2024年 5月 19日 (日)

「老人ホーム入居権譲って」と言われ、OKすると1000万円要求! 高齢者の「親切心」付け込む詐欺横行、入居権なんてウソなのに

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   有料老人ホームや介護施設などに入居する権利を譲ってほしい――。

   こんな口上で誘い込み、ありもしない「老人ホーム入居権」を「譲ってほしい」と話を持ち掛ける詐欺が再び横行している。

   そして、「(老人ホームに)入る気はありませんからいいですよ」と譲ると、「あなたの名義で申し込むので、一度、お金を振り込んで」と、なんと1000万円も要求するのだという。

   国民生活センターでは2022年12月7日、「高齢者を狙った劇場型勧誘再び!?」という警告リポートを発表した。高齢者の親切心に付け込む悪らつな手口とは――。

  • 「老人ホーム入居権譲って」という話にご注意を(写真はイメージ)
    「老人ホーム入居権譲って」という話にご注意を(写真はイメージ)
  • 「老人ホーム入居権譲って」という話にご注意を(写真はイメージ)

「本人の申し込みだと証明するために1000万円必要だ」

   国民生活センターによると、「老人ホーム入居権詐欺」の被害相談は、2014年~2015年の3000件前後をピークに減少傾向にあった。ところが今年、再び急上昇、10月末現在で685件と、昨年同期(38件)の18倍もの勢いだ。こんな事例が代表的だ。

【事例1】「老人介護施設の入居権を譲って」と言われ了承すると、本人からの申し込みだと証明するために1000万円振り込んでと迫られた

   大手建設会社Aを名乗り、「老人介護施設の入居権を譲ってもらえないか」と電話があった。当市在住の70歳以上の女性のみに入居権があり、それを「譲ってほしい」という話のようである。その女性は利用するつもりがなかったので、「利用したい人がいるなら使ってもらって構わない」と伝えた。その後、「あなたの名義で他県の人が入居できることになった。入居権を管理しているBという業者から確認の電話が入るので、すべて『はい』と答えてほしい。迷惑はかけない」と連絡が入った。

   Bから「入居一時金の入金が確認できた。本人に間違いないか」と連絡が入り、不安になってきたので、Aに「今回の話はなかったことにしてほしい」と伝えた。だが、「迷惑はかからないのでこのまま進めさせてほしい。警察に相談するとかえって大変なことになる」と言われた。その後Bからは、「金融庁の調査が入る。本人からの振り込みだと証明するために、いったん1000万円を振り込んでほしい。後日返金する」という電話が入った。

   「そのような高額な支払いはできない」と断ったが、「摘発を防ぐために500万円だけでも協力してもらえないか」と重ねて振り込みを依頼された。怖い。どうしたらよいのか。(2022年4月・70歳代女性)

不審な電話にご注意を
不審な電話にご注意を

【事例2】「老人ホーム入居権」を他者に譲るためには200万円を振り込むよう言われ、支払わないと裁判になると脅された

   ハウスメーカーを名乗る業者から、「お住まいの市に女性専用で70歳以上の方限定の老人ホームができる予定です。あなたにはそこに入居できる権利があります」と電話があった。覚えのない業者であり断った。ところが次の日にも電話があり、「他府県から入居希望の方がおられるので、あなたの入居権を譲っていいですか?」と聞かれ、「必要ないので譲っていい」と答えた。

   その後また電話がかかってきて、「権利を譲るためには、いったん費用を払ってもらわないといけない。1000万円必要だが、800万円はこちらで何とか負担するので、200万円振り込んでください」と支払いを要求された。「年金生活のため無理だ」と断ったが、「裁判になってしまう。払ってもらわないと困る」などと脅された。

   その後、損害保険会社を名乗る業者からも、入居権について電話があった。遠方に住む息子に相談すると、詐欺だから、すぐに消費生活センターと警察に相談するよう言われた。支払わないと、裁判などになるのか。(2022年5月・70歳代女性)

「お金を支払わないと裁判になる、警察が来る」と脅す

四脚杖で歩く高齢者と介助する人(写真はイメージ)
四脚杖で歩く高齢者と介助する人(写真はイメージ)

【事例3】電話が来て、介護施設に入る権利があると言われた。次の人に名義を譲ってと言われ了承すると、1000万円振り込むよう言われた

   大手証券会社を名乗る者から、「あなたは介護施設に優先的に入る権利がある」と電話がきた。「自分はまだ施設に入る気はない」と言うと、「順番待ちしている人がいる。もし入居しないのであれば、入居を待っている人に名義を貸してほしい」と言われた。

   お金の話は出てこないかと何度も確認したが、「ない、名義のみ」と言うので了承した。後日、別の会社の人から電話が来て、「あなたが名義を貸した人が入居できることになった。入居するためには証券会社にお金を入れなくてはいけない。あなたの名義でお金を振り込んでもらわなければ困る。今日1000万円用意してほしい。今後他の会社から電話が来るかもしれないが、ハイハイと聞くだけでいい」と言われた。

   再び、最初に電話をしてきた証券会社からも電話がきた。「お金の話にはならないと言ったのに、1000万円振り込むよう指示された」と伝えると、「300万円なら用意できる。700万円はどうにかしてもらえないか」と言われた。私の口座に300万円を振り込むと言うので、金融機関の口座番号は伝えてしまった。お金を支払わないと裁判になるとか、警察が来るとか言われている。どうしたらいいか。(2022年8月・70歳代女性)

   このように、被害者が持ってもいない「老人ホーム入居権」を持っているかのように装い、複数の詐欺師グループが交代で電話に登場。「権利を譲って」「名義を貸して」などと持ち掛けてくるのが共通の手口だ。すべて詐欺と思って間違いない。

   国民生活センターでは、こうアドバイスする。

   (1)「老人ホーム入居権」の話には注意する。「権利を譲ってほしい」などと持ち掛けてくるのは詐欺の手口。承諾すると「あなたの名義で申し込みをするので、一度お金を支払う必要がある」などと言葉巧みにお金を支払わせようする。
 一度電話に出ると、あの手この手で話を持ち出すので断ることが難しくなる。留守番電話機能や発信者番号表示機能を利用して、番号非通知や心当たりのない番号には出ないようにする。

   (2)万一不審な電話に出て、話を聞いてしまっても絶対にお金を払わない。すぐに警察、家族・友人、消費生活センターに相談する。

   (3)【周囲の人へ】高齢者を狙った詐欺を防ぐには、周囲の人の見守りが必要。「お金が必になった」と言うなどの異変に気づいたら声をかけ、警察や消費生活センターに相談する。

(福田和郎)

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