2024年 5月 6日 (月)

男性多い建設業でどうやって「女性活躍」進めたか? ヒントは社内外みんなの声/熊谷組の黒嶋敦子さんに聞く

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男性の育休取得への意識改革も進む...上司の理解や後押し大切

――現在の女性活躍推進の進捗状況はいかがでしょうか。

黒嶋さん「現在の女性活躍推進の目標として、新卒採用に占める女性の割合を25%以上、女性管理職数を2020年4月から10%増とする、子の出生に伴う男性の育休取得率を70%以上とすることを目標に掲げています。
2021年4月時点では、新卒における女性の割合は30%で、女性管理職数は目標人数とする60人に対し66人となり、大幅に10%増の目標を達成できています。子の出生に伴う男性の育休取得率は2021年4月時点で50.9%と昨年より減少傾向にありますが、これには、対象の社員となる母数が増えていることと、コロナの影響で病院にお見舞いに行くことができないなどの特殊な要因も含まれています。
男性の育休取得には、上司の理解や後押しが大切だという声があり、社長からのメッセージ発信や、上司への意識づけも行っており、こうした意識改革によって、今後、達成に近づくものと思っています」

――こうした一連の取り組みの効果や、社内や社外で感じた変化はありますか。

黒嶋さん「新しいことに挑んでいける人財が育成されつつあると感じています。たとえば、熊谷組では、国際社会貢献としてミャンマーで小中学校の校舎を建設するSTAR PROJECTを2015年から進めてきました。このプロジェクトを一貫してリードしてきたのはひとりの女性社員ですが、そこからまた新たな国際貢献の流れが起き、他の社員にも波及しています。
また、弊社は、技術に興味のある人ならだれでも参加できる技術本部主催のR&Dミーティングを催していますが、これを通じて、2021年の福井の本店の建て替えプロジェクトに、多くの若手社員や女性社員が関わりました。
本店の建て替えは、ビルの省エネの取り組みであるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)と耐火木材の技術を駆使したモデルケースとなり、イノベーションの好事例になったと思います」

――今後の課題と考えていることはありますか。

黒嶋さん「長時間勤務については、近年の取り組みによって、この5年間で社員の平均残業時間は月平均で20.5時間減少しました。しかし、外勤の土木建築、いわゆる建設現場の社員については、まだまだ長時間勤務者が多く、これらの改善に今後は取り組む必要があると考えています。
そのためには、さらなる業務の効率化や意識改革が必要です。具体的には、経費精算の簡素化等を考えています。また、女性が出産して、現場で働き続けることができるように、4月に導入した現場社員のフレックス制度等の柔軟な働き方を浸透させ、長時間労働を改善したいと考えています」

――最後になりますが、働くママとしての黒嶋さんのワークライフバランスの取り組みやプライベートで楽しんでいることはありますか。

黒嶋さん「息子が、サッカー観戦が好きなので、Jリーグなどの試合を一緒に観戦しにいくことがあります。ちなみに今日の夜にサッカー日本代表の試合があるので、定時で退社して一緒にテレビで試合を見る予定です」

――ありがとうございました。

(聞き手:戸川明美)



【プロフィール】
黒嶋敦子(くろしま・あつこ)
株式会社熊谷組管理本部 ダイバーシティ推進部長

大学の建築学科卒業後、設計部に入社。その後施工管理業務等を12年経験し、現場代理人を務める。2度の育児休業を経て、購買業務を担当。
業務の傍ら、2015年より女性活躍推進プロジェクトにおけるプロジェクトリーダーとして女性が活躍できる環境整備・風土改革に携わる。
2022年より管理本部ダイバーシティ推進部長として、女性活躍にとどまらず多様な人財の活躍を後押ししている。
ほかに、一般社団法人日本建設業連合会けんせつ小町委員会 けんせつ小町部会委員も務める。

水野 矩美加(みずの・くみか)
水野 矩美加(みずの・くみか)
アパレル、コンサルタント会社を経てキャリアデザインをはじめとする人材教育に携わる。多くの研修を行う中で働き方、外見演出、話し方などの自己表現方法がコミュニケーションに与える影響に関心を持ち探求。2017年から、ライター活動もスタート。個人のキャリア、女性活躍、ダイバーシティに関わる内容をテーマに扱っている。
戸川 明美(とがわ・あけみ)
戸川 明美(とがわ・あけみ)
10数年の金融機関OLの経験を経て、2015年からフリーライター、翻訳業をスタート。企業への取材&ライティングを多く行う中で、女性活躍やダイバーシティの推進、働き方の取り組みに興味をもつ。
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