2024年 5月 3日 (金)

かつては「裏切者」よばわり?が...いまや大歓迎! みずほ「カムバック入社」、りそな、群馬銀行も... 広がる「アルムナイ採用」をおさらい

   人手不足が深刻化し、優秀な人材の確保が厳しくなるなか、採用面では就職人気ランキングではいつも上位に位置して、優秀な人材が比較的集まりやすいと思われていた銀行が、退職者を再雇用する「アルムナイ」採用を取り入れるようになってきた。

   すでに、みずほフィナンシャルグループや、りそなホールディングスとその傘下のりそな銀行、埼玉りそな銀行などで導入している。2022年12月1日からは、地方銀行の群馬銀行が運用を開始した。いま、ジワリと、広がってきているようだ。

  • アルムナイ採用が広まっている(写真はイメージ)
    アルムナイ採用が広まっている(写真はイメージ)
  • アルムナイ採用が広まっている(写真はイメージ)

会社側は採用や研修のコストがかからない

   アルムナイ(alumni)とは、「卒業生」「同窓生」を意味し、人事の分野では「退職者」を指す言葉だ。アルムナイ採用は、もとはその会社に勤務していたが、さまざまな理由で退職した人を再雇用する制度だ。

   もともと自社にいた人なので、社内事情に精通していて、人間関係もわかっている。仕事の進め方やスキル、コミュニケーションも心得ており、商品やサービスの内容や知識も豊富、かつ理解しているので、採用時や戦力化するまでの研修にかかるコストが必要ない。

   また、他社を経験したことで視野が広がったり、スキルアップしたりしていることも強み。そのため、違った視点から、自社の働き方や商品・サービスの改善点などを指摘できる、といったメリットが見込める可能性がある。

   その半面、これまで日本の企業は、終身雇用の考え方が一般的だった。したがって、自己都合を理由に退職した人を快く思わない風潮があった。退職の原因の多くが、「社内の人間関係」とされることもある。

   だが、近年の労働市場の流動化の進展によって、キャリアアップや、給与や待遇の向上などを理由に転職する人や、起業する人は珍しくなくなったものの、会社という組織から「離脱」する人は「身勝手な裏切り者」のように見られていた。

   そのため、自ら退職を決断した人も、かつて勤めた会社に戻ることにためらいを感じる人は少なくない。会社側としても、仮に再雇用しても、既存社員との良好な関係を維持するための手間やコストがかかる可能性があるのだ。

欧米企業では一般的 日本では電通、アクセンチュア、リクルートなど導入

   アルムナイ採用は欧米企業ではごく一般的な制度になっている。

   退職者を貴重な人材リソースと捉え、会社を退職した後もコンタクトを取り続けて組織化し、そこから再雇用する「仕組み」を整えてきた。

   国内では深刻な人手不足で、ここ数年来、製造業やIT、サービス業などで広がってきた。導入企業には、電通やアクセンチュア、リクルート、セールスフォース・ドットコム、住友商事、横河電機などの名前が見られる。

   パーソル総合研究所の「企業のアルムナイ(離職者との繋がり)に関する調査」(2020年5月29日公表)によると、離職した企業への再入社の意向をみると、「再入社したい」人は8.3%で、実際に過去5年以内に再入社した人は2.13%だった【下図参照】。

   ここ数年は、育児や介護などのやむを得ない事情で会社を辞めた人が少なくない。こうした人を再雇用する「ジョブリターン制度」は、アルムナイ採用に近い考え方といえそうだ。

   いずれにしても、日本は人口減少社会に突入。優秀な人材の確保が難しくなるなか、アルムナイ採用にますます注目が集まりそうだ。

アルムナイネットワークを活用し、退職者と中長期的に良好な関係築く

   そうしたなか、銀行界でもアルムナイ採用が広がってきた。

   みずほフィナンシャルグループは「カムバックアルムナイ採用」を用意している。

   対象となるのは、転職や学業などによるキャリアアップのために退職した人や、育児や家族の介護、配偶者の転勤などのやむを得ない事情で退職した人など。さまざまなフィールドでの経験や知識を活かして、みずほでもう一度働く意欲のある人を待っているという。

   みずほでは、再雇用を視野に、退職後も関係を保つ手段として「アルムナイネットワーク」を立ち上げている。

   みずほグループに勤務し、自己都合などの理由で退職した人を対象に、コミュニケーションサイトを開設。入会登録すると、退職者同士の交流が可能になったり、みずほの最新情報や各種レポートなどが受信できたりする。

   こうした取り組みは、退職後もコンタクトを取り続けるツールとして、また、組織化して帰属意識を高めることで、気持ちのうえでも再雇用しやすくする狙いがある。欧米企業や先進的な導入企業の中には、退職者の交流会を定期的に開くこともあるという。

   銀行界では、りそな銀行や埼玉りそな銀行を傘下に置く、りそなホールディングスも、アルムナイ採用を実施している。預金・為替業務のほか、システムやM&A、不動産、ローン・融資や外国為替業務と幅広い業務で、優秀な人材を求めている。

   地方銀行では、りそなグループで関西みらいフィナンシャルグループ傘下の関西みらい銀行が導入。同行のアルムナイ採用の募集概要をみると、個人や法人、窓口のそれぞれで営業職を求めているようで、正社員として採用する。

群馬銀行「磨いた専門性やスキルを改めて活かしてほしい。積極的に門戸を開く」

   群馬銀行でも12月1日、アルムナイ採用をスタートした。

   今春スタートした中期経営計画「Innovation for 『Purpose』」の戦略テーマとして掲げる「創造力発揮に向けた人材改革」の取り組みの一環という。

   これまでは「再雇用制度」として、対象者の退職理由を結婚や出産、育児・介護などに限定していた。だが、アルムナイ採用では、キャリアアップなどの理由で退職した人も対象として加える。同行での勤続年数や離職期間、年齢による制限を廃止するなど、応募条件を大幅に緩和したかたちだ。

   また、外部でさまざまな経験やキャリアを培った退職者との中長期的に良好な関係を構築することを目的に、アルムナイネットワークの構築を検討していく。

   群馬銀行は「さまざまな事情で退職したものの、群馬銀行外で磨いた専門性やスキルを活かして、改めて群馬銀行というフィールドで活躍を希望する人に、積極的に門戸を開きます」としている。

   銀行界でも、元行員を即戦力として再雇用するアルムナイ制度の取り組みが本格化してきた。

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