側が管理組合の意思とは関係なく、能動的に指導勧告助言を行うことが初めて可能になった。

   また、管理組合が作成する管理計画と管理の状況について、国と業界団体で客観的な指標で評価する仕組みができた。

   特集では、まず今、マンションが抱える諸問題に触れている。共用部の管理と維持が使命の管理組合。最重要課題が約12年に1度直面する大規模修繕だ。

   ところが、平均的に4割が修繕積立金不足になっているという。一部のタワマンでは、大規模修繕1回目が終わった時点で、すでに修繕積立金の残高はほぼゼロになり、よりカネがかかる2回目以降の資金を集めるには毎月の修繕積立金をどんどん値上げしないと追いつかないというから深刻だ。

   金持ち組合になるか、貧乏組合になるかの分かれ目は、区分所有者からの管理費と修繕積立金という収入をいかにうまく回しながら、不要のコストを削減するかにかかっている、と指摘する。

   また、理事がいない、総会で合意できないなど、ヒトの問題も深刻だ。2005年より前に完成したマンションでは50代以上が70%以上を占める。OB制度など管理組合運動に大勢を巻き込む方法を紹介している。

   それもこれも、マンション管理の「格付け制度」が始まり、低く格付けされると、入居者に不利益が生じる可能性があるからだ。

   マンションを買うときに、「マンションの管理を買え」という言葉があった。物件そのものよりも、どんな管理会社がかかわっているかを見ろ、という教訓だった。さまざまな問題が生じ、それが現実になったのが、この春ということだろう。

   特集の管理会社ランキングでは、総合力ランキングで大和ライフネクスト、面倒見の良さでJR西日本住宅サービス、大規模修繕対応力でニッセンホームサービスがそれぞれ首位になっている。

銀行の業績の優劣が鮮明に...

「週刊エコノミスト」(2022年6月7日号)
「週刊エコノミスト」(2022年6月7日号)

   「週刊エコノミスト」(2022年6月7日号)の特集は、「強い弱い 地銀&メガ」。経済を支える銀行の業績の優劣が、鮮明になってきた。2022年3月期決算で見えたきたものとは――。

   編集部による巻頭レポート「金利急騰で多額の含み損 晴れないコロナ後の視界」の書き出しはこうだ。

   「新型コロナウイルス禍からの回復途上だった地銀を、金融市場の急変が襲った。今年に入って米国の金利が急上昇し、保有する外国債券(外債)などの価格が急落。2022年3月期決算では、有価証券で多額の含み損を抱えた地銀が続出した」

   きらやか銀行(山形県・第二地銀)は金融機能強化法に基づく公的資金の注入を申請する方針を2022年5月13日に明らかにした。有価証券合計で121億7900万円の含み損を抱えており、1年前より98億円も悪化した。これまでに300億円の公的資金の注入を受けており、返済期限を事実上撤廃し、経営責任も問わないという特例適用の第1号となりそうだ。

   2022年3月期の全99行ランキングを掲載している。きらやか銀行に加え、栃木銀行(栃木県・第二地銀)、もみじ銀行(広島県・第二地銀)、筑波銀行(茨城県)の計4行が100億円以上の大幅な含み損を抱えているから深刻だ。

   SBIホールディングス(HD)は、5月には大光銀行(新潟県・第二地銀)を加え、その「地銀連合」は計9行となったが、規模は小さく業績はさえず、相乗効果は出ていない、とまとめている。

   個別行の問題では、新たな被害者同盟が結成されたスルガ銀行、トップ解任騒動で揺れる山口銀行を詳しく取り上げている。

   一方の3メガバンクはどうなのか。そろって増益になるのは8期ぶりだが、収益性の向上には課題が多い、としている。「低リスクの三菱UFJ」「経費率低い三井住友」「みずほとグーグル提携」と寸評。度重なるシステム障害が問題になったみずほFGがグーグル日本法人との戦略的提携のよって、DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れを取り戻すことが出来るのか、注目される。

(渡辺淳悦)

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