2024年 4月 26日 (金)

2022年のIPO、100社に届かず...目立つ「赤字上場」、「プラットフォーム事業」企業

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   2022年に新規株式公開(IPO)を果たした企業は91社となり、前年の125社から34社と大きく減ったことがわかった。企業信用調査の帝国データバンクが「2022年のIPO動向調査」を、2023年1月5日に発表した。

   昨年2月に起こったロシアによるウクライナ侵攻や、台湾をめぐる米中対立の深刻化のなど地政学上の不確実性や、世界的な金融引き締めなどによる金融環境の悪化が主な原因とみられる。

   2022年12月単月のIPO社数をみても、前年同月と比べて7社減の25社だった。

  • 2022年のIPOの状況は?(写真はイメージ)
    2022年のIPOの状況は?(写真はイメージ)
  • 2022年のIPOの状況は?(写真はイメージ)

初値が公開価格を上回ったのは71社、昨年より減少

   調査によると、2022年のIPO社数は91社で前年から大きく減った。前年は125社で、2006年以降で最多だった。減少率は27.2%で、リーマン・ショック以来の落ち込み幅になったものの、IPOの件数はリーマン・ショック後の15年間で4番目に多かった。【下のグラフ参照】。帝国データバンクは、

「2022年は世界的に金融政策の緩和が続いていた前年の反動があったほか、ロシアによるウクライナ侵攻や急激な円安進行、世界各国の中央銀行の金融引き締めによる海外機関投資家の供給減と株価の低調が主な原因と考えられる」

としている。

   そうしたなか、上場承認を取り消した企業は7社と、前年の3社から倍増した。

1990年~2022年のIPO社数と株価の推移(帝国データバンクの作成)
1990年~2022年のIPO社数と株価の推移(帝国データバンクの作成)

   ただし、IPO社数は2020年(93社)や2019年(86社)とほぼ同じ水準で、帝国データバンクは「例年並みの水準に戻った」とみている。

   また、昨年12月28日時点にIPOで上場した90社のうち、初値が公開価格を上回ったのは71社だった。全体に占める割合は78.9%となり、前年(82.4%)より3.5ポイント減少した。

赤字でも上場できるグロース市場、最多の70社

   IPO企業を市場別にみると、市場再編以前の東証マザーズを含めた「東証グロース」市場への上場が8割近くの70社にのぼった。「東証スタンダード」市場が14社、「東証プライム」市場は3社だった。【下の円グラフ参照】

   東証グロース市場は、高い成長可能性が期待される銘柄が集まっている。市場全体に占める割合は、前年の74.4%から2.5ポイント増えて76.9%となった。

   また、同市場は赤字上場が認められていることもあり、経常損益が赤字の企業は23社にのぼった。東証グロース市場における割合は32.9%で、前年の21.5%(20社)を、11.4ポイント上回っている。背景としては、「赤字企業ではあるものの、内容を見極めたうえで成長性を重視する傾向が、投資家のあいだで強まっている」(帝国データバンク)からだ。

2022年の市場別にみたIPO企業の割合(帝国データバンクの作成)
2022年の市場別にみたIPO企業の割合(帝国データバンクの作成)

   IPO企業を業界別でみると、「サービス」が前年比9.5ポイント増の70.3%と突出して高かった。一方、「製造」や「卸売」 は減少した。

   さらに細かくみると、「ソフト受託開発」や「パッケージソフト」、「情報提供サービス」を含む「情報サービス」が22社(全体の24.2%を占める)でトップとなった。

   デジタルやITテクノロジーを活用する、いわゆる「テック企業」が新規上場をけん引。たとえば、「プラットフォーム事業」を手がける企業は18社と2割近くにのぼり、全体に占める割合は前年から上昇した。

   情報サービスには、DX(デジタルトランスフォーメーション)計画の策定からクラウドによる効果創出まで一貫したITサービスを提供している日本ビジネスシステムズ(東証スタンダード上場)や、ライブ配信コミュニケーションプラットフォームの企画、開発、運営を手がけるモイ(東証グロース上場)などが含まれる。

   次いで、デジタル技術を活用したコンタクトセンター・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスなどを提供しているビーウィズ(東証プライム上場)など、「その他サービス」が19社で、全体の20.9%を占めた。

   また、フリーランスを活用したコンサルティング・システム開発支援などを手がけるINTLOOP(東証グロース上場)といった経営コンサルタント業などを含む「専門サービス」は9社(全体の9.9%)だった。

   企業のDXの推進を支援する企業が複数あるなど、目立った。

IPO企業の社長、40代が最多

IPO企業の社長の平均年齢(帝国データバンクの作成)
IPO企業の社長の平均年齢(帝国データバンクの作成)

   さらに、2022年のIPO企業の設立から上場までの期間は、平均で「16.5年」で、前年の18.8年から2.3年短縮した。帝国データバンクはその原因を、

「設立から事業化・商品化までの期間が比較的短いIT関連企業の割合が大きくなった一方、ある程度の時間を要する製造業の割合が小さくなったことが考えられる」

とみている。

   一方、IPO企業の社長の平均年齢は、全国の社長平均年齢を10歳近く下回る水準で推移してきた。2022年にIPOを果たした企業の社長の平均年齢は51.2歳と前年の50.3歳から0.9歳上昇した。年代別にみると、「40代」が最も多く全体の33.0%を占めた。【上のグラフ参照】

   なお、調査は、帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」に収録されている約147万社のデータなどを用いて、2022年の国内IPO市場の動向について集計・分析した。

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