2024年 5月 3日 (金)

お持ちの請求書や領収書、受け付けない会社も出てくる!...話題の「インボイス制度」どういうもの?

   2023年10月1日から消費税法が変わり、インボイス制度が導入される。個人事業者やフリーランスなど多くの人に影響があるといわれている。本書「60分でわかる インボイス&消費税 超入門」(技術評論社)は、そのポイントを要領よくまとめた本だ。

「60分でわかる インボイス&消費税 超入門」(土屋裕昭著)技術評論社

   著者の土屋裕昭さんは税理士、CFP、登録政治資金監査人。幅広い法人クライアントをサポート。共著に「小さな会社は『決算だけ』税理士に頼みなさい」「やさしくわかる経理・財務の基礎知識」などがある。

2023年10月1日からスタートするインボイス制度...登録するとトクなのか?

   インボイス制度とは、2023年10月1日からスタートする、事業者が納める消費税額の計算に関する新しいルールだ。

   消費税の納税額の計算は「売上時に預かった消費税-仕入や経費で支払った消費税」(原則課税)が原則だが、受け取った請求書や領収書がインボイス(=適格請求書等)でないと、その分の消費税を差し引けなくなる。

   インボイスは、従来の請求書や領収書に「登録番号」や「税率ごとに区分した消費税額」などを記載したものだ。登録番号をもらうためには、国税庁にインボイス制度への登録申請をして、「適格請求書発行事業者」になる必要がある。本書では、登録申請の手続きも説明している。

   登録申請は2021年10月1日から2023年3月1日までが原則なので、最近、インボイス制度への関心が高まっているわけだ。

   すべての事業者がインボイス制度への登録が必要かというと、そうではない。登録は任意だ。登録しないほうがトクな事業者もいる。ただし、個人事業主も含め、登録しないと、不利益を被る事業者のほうが多いと、土屋さんは予想している。

   なぜなら、請求書を受け取る側(売上先)が原則課税を採用している場合、登録していない業者からの請求書や領収書の消費税を差し引くことができず、消費税の納税額が増えることになる。そのため、取引を打ち切られる可能性が考えられるからだ。

   本書の冒頭に、登録すべきかどうかを判定するシートが載っている。消費税の納税義務は2年前の課税売上高で決まる。1000万円超であれば、課税事業者となって消費税を納める。一方、1000万円以下であれば免税事業者となる。

◆登録する必要性が高い業種、低い業種

   業種別に免税事業者のインボイス制度への登録の必要性を検討している。

   登録の必要性が高いのは、「士業・コンサルタント、システムエンジニア、フリーライター、一人親方など」だ。売上先が課税事業者(原則課税)の可能性が高い。または、免税事業者であることを知られると、ブランドを損なう恐れがあるからだ。

   「飲食店や小売店など」は、ビジネスの形態によって判断が必要だという。領収書を必要とするビジネス利用客が多ければ、登録する必要性が高くなる。

   一方、「学習塾、理髪店、歯科医院、マッサージなど」は、経費精算のための請求書や領収書を必要としない個人客が多いので、登録する必要性は低い。

免税事業者のままでは、取引を打ち切られる可能性

   免税事業者のままだと取引を打ち切られる可能性が大きいことについて、繰り返し強調している。

   適格請求書発行事業者ではない事業者が発行する請求書は、消費税の仕入税額控除の対象にならない。その分、発注元である課税事業者が負担する消費税額が増えてしまう。

   「消費税率が10%だとすれば、ほぼ1割仕入値がアップするのと同じ」ことだから、発注元は免税事業者やインボイス制度への未登録事業者との取引をやめ、適格請求書発行事業者への切り替えを進めることになる、と予想している。

◆白色申告から青色申告への切り替えを

   個人事業主やフリーランスが課税事業者になると、これまでの所得税の確定申告に加え、消費税の確定申告が必要になる。申告期限は対象となる年の翌年1月1日~3月31日と、所得税の確定申告とほぼ同時期な上に、納税額の計算も所得税に比べて複雑だ。

   現実的には会計ソフトの機能に頼るか、税理士などに頼むことになる。土屋さんは、「現在、白色申告の人はインボイス制度の開始を契機に、青色申告への移行を検討してみてもいいでしょう」とアドバイスしている。

   一方、経理の負担増を避けるために、簡易課税を選択するのも一つの手だ。

   受け取った請求書が適格請求書や適格簡易請求書であるかどうかの確認が不要、免税事業者からの仕入でも、消費税の納税額が増えないなどのメリットがあるが、業種による簡易課税の「みなし仕入率」によっては、不利になるケースもあるので注意が必要だ。

   簡易課税の届出では、事業区分がポイントになる。

   第1種事業(卸売業)から第6種事業(不動産業)まであり、みなし仕入率は90%から40%まで異なる。国税庁がフローチャートを示している。ごまかしは利かないので、正しく自己判定することが大事だ。

   企業の経理担当者は適格請求書かどうかの選別など、これまで以上に負担が増えるだろう。また、一般社員に対してはタクシーや飲食店、小売店などの領収書やレシートが「適格簡易請求書である業者を利用すること」などの通達が出ることが予想される。

   税制度は複雑だ。個人事業主やフリーランスの人は、本書などを利用して、自己防衛をしておく必要がある。

(渡辺淳悦)

「60分でわかる インボイス&消費税 超入門」
土屋裕昭著
技術評論社
1320円(税込)

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