2024年 4月 27日 (土)

深刻化が予想される「物流の2024年問題」 ドライバーの確保「他人事でなくなる」事態に

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   トラックのドライバー不足などによる物流危機が懸念される「物流の2024年問題」が話題だ。

   トラックドライバーの年間労働時間は現行、全産業平均に比べて2割程度長く、労災請求件数、支給決定件数ともに最も多い業種とされる。

   労働環境を改善する必要があるなか、コロナ禍の「巣ごもり需要」で、インターネットショッピングの利用などのEC市場が急拡大する一方、物流業界ではドライバーの高齢化や人材不足、長時間労働は深刻化している。

   2024年から、トラックのドライバーなどに対して働き方改革関連法が適用されることになると、運送業者らが抱えるドライバーのコストが膨らみ、経営の負担はますます重くなるという。

  • 「物流の2024年問題」とは?(写真はイメージ)
    「物流の2024年問題」とは?(写真はイメージ)
  • 「物流の2024年問題」とは?(写真はイメージ)

物流・運送業の先行き、72%が「さらに厳しくなる」

   時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間で、急用などの特別な事情があって、かつ労使が合意する場合でも年720時間以内となっている。

   事務や作業など、一般の職種については、大企業は2019年4月1日から、中小企業は20年4月1日から適用されている。だが、24年4月1日以降は、5年間の猶予期間を与えられていたドライバーにも、この時間外労働の上限が適用される(ただし、ドライバー職には時間外労働の上限適用後も一般の職種よりも長い「年960時間・月平均80時間以内」となる)。

   今後さらに人手不足が予測されるなか、物流・運送業の先行きについて75.2%の経営者が「さらに厳しくなる」と考えていることがわかった。M&Aキャピタルパートナーズ(東京都千代田区)が物流・運送業の経営者101人に聞いた(2022年11月7日の発表)。「現状維持」と答えた人は13.9%だった。

   また、「ドライバー不足への対策を実施していますか」と聞いたところ、「すでに実施している」と答えた経営者は22.8%、「実施する具体的な予定がある」とした人は23.8%だった。合わせて46.6%の経営者がドライバー不足への対策を実施、あるいは実施を予定していると答えた。

   さらに、「すでに実施している」「実施する具体的な予定がある」と答えた人に、「ドライバー不足への対策」(複数回答)を聞いたところ、「労働時間の改善」が72.3%、「ドライバーの賃金向上」が51.1%、「採用・求人の強化」が51.1%となった。

現在の経営課題は燃料価格、ドライバー不足と高齢化

   調査では、「現在の物流・運送業の経営における課題」についても聞いた(複数回答)。「燃料価格への対応」と答えた経営者は67.3%、「ドライバー不足」が60.4%、「ドライバーの高齢化」が55.4%となった。

   現在のドライバーとの関係性について、特に配慮していることを聞いたところ、こんな声が寄せられた。

「ドライバーとの対話を重視、特に悩み事全般を包み隠さず話せる状態の構築と維持。心理的安心感の担保を心掛けている」(62歳)
「売上面で向上心を持てるメリハリのある働き方の推奨」(53歳)
「勤務時間の明確化と超過勤務手当はキチンと支払う」(63歳)
「居心地の良い職場環境(人間関係)に気を配っている」(55歳)
「責任の分散化、労働環境の改善」(54歳)
「休みを取りやすい環境を作ったり、定期的に話をする時間を作ったりしたい」(50歳)
「労働時間と拘束時間」(45歳)
「ドライバーの意見も尊重しつつ、より良い環境作りをしている」(40歳)

   それでなくても、ロシアのウクライナ侵攻などによる燃料価格の高騰で、運送業者らの経営状況は厳しい。こうした事態に、「2024年問題」がさらに追い討ちをかけることになると、物流危機は深刻さを増すことになる。

   ドライバーの確保は地域別でみても、地方に加えて関東、中部、近畿の3大都市圏でも不足する割合が10%を超え、「ドライバーを確保するには、他産業並みの労働時間と賃金にする必要がある」との指摘もある。

   運送業者の中には、トラックドライバー不足は荷主の製造業などばかりでなく、不特定多数の荷主の貨物を1台の車両にまとめて積載して、全国規模で輸送する特積み事業者や元請けの運送業者などへの影響も大きい、との声がある。

   もちろん、運送コストを商品価格などに転嫁することになれば、さらなる物価上昇につながる。物流危機の深刻化は、他人事ではないというわけだ。

   なお、M&Aキャピタルパートナーズの「物流・運送業のM&Aの意識調査」は、2022年10月24日~25日にインターネットで実施。有効回答は、物流・運送業の経営者101人だった。

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