「企画書を提出しろ」と上司に言われ、あたふたしたことはないだろうか。本書「企画書・提案書の作り方100の法則」(日本能率協会マネジメントセンター)は、企画書の具体的な作り方だけでなく、情報収集力、アイデア発想力、書類作成力など、さまざまなビジネス能力を向上させるヒントに満ちている。「企画書・提案書の作り方100の法則」(齊藤誠著)日本能率協会マネジメントセンター著者の齊藤誠さんは、株式会社創造開発研究所代表取締役社長。国内および外資系の広告会社に通算22年間勤務。その後、マーケティングソリューションを提供する会社の取締役副社長を経て、現職。企業戦略、マーケティングなどを専門にしている。著書に「企画立案の教科書」などがある。まずは「まね」から始めよう!齊藤さん自身が、これまで1000以上の企画書を書いてきたという。採用され大成功した企画もあれば、採用されなかった企画もたくさんある。それらの経験から「どのような点に注意すれば採用されやすいか」などを学び、その秘訣を「100の法則」という形で整理したのが本書だ。100すべてに触れることはできないので、いくつかポイントを紹介しよう。まず、「企画書を難しいものだと嫌わなければ、誰でも書けるようになります」とハードルを下げている。誰かの企画書の「まね」をしてもいいという。齊藤さんも上司の企画書を5回ほど読み、企画書で使う言葉や、形式を覚えたそうだ。何回かまねをして書くうちに、自分のスタイルも生まれてくる、と励ましている。誰からも依頼されなくても、やりたいことがあれば、「自主企画書」を作り、積極的に提案することを勧めている。企画書を書けば、やりたいことの実現につながり、評価も上がるからだ。また、論理的思考が身につく、アイデアを生む力がつく、問題解決のノウハウが増えるなどのメリットもある。実際の手順に従って説明している。上司から、あるいは、取引先から企画書を依頼される場合、たいていは依頼内容や課題を説明するオリエンテーションが行われる。たとえば、新商品の発売キャンペーン企画であれば、商品は何で、どんな特長があるのか(What)、使用する人、購入者は誰か(Whom)、キャンペーンの時期(When)、販売対象エリアはどこか(Where)など、チェックすべき8つのことがある。ここでポイントは、いかに正しく聞くことができるかが最初の一歩だ。口頭での説明には、書類に記載されない重要な内容が含まれていることがあるので、必ずメモを取るようにしよう。「伝わる企画書」には4つの要素がある次に、企画書作成に取り組むわけだが、いきなり書き始めてはいけない。企画書作成の7つのステップを踏んで進めていく。1どんな企画書を書くのか決める2作成スケジュールを立てる3フォーマットを決める4仮説を立てて構成を決める5情報を入手し、整理する6課題解決方法を考える7企画書に書き込むこういった流れだ。課題解決のための仮説を立てたら、4つの要素で構成すれば、「伝わる企画書」になるという。たとえば広告キャンペーンの企画なら、以下の内容になる。1背景 ターゲット分析、商品分析、競合分析などを記載2目的 キャンペーン目的を簡単に記載3戦略 コンセプト、ターゲット規定、キャンペーン期間、エリア、使用媒体などを記載4実施計画(戦術) 使用媒体の具体的媒体計画を記載企画書に信憑性と説得力を与えるのは、正しい情報だ。年間計画を提案する「戦略的企画書」では、経済や技術の全体的な動向に関する「マクロ情報」が欠かせない。一方、短期的な企画に関する「戦略的企画書」では、ターゲットを分析した「企画補強情報」と、企画を実行するうえで必要な「実行必要情報」が大切になる。アイデアを発想するためネットの活用法、ブレインストーミング、欠点列挙法・希望点列挙法などのノウハウも多数紹介している。「背景」「目的」「戦略」の書き方とは?「背景」の書き方は、企画書の種類によって異なる。戦略的企画書では、背景として現状分析を記載する。イベントや短期のプロモーション活動などの戦術的企画書では、「与えられた課題を、このように理解して企画を進めます」という与件の確認から始まる。「目的」については、達成したいゴールを記し、数値目標を示せば、より具体的になる。目的は「当地への海外観光客数の増加」、目標は「昨年対比30%増を目標とする」といった具合だ。「戦略」のパートでは、ターゲットは誰か、基本コンセプト、エリア、期間、おもな実行手段、全体予算の6つの項目を明確にすれば、できあがるという。これらの要素を最小限のスペースにまとめた「1枚企画書」は、検討してもらえる可能性が高く、使い勝手もいい。最後に、企画書の「3×3の法則」を守れば、採用されやすくなる。「読まれる」ためには、「外見や体裁がよい、簡潔である、文章が正確」の3つ。「理解される」ためには、「論理的である、内容が正確、具体的である」の3つ。採用されるには「要件を満たしている、面白い・興味深い、要望に沿っている」の3つが必要、ということだ。会社員時代に評者は多くの企画を立案し、実行してきたが、本書が示しているような、しっかりした企画書を書いたことはなかった。今思えば、ビジネスとは少し異なる分野だったから許されたのかもしれない、と遅ればせながら冷や汗が流れた。(渡辺淳悦)「企画書・提案書の作り方100の法則」齊藤誠著日本能率協会マネジメントセンター1650円(税込)
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