2024年 4月 19日 (金)

スマホ、パソコンの「終活」やる人3%以下! 20代が一番熱心、死後の「デジタル遺品整理」の実態

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   「エンディングノート始めました」...こんなCMがテレビに流れているが、実は、あなたのパソコン、スマートフォンにも「終活」が必要なのだ。

   考えたくはないが、あなたの死後、パソコンやスマホの「デジタル遺品」をしっかり整理しないと、思わぬ個人情報がインターネット上に拡散してしまうかもしれないからだ。そんななか、デジタル市場専門の調査会社「MMD研究所」(東京都港区)が2022年7月22日、「デジタル遺品に関する調査」を発表した。

   デジタルの「終活」に関心が深く、すでに実行している割合は20代が一番多く、40代~70代の実施経験者は1.4%以下というお寒い実態が明らかになった。

  • 「デジタル遺品」の整理、していますか?(写真はイメージ)
    「デジタル遺品」の整理、していますか?(写真はイメージ)
  • 「デジタル遺品」の整理、していますか?(写真はイメージ)

あなたの死後、個人情報がネットに拡散してもいいのか

   「デジタル遺品」とは 持ち主が亡くなり、遺品となったパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に保存されているデータやインターネット上の登録情報などのこと。SNSのアカウント、保存した写真や動画、知人の連絡先、ネットショッピングやネットバンクの利用履歴、クレジットカード情報、IDやパスワードなど種類は多岐にわたる。

   また、「デジタルタトゥー」という言葉がある。digital(デジタル)に、完全に消すことが難しい入れ墨(tattoo)を組み合わせた造語だ。インターネット上に書き込まれたコメントや画像など、一度拡散された情報が半永久的にインターネット上に残されることを意味する。

   さらに、「ゾンビアカウント」という言葉もある。一度だけショッピングサイトを利用するために作成したアカウントのように、作ったもののほとんど利用しないうちに、登録していたことさえ忘れてしまったアカウントだ。ハッキングなどの乗っ取りに気付かず、情報漏洩や不正操作の被害が広がることがある。放置せずに積極的に削除しておくことが賢明かもしれない。

パソコンにたまった個人情報の整理に悩む女性(写真はイメージ)
パソコンにたまった個人情報の整理に悩む女性(写真はイメージ)

   このように、自分が亡くなった後の「デジタル遺品」をどう整理するか、生前に準備しておかないと、不安にかられる人も多いはずだ。故人のパソコンやスマホを引き継ぐ遺族に迷惑がかかる場合があるからだ。隠れた「負債」を知らずに相続することがあるし、また、「デジタル遺品」の中には誰にも知られたくない画像や情報が入っているケースも少なくないだろう。

   というわけで、最近は生前から、自分で「デジタル遺品整理」を少しずつ行っている人が増えている。また、一定期間パソコンを起動しないと、データが自動削除されるなど、デジタル遺品を整理するサービスも色々と生まれている。

デジタルの「終活」に関心が低い?40代

   MMD研究所の調査は、全国の4849人が対象。まず、「デジタル遺品整理」問題の基本用語である「デジタルタトゥー」「デジタル遺品」「ゾンビアカウント」を知っているかどうか聞いた。「知っている」と「言葉は聞いたことがあるが、内容はよく知らない」を合わせた認知は「デジタルタトゥー」が26.9%、「デジタル遺品」が23.6%、「ゾンビアカウント」が14.5%となった=図表1参照

(図表1)「デジタルタトゥー」「デジタル遺品」「ゾンビアカウント」という言葉を知っているか(MMD研究所の作成)
(図表1)「デジタルタトゥー」「デジタル遺品」「ゾンビアカウント」という言葉を知っているか(MMD研究所の作成)

   知っている人が全体の約4分の1しかいないという結果になった。

   FacebookやInstagram、Google、Appleなどでは故人のアカウントを無効化するなど、死後を想定したサービスがあるが、そのことを知っているかどうか聞いた。「知っている」と「言葉は聞いたことがあるが、内容はよく知らない」を合わせた認知度はFacebookやInstagramの追悼アカウントの機能が19.1%、Googleのアカウント無効化管理ツールが17.1%、Appleのデジタル遺産プログラムが11.4%となった=図表2参照

(図表2)死後を想定したサービスを知っているか(MMD研究所の作成)
(図表2)死後を想定したサービスを知っているか(MMD研究所の作成)

   こちらも知っている人が全体の約5分の1以下と、関心の低さが浮き彫りになった。

   さらに、デジタル遺品整理を行ったことがあるかどうか聞くと、自身のデジタル遺品整理は「行ったことがある」が2.6%だった。次いで、「行う予定がある」が12.0%となり、「行う予定はない」(85.5%)が大半を占めた。また、故人のデジタル遺品整理は「行ったことがある」が3.4%、「行う予定がある」が5.4%、「行う予定はない」が91.2%となり、デジタル遺品整理に直接携わった人の少なさが際立った。

   ではいったい、どんな人が自身のデジタル遺品整理を行っているのだろうか――。年代別で見てみると、「実施したことがある」のは20代が多く7.8%、次いで30代の4.7%が続く、しかし、40代以上は40代(1.4%)、50代~70代(いずれも1.0%)と、実行した人は非常に少なかった=図表3参照

(図表3)自身のデジタル遺品整理をしたことがあるか(MMD研究所の作成)
(図表3)自身のデジタル遺品整理をしたことがあるか(MMD研究所の作成)

   「終活」を考えるには一番早い年齢である20代が最も多いというのは、デジタルネイティブ世代で、デジタル遺品整理の重要性を自覚しているということだろうか。

   ちなみに、「行う予定がある」と答えたのは、やはり年齢的に70代が一番多くて15.3%、次いで60代の13.3%となった。一方、「行う予定はない」と答えたのは40代が87.1%と最多となった=再び、図表3参照。他の年代とわずかな差ながらも、子育てや仕事で最も多忙を極める年齢だから、デジタルの「終活」にまで頭が回らないのだろう。

Instagram利用者に多い「自分の写真は永遠に残して」

   さて、自身のデジタル遺品整理で実施した(したい)内容を聞くと(複数回答可)、「ネット銀行・ネット証券・FXなどのオンライン口座やログイン情報」(55.9%)が最も多く、次いで「オンラインショッピング等に登録しているクレジットカード情報」(45.8%)、「写真・動画・音声などのデータ」(44.1%)、「登録しているスマホ決済サービス」(41.2%)となった=図表4参照

   流出すると、自分だけでなく、パソコンやスマホを引き継ぐ遺族に金銭的に迷惑がかかる内容が多いようだ。

(図表4)デジタル遺品整理実施経験者が行った内容(MMD研究所の作成)
(図表4)デジタル遺品整理実施経験者が行った内容(MMD研究所の作成)

   ところで、SNSに登録している人は、自分の死後も友人や知人がそれを引き続き運用してほしのかどうか――。興味深い結果が出ている。複数を登録している人は、1つだけ登録している人に比べて、死後も運用してほしいと望む人が多いのだ。

   図表5図表6はデジタル遺品整理実施経験者に聞いた、Twitter、Instagram、Facebook登録者ごとの死後の自身のアカウント運用意向だ。

   図表5は1つのみの登録、図表6は2つ以上の登録だ。これをみると、1つだけ登録の図表5では「運用してほしい」と望む人はそれぞれ10%台で、「削除してほしい」と望む人がそれぞれ70%台に達している。

(図表5)アカウントを1つのみ登録している人の死後のアカウント運用意向(MMD研究所の作成)
(図表5)アカウントを1つのみ登録している人の死後のアカウント運用意向(MMD研究所の作成)
(図表6)アカウントを2つ以上登録している人の死後のアカウント運用意向(MMD研究所の作成)
(図表6)アカウントを2つ以上登録している人の死後のアカウント運用意向(MMD研究所の作成)

   ところが、2つ以上登録の図表6では、「運用してほしい」と「すべて更新しないで残してほしい」と望む人が、合計でそれぞれ70%台に達している。そして、「すべて削除してほしい」と望む人が、それぞれ10%~20%台しかいないのだ。特に写真メディアのInstagramでは「運用継続」と「残してほしい」と望む割合が非常に高く、「すべて削除してほしい」と望む人は10.0%しかいない。

自分の写真は永遠にインターネット上に残しておきたい(写真はイメージ)
自分の写真は永遠にインターネット上に残しておきたい(写真はイメージ)

   複数のSNSに登録しているということは、それだけSNSを通じて人々とつながっていたいという意識が強いのだろう。そして、懐かしい人々と一緒にこの世に生きた証として、自分たちの写真は永遠にインターネット上に残しておきたいという気持ちの表れなのだろうか。

   調査は2022年6月28日~6月30日、20歳~79歳の男女4849人にインターネットでアンケートを行った。さらに、自分でデジタル遺品整理を行った経験者と行う予定のある計238人に集中的に聞いた。

(福田和郎)

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