2024年 4月 30日 (火)

滝沢秀明・副社長の電撃退任に思う...カリスマ創業者からの事業継承の難しさ(大関暁夫)

企業経営の透明性を高めるには

   社内に不協和音があるのだとすれば、その原因として、カリスマ創業者から事業を引き継いだ後継者の組織マネジメントを疑ってみる必要はあるでしょう。

   一般的に、カリスマ創業者からの事業継承は、非常に難しいものです。

   創業者であり、カリスマであるからこそ人一倍求心力があるわけで、後継者がこれをマネて、強引なマネジメントをして、社内外から受け入れられずに求心力を失ってしまったという例を、私は目の当たりにしたことがあります。

   もちろんジュリー氏がそのケースにあたるか否かは分かりませんが、オーナー系会社のオーナー経営者はおうおうにして、その立場の強さゆえ、普通の指示でも本人の意図以上に強引に見えてしまうことは多少なりともあるのではないかと思うのです。

   ならば、これをうまくハンドリングしつつ、自身のマネジメントに客観性を持たせことが肝要であり、そのために経営を第三者の目にさらし、透明性を高めるという方法は大いに検討の余地があろうかと思います。これはまた同時に、組織に自浄作用を持たせることにもつながるでしょう。

   そこで、考えられるのは、究極は株式公開して、第三者である株主から、経営に対する監視を強めてもらうという方法があります。

   しかし株式公開は、その維持コストや労力を考えると良い点ばかりではなく、当面多額の資金調達を視野に入れていない企業においては、ベストな策ではありません。となると、採るべき手段は、経営陣に社外取締役を入れる方法ではないでしょうか。

   できれば、役員の過半を占めるような形で。かつ、委員会制をひいて、重要な幹部人事は社外取締役を中心とした指名委員会で決める方法にするなら、透明性、公平性を社内外に示すことにつながり、社内の不協和音や外からのあらぬ批判の低減にも資するのではないかと思います。

   会社経営において、株主利益が最優先される株主資本主義が当たり前だった時代なら、社長=大株主のオーナー系企業においては、オーナーの意向優先姿勢も許されたわけなのですが、今は時代も変わりました。今や上場企業はじめ、社会的存在を色濃く持つ企業はステークホルダー資本主義が主流であり、ESG投資でもその点が重視されています。

   すなわち、株主だけでなく、従業員、取引先、顧客の利益を均等に視野に入れた経営が求められているのです。ジャニーズ事務所のような社会性の高い企業の場合には、上場企業でなくとも、こういった観点は重視されるべきかと考えます。

   ジャニーズ事務所のめぐる突然の騒動を耳にして、同社がカリスマ創業経営者の後継マネジメントという非常に難しい局面を迎えたという印象を強くしました。同社が今後も発展を続けていくためには、外部の目を入れて、経営の透明性を高めることが最善の策なのではないかと感じた次第です。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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