2024年 4月 27日 (土)

中国経済まで減速? エコノミストが指摘...不安要素の数々「ゼロコロナ」「文化大革命逆戻り」「指導部権力闘争」「就職氷河期」

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中国の大学生が「就職氷河期」に入った理由

中国政府の規制強化で就職できない大学生が増えている(写真は中国国旗)
中国政府の規制強化で就職できない大学生が増えている(写真は中国国旗)

   一方、習近平政権の規制強化が若年層の深刻な失業率の増加を招いていると指摘するのは、みずほリサーチ&テクノロジーズ主任エコノミストの月岡直樹氏だ。

   月岡氏のリポート「中国の若年失業率は高止まりへ~新卒急増で就職環境は一段と厳しく」(7月22日付)によると、16~24歳の若年失業率の上昇が顕著で、2021年12月から2022年6月の半年間で14.3%から19.3%へと、5.0%も上がった=図表4参照

(図表4)都市調査と若年層の失業率(みずほリサーチ&テクノロジーズの作成)
(図表4)都市調査と若年層の失業率(みずほリサーチ&テクノロジーズの作成)
「若年失業率の上昇には、コロナによる景気減速要因だけでなく、構造的な要因と政策的な要因も作用している」

   月岡氏はこう指摘する。まず、構造的な要因は、高学歴化が進んだ結果としての雇用のミスマッチだ。大卒・大専卒はホワイトカラーを志向し、製造業の現場は3K(危険・汚い・きつい)の職場だとして敬遠する。ところが現在、その深刻な人手不足の状態なのだ。

   一方、高学歴の若者たちが目指すホワイトカラーの職場は、政策的な要因で規制が強化され、大幅に採用人数を減らす羽目に陥っている。ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏の2本目のリポートにあった、ITや教育業界への締め付けである。月岡氏はこう説明する。

「中国政府は2020年12月以降、ITプラットフォーマーに対する独占禁止法に基づく取り締まりを強化しているほか、2021年7月には教育サービスについて、教育格差の拡大を防ぐために小中学生向け学科類科目の学習塾を非営利化させる方針を打ち出した。これが、2022年の就職戦線に暗い影を落としている。ITプラットフォーマー各社は(中略)従来の拡大一辺倒の事業戦略を見直さざるを得なくなっており、大規模な組織再編や人員削減にも乗り出している」

   たとえば、アリババが年内に全従業員の15%に当たる約3.9万人をリストラするほか、テンセントも5月までにクラウド・スマート部門で15%、ゲーム部門で10%の人員を削減した。また、7月には新たに、テンセントやバイトダンスなどが数千人規模のリストラを進めていることが報じられるありさまだ。

   図表5は、高学歴の若者が目指す「教育・研修」「ネット・EC」関連の業界の求人倍率だ。これを見ると、インターネットと教育関係の求人がガタ落ちしていることがわかる。月岡氏はこう結んでいる。

(図表5)大学生が目指す業界別の求人倍率(みずほリサーチ&テクノロジーズの作成)
(図表5)大学生が目指す業界別の求人倍率(みずほリサーチ&テクノロジーズの作成)
「(インターネット)各社ともリストラと並行してハイスキルなIT技術者の獲得や新規事業での採用を続けているとみられるものの、業界全体として雇用創出力が落ちていることは否定できない。(中略)教育サービスは、規制強化によって各社とも既存事業の大規模なリストラや非学科類科目(スポーツ、音楽、芸術等)授業の拡充を含む業態転換を迫られて生き残りに必死であり、新規採用どころではない状況である」
「中国版の就職氷河期世代が生み出されることが懸念される。日系企業にとっては優秀な人材を確保する追い風となろうが、中国経済にとっては若年層の所得減少が消費を抑制させる逆風になろう。政府には、高学歴層が求めるホワイトカラーの就業機会を創出する抜本的な対策が求められる」
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