2024年 4月 20日 (土)

相手の本音をドンドン引き出す会話のテクニックとは?

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   相手が何を考えているのか分かれば、ビジネスや恋愛などで、どんなに役立つだろうと想像したことはないだろうか。

   本書「悪魔の傾聴」(飛鳥新社)は、ノンフィクションライターの中村淳彦さんが、「相手の本音をどんどん引きだす方法」を書いた本である。以下のようなニーズがある人に勧めたい。

・お客様のセンシティブ情報を聞き出したい
・履歴書だけではわからない応募者の人柄を深く知りたい
・部下・上司とのコミュニケーションを深めたい
・指名客を増やしたい
「悪魔の傾聴」(中村淳彦著)飛鳥新社

会話で絶対やってはいけない3つのこと

   中村さんはこれまで、貧困問題をテーマに取材、執筆してきた。関心を持っているテーマは、「日本の貧困の現実」。著書に、「東京貧困女子。」「新型コロナと貧困女子」「日本の貧困女子」などがある。

   AV女優や風俗、介護などの現場で働く女性たちの声に耳を傾けてきた。彼女らの壮絶な体験が書かれた著書を読み、「どんな取材をしてきたのか?」と思っていたが、最初に意外なことを書いている。

「相手に好かれる会話をすることや、相手から本音を引きだすことは、コミュニケーション能力や、ネアカ・ネクラなど性格はまったく関係ありません。必要なのは簡単な技術と、日々の意識の心がけです」

   果たして、どんな技術なのだろうか。

   冒頭で「人と会話する場面で絶対にやってはいけないこと」を3つ挙げている。

・否定する
・比較する
・自分の話をする

   これらを日々意識して、実践するだけで会話の成功率は飛躍的にアップするという。

   本書は、基礎編、実践編、上級編などで構成、全部で33のポイントと11のテクニックを披露している。すべて紹介することはできないので、いくつかのエッセンスにふれたい。

基本技術「ピックアップ・クエスチョン」とは?

   基本技術として、「ピックアップ・クエスチョン」を紹介している。「すでに相手が発言した単語や主旨を拾い、即時に短い質問を投げかけるテクニック」だ。そうやって、相手の興味関心や話したいことを探っていく。

   起点の会話が弾めば、話をさえぎったり、自分の話をするなど大きなミスをしたりしない限り、どんどんと広がり、さまざまな情報を得ることができる。人は、話したいことを聞いてくれた相手に好感をもつので、相手が同僚なら社内の関係性は円滑になるという。

   やってはいけないのは、相手の話を自分の知るネタにすり替え、相手の話をつぶしてしまうことだという。相手の自己開示から始まった場面では、自分の好き嫌い、興味関心は一切関係ないと心得て、とにかく相手が話を継続できる質問を心がけるようにする。

   年長者は、社内で年下にはついつい上から目線で語りがちだ。その結果、時代遅れでニーズのない自分語りをして、若者の話をさえぎってしまう。「多くの場面で、せっかくの会話を自分の話で壊している」と、指摘する。

「YES・NO」で答えられる質問をしない

   「なるほど」と思ったのは、会話の始動で「YES・NO」で答えられる「クローズド・クエスチョン」をしてはいけないということだ。たとえば、「家賃は高いのですか?」ではなく、「家賃はいくらくらいですか?」と尋ねる。

   始動でクローズド・クエスチョンを投げてしまうと、相手に高圧的な印象を与えてしまったり、聞き手に対して疑問符が浮かんでモチベーションが下がったりするという。

   このほかにも、「必ず対角線に座る」「質問→返答→質問→返答によって膨らませていく」「雑談はせず、すぐに本題に入る」「相手が主人公の物語をイメージし、起点をつくる」などのポイント、テクニックが重要だと思った。取材経験が長い評者でも、いろいろなミスをしてきたな、と反省を迫られた。

   また、「欲望の断捨離」という言葉も心に響いた。それは、聞き手の心のなかにある「相手に信頼されたい」「相手から気に入られたい」「あわよくば、友達になりたい」みたいな欲望が大きな障壁になっているという指摘だ。

   たくさんの欲望があるなかで、どの欲望に絞るべきか。商談の成功、部下の幸せのため、モテたい――なんでもいいから、欲望を一つだけに絞り、その欲望を達成させるためだけに相手に向き合うことだと。

   ここには単なるテクニックを超えた、深いものがあると思った。

(渡辺淳悦)

「悪魔の傾聴」
中村淳彦著
飛鳥新社
1540円(税込)

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