2024年 5月 6日 (月)

熊本県、半導体の「新工場」続々...ソニーが検討、魅力は「豊富な水」「安価な土地」「優秀な人材」

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   ソニーグループが半導体の新工場を建設する検討を始めた。2022年12月15日付の日本経済新聞(電子版)などがいっせいに伝えた。報道によると、熊本県内に数千億円を投じてスマートフォン向けの画像センサーの工場を建設する。

   すでに、ソニーは熊本県内で最先端のセンサーを製造していて、加えて世界的な半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)などと組んで工場建設を進めている。24年末までの生産開始を目指しているという。

   熊本県は、半導体工場の一大集積地になってきている。

  • ソニーグループ、熊本に半導体の新工場を検討(写真はイメージ)
    ソニーグループ、熊本に半導体の新工場を検討(写真はイメージ)
  • ソニーグループ、熊本に半導体の新工場を検討(写真はイメージ)

ソニー、「熊本」で半導体事業を強化

   ソニーグループが検討している半導体の新工場は、熊本県合志市が計画する新たな工業団地内が建設の候補地で、2025年度以降に稼働する方向。スマートフォン向けの画像センサーの製造を手がけるとされる。

   ソニーは、台湾積体電路製造(TSMC)が2021年10月に発表した、同社にとって日本初の半導体工場の建設にも参加する。この半導体工場は、すでにスマートフォンやカメラに搭載されるCMOSイメージセンサーを主とした半導体の設計や開発・製造を手がけているソニーセミコンダクタマニュファクチャリングと同じ熊本県菊陽町に建てられる。

   ソニーが検討している新工場は、TSMCからセンサーに使う半導体を供給してもらう計画で、同じ県内に工場を置くことでセンサーの一貫生産体制を構築する。

   11月10日には、自動運転や人工知能(AI)、スマートシティーといった大量のデータを瞬時に処理する分野に欠かせない次世代半導体の国産化、量産化の開発、製造に向けた新会社「Rapidus(ラピダス)」設立の発表があった。

   ここにソニーグループも、トヨタ自動車やNTT、デンソー、NEC、ソフトバンク、半導体大手のKIOXIA(旧東芝メモリ)、三菱UFJ銀行とともに出資することが明らかになった。

   12月13日には、来日中の米アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)がソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの工場を訪れ、ソニーグループの吉田憲一郎会長兼社長と最先端の画像センサー製造現場や「iPhone14プロ」のカメラに搭載された技術のデモンストレーションなどを視察した。

   ソニーはiPhoneに搭載されているイメージセンサーの提供で、米アップルと長年、協力関係にある。ソニーにとっては、その関係を改めて確認、強化したかっこうだ。

   立て続けに半導体事業への投資を進めるソニー。世界的に画像センサーの需要が高まるなか、同社は半導体の国内生産を強化したい考えだ。

半導体に特化「長年の努力が報われてきた」

   半導体は、自動車向けや産業機器、家電製品の製造など、あらゆる製品に搭載されるため、世界的な不足は生活のさまざまな場面に影響を及ぼす。

   また、最先端の半導体とその生産量は台湾のTSMCがリードしており、万が一、台湾有事が起これば、調達が難しくなる可能性がある。さらに、経済安全保障への関心の高まりから、中国への技術流出が問題視されるようになった。

   こうしたことから、国内の製造拠点の確保は喫緊の課題となっていた。なかでも、注目されるのが熊本県だ。ソニーやTSMCにみられるように、熊本県内は半導体の一大生産拠点になりつつある。 ちなみに、ソニーが検討している新工場の建設予定地の熊本県合志市は、国内半導体大手の東京エレクトロンの完全子会社で、半導体製造装置やFPD製造装置などの開発や設計、製造を手掛ける東京エレクトロン九州が、すでに進出。熊本県内の半導体に関連企業・工場は数百社にものぼる。

熊本県に半導体工場が集積するワケ

   熊本県に半導体工場が集積するには、ワケがある。

   まずは、「キレイな水」だ。

   県企業立地課は「熊本市内の生活用水を100%地下水源でカバーしているように、阿蘇に降った雨が時間をかけて湧出した、豊富な地下水に恵まれています。それが半導体にも利用できることです」と説明。多くの企業の立地につながっている。また、東京の約20分の1という「安価な工業用地」も、企業立地にはプラスだ。

   熊本県と半導体との関係は60年を超える。

   企業立地課は「早くに進出した企業は1960年代になります。(企業誘致が)本格化したのは1980年代後半ですが、半導体一本にしぼって積極的に誘致しました」と言う。「TSMC(の進出)が決まったのが大きいです。これまでの努力が実を結びました」と、話している。

産学連携の好循環生む

   3つめは「優秀な人材」の確保だ。

   熊本大学は「工学部半導体デバイス工学課程」(仮)を、2024年度に設置することを発表している。

   この課程では、半導体デバイスの専門知識を備え、半導体デバイスの製造、評価・開発に携われる人材として半導体関連エンジニアを、熊本から世界で活躍する人材を育成する。

   大学では、毎年のように半導体関連の人材を数多く輩出してきた。今後はその数がますます増えることが予想されており、これに対応する。

   背景には、TSMCの新工場建設が決まったことなどで半導体の専門人材の確保が、熊本県内や国内で喫緊の課題となっていることがある。

   この9月からは、工学部で「半導体工学教育プログラム」の授業が始まっている。同プログラムは学科に関係なく選択でき、12月からは対面授業も始まった。20人ほどの学生が参加。産学連携の好循環を生んでいるようだ。

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