2024年 4月 20日 (土)

参議院選、各党「場当たり的」物価対策にエコノミストが逆提案! 「円安メリット活用」「従業員持ち株で賃金アップ」を

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   2022年7月10日の投開票に向けて参議院選挙が始まった。

   前回の衆議院選挙(2021年10月)ではコロナ対策が焦点になったが、今回はウクライナ問題によって一段と高まった物価高対策が最大の争点となる。

   各党党首の討論会でも物価高と経済に話題が集中した。エコノミストたちは各党の政策をどうみただろうか――。

  • 日本経済の行方は?(写真はイメージ)
    日本経済の行方は?(写真はイメージ)
  • 日本経済の行方は?(写真はイメージ)

今こそ円安メリットを成長戦略に

   参議院選挙の主要テーマの1つに物価対策がある。各党の物価対策のメニューには大きく分け、(1)給付金・補助金支給(2)消費税減税(3)最低賃金引き上げ、などの3つが挙げられている。

   しかし、「いずれも痛み止め療法にすぎない」と批判して、具体的に3つの抜本的な対策を提案するのは、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏だ。

   熊野氏のリポート「物価対策の考え方~参議院選挙前の政策論争~」(6月23日付)では、まず「円安をマイナスととらえず、メリットとして活用しよう」としてこう提案する。

「筆者(=熊野氏)ならば、『痛み止め』的な物価対策ではなく、物価上昇を受け止められる経済環境づくりを論じる。強い経済の実現である。(中略)成長戦略の推進は、経済を成長させて、拡大再生産プロセスを強化することになり、それを基盤にして賃金が上昇していく。現在は、円安メリットを利用することが、成長戦略の最右翼になるだろう」

   今年3月上旬の1ドル116円から直近の136円まで、ごく短期間でプラス17%の円安進行となった。その円安のメリットを拡大させることが、企業収益を増やし、賃金を増やす原資を生み出す。輸出企業は、販売価格を値下げして輸出数量を増やすことができる。

   すでに海外事業を手掛ける製造業ならば、製品の製造先を海外工場から国内工場にシフトさせることでコストを引き下げて、利益を増やせる。中堅・中小企業も、新しく海外企業と取引を増やして、割安な価格の製品供給ができる。それを政府が後押しするのだ。

物価対策を「痛み止め」にすぎないと指摘されている岸田文雄首相
物価対策を「痛み止め」にすぎないと指摘されている岸田文雄首相

   熊野氏は、円安メリットは製造業の輸出だけではないという。

「最近は非製造業であっても、EC(電子商取引)サイトを通じて、海外の消費者に製品を売るチャネルがある。越境 EC(クロスボーダー電子商取引)の拡大である。このECは海外だけではなく、コロナ禍では国内取引も拡大した。(中略)最近は、ビデオ会議システムが普及してきており、それを利用して輸出やEC拡大などの相談窓口を公的機関がサポートすることも可能だろう」

と、政府や公的機関の支援に期待する。

   もう1つ円安のメリットにインバウンド(訪日外国人)の拡大がある。

「政府が主導して円安メリットを拡大させることは、訪日外国人の受け入れ制限を緩和すれば可能である。6月1日から、入国者数を2万人に拡大した。(中略)この入国制限を1日4万人に増やせば、年間換算で最大約2.2兆円の需要増にすることが期待できる」
円安を活用するインバウンドを拡大しよう(写真はイメージ)
円安を活用するインバウンドを拡大しよう(写真はイメージ)

   現在はツアー客だけだが、個人旅行を解禁すれば、旅行単価を引き上げて消費増をさらに促進することができる。人口減少で悩んでいる地方経済にはプラスが大きい。

   そして、熊野氏はこう結ぶのだった。

「政策論争は、目先の『痛み止め』をどう示すかではなく、力強い経済をいかにつくるかを論じてほしい。近年の与党は、野党の主張に似てきていることが心配だ。政治学の研究では、政権基盤が脆弱な南欧諸国では、減税や給付金の散布が選択されやすく、財政再建が難しいとされる。現在の日本は、政権基盤が脆弱でもないのに、安易な財政拡張が行われやすくなっている」
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