2024年 4月 24日 (水)

気になる「長期金利」の上昇傾向...それにともない、「住宅ローン金利」今後どうなる? 専門家が解説【1】(中山登志朗)

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   周知のように、ロシアのウクライナ侵攻を契機として、サプライチェーンが世界的に逼迫・弱体化しています。

   それにともない、エネルギーおよび資材価格、食糧価格の高騰を招いたことによって、国内でも消費者物価指数が上昇、インフレを誘発しています。

利上げ進める欧米、金融緩和続く日本

   アメリカのインフレは日本より深刻です。前年比で10%程度のインフレが続いており、その抑制が急務となっています。

   インフレを抑制するためには、金融引き締めを実施して、「政策金利」を引き上げ、消費を落とし過ぎないように留意しつつ、経済を抑制する、というのが通常の金融政策です。

   そのため、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は2022年に入って3月に利上げを実施しました。さらに、5月から3か月連続で利上げして、現状ではゼロ金利から2%台へと急激に金利を上げています。

   ヨーロッパのECB(ヨーロッパ中央銀行)もアメリカほどではありませんが、それでも7月にゼロ金利を解除して0.5%の金利引き上げを決定しました。

   一方の日本は、どうか――。欧米の金融政策とは対照的に、7月の「金融政策決定会合」で、金融緩和の維持を決めました。

   引き続き、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を実施し、短期金利については、日本銀行当座預金のうち、政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用。長期金利についても、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けずに、必要な金額の長期国債の買入れを行うこととしました。

   また、この方針を実現するために、10年物国債金利を対象として、0.25%の利回りでの指値オペを毎営業日実施することも確認されています。

新発10年物国債利回り...6月に一時、「0.25%」を上回ってしまい...

   このような金融政策の違いによって、主に日米の金利差が拡大することになり、円を売ってドルを買うという流れが生まれています。

   それにより、円安に推移することで、輸入品のコストアップがさらに加速して、国内のインフレ率も今後高まるのではないか、との懸念があります。

   そうなれば、金融緩和策の継続ではなく、金利を引き上げて「金融を引き締めよ」との声が高まることも考えられます(それでも金融緩和策を継続せざるを得ないのは、主要先進国のなかでは突出して多いGDP比2.5倍に相当する国債発行額約1026兆円の存在が大きいと言われています)。

   しかも、金融緩和策によって、限りを設けないで必要な金額の長期国債の買入れを行うこと=「指し値オペ」を実施することで、市場にある大半の国債を購入した結果、購入可能な国債がわずかとなって、それ以上のコントロールができなくなり、金利が上昇してしまうという皮肉な現象も発生しました。

   上記のように、長期金利=新発10年物国債の金利を0.25%以下に誘導することが目標の日銀の金融政策は、6月初旬に0.25%を上回ってしまい、しばらくの間、関係者を慌てさせることとなりました。

   <気になる「長期金利」の上昇傾向...それにともない、「住宅ローン金利」今後どうなる? 専門家が解説【2】(中山登志朗)>に続きます。

(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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