「昭和」を捨てよう! 日本再生へ、これからの時代どんな「心構え」が必要か?

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自分勝手に生きる個人が、生き残る

   こうした議論を受けて、成毛さんは「横並びの価値観」から「自分だけの幸福感」にシフトせよ、と説く。「空気を読まない」「集団に埋没しない」「権威・権力に屈しない」。そんな自分勝手に生きる個人こそが、今後は生き残っていく、と考えている。

   だから、昭和世代には発想の転換を求め、平成・令和世代は「昭和世代に足をすくわれないよう注意しよう」と呼び掛けている。

   それぞれ具体的な提案をいくつもしている。少し挙げてみよう。

【成毛さん】
・政策主導で「人生、最低2回の転職」をスタンダードとしていくべきである。日本人があまり転職しないのは、「給料後払い」の退職金制度のせい。退職金税制を改革せよ
・今、資金を投じておくべきはアメリカである。インターネットの普及で世界中の情報にリアルタイムで触れられる。投資も軽々と国境を越えられる。日本に閉じこもるな
・地方の優良企業は大都市の大企業をスルーしていい。インターネットによって地方からダイレクトに、身軽に世界にアクセスしよう。「東京進出」は今や危険思想なのだ
・ホテル業は1泊10万円単位の「高級路線」にシフトせよ。インバウンド需要の低下は大した危機ではない。日本に相当数存在する「そこそこ富裕層」こそターゲットだ
・手つかずの可能性に満ちた日本の海の活用を、日本経済再生の起爆剤の1つとせよ。規制をゆるめれば、沿岸養殖、クリーンエネルギー、レジャーなど好機が続々と生まれる
・偏差値の高さといった旧来の価値観で学校を選ぶな。はっきりした意志をもって、生きたい学校に行くことが、将来の就職にも有利に働くようになる
・どこでもいいから大学へは行くべきだ。学歴の価値は消え、大学教育は地に落ちているが、大学に行くことには社会的価値がある。グローバル社会のパスポートにもなるのだ
【冨山さん】
・ホワイトカラーが生き残る可能性は2つ。新たな中産階級となりうる「エッセンシャルワーカーへの転身」と、新たな能力を身につける「自己トランスフォーメーション」だ
・仕事の意味と価値は「人の役に立った対価を受け取ること」だと気づいた人には、新たな道が必ず開ける
・卓越した若者が集まるような大学、企業、地域、ベンチャーコミュニティをつくろう。そこから、知識集約産業時代のイノベーション主導成長モデルがスタートする
・イノベーションを自前でやろうと考えなくていい。すでにあるクラウドサービスをユーザーとして活用すればいいのだ。特別な人材、眼力、資金力などは必要ない

   このほかにも、参考になりそうな提言が山盛りだ。

   岸田政権が掲げる「新しい資本主義」に頼らないことが新しい資本主義だ、と最後に冨山さんは逆説的な言い回しで表現している。ようは、昭和のシステムがダメなのだという。「自分勝手に行こう。それが世のため人のためになる」という言葉を聞いて、気が楽になる人も多いだろう。

   バリバリのビジネスパーソンである冨山さんが、「のんびりラクに生きる江戸型ライフスタイル」を勧め、ラテン諸国のように気楽に暮らそうと語っているのは意外な気がしたが、その秘訣はどこにあるのか......。本書を実際に読めば、納得するはずだ。

(渡辺淳悦)

「2025年日本経済再生戦略」
成毛眞・冨山和彦著
SBクリエイティブ
990円(税込)

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