「こんなはずじゃなかった」本を出版したい人が、覚えておきたいことは?【尾藤克之のオススメ】

   全国出版協会出版科学研究所によると、2021年の出版市場規模は1兆6742億円と、3年連続のプラス成長となることがわかった。しかし、この数値は市場のピークとされる、1996年の2兆6563億円から約6割に落ち込んだことを意味している。もっとも、出版不況といわれながらも本を出版することには根強い人気があり、希望者は増えている。

「新人著者が出版前にしておきたい17のこと」(富田祐美子著)自費制作

多くの人に出版するチャンスが増えたけれど...

   斜陽している要因の一つは「書籍が売れない」ことである。私がはじめて本を出した2010年頃は初版6000~8000部、重版率も高く、印税10%が当たり前だった。しかし、いまは初版3000部、重版率は1割程度となるなど、印税も実売印税(=実際に売れた冊数によって支払われる印税)が当たり前の時代となった。このような時代に、出版を希望する人はまず、出版業界を理解する必要性がある。

   もっとも、出版業界の門戸が広がったことにより、多くの人に出版するチャンスが増えた。とくに、ビジネスを指南するビジネス書の市場は活性化している。サラリーマンや主婦の書いたビジネス書がベストセラーになるなど、プレゼンスの高さに注目が集まっている。まず、出版には、大きく分けて3つの種類がある。

1.商業出版(費用は出版社が負担する)
2.自費出版(費用は著者が負担する)
3.共同出版(双方折半で負担。企業出版などもこの範疇)

   最初に、著者(著者候補)は商業出版を目指すことになるが、このハードルは高い。商業出版は出版社にとって投資になり、数百万円の費用がかかるためである。これを実現するには、投資分の回収と、さらに利益が見込めると思わせることが必要になる。そのため、著名人や実績のある人、ネット発信力の強い人は有利になる。

   また、最近では、商業出版スクールや出版コンサルが乱立状態にある。出版スクールは50~80万円程度、出版コンサルは200~300万円程度の費用が掛かる。しかし、出版を保障していないことからトラブルが多い。また、出版が決まっても刊行の際に、買取などの条件を出される場合もある。いずれにしても、注意が必要である。

   では、もっともリスクが低い手段はなにか? そのひとつが、ベストセラー作家や出版社が主催する出版コンペではないかと思う。出版が決まらない場合は、クロージングすればいいので、費用はさほどかからない。

「出版させてあげるよ!」...甘い言葉にご注意

   私自身も先日、元出版社に勤務していた「出版プロデューサー」に会った。本人は、一流を標榜し、高確率の出版をうたっているのだが、「危険」だと思った。「出版プロデューサー」の仕事は、著者と出版社のマッチングにある。多くの出版社とコネクションをもつ人は強いが、有能な人は出版実績を提示する。また、自分の役割を明確に提示するものである。

   編集者から出版プロデューサーになる人は多いと思うが、よくよく注意をしなければいけない。いま、出版希望者は大勢いるから、情報が乏しい人に「出版させてあげるよ!」なんて甘い言葉をかけて、お金を搾取する人もいるからだ。選択する側が賢くならないといけない。

   前述のように、商業出版スクールやコンサルが乱立しているが、出版を保障していないことからトラブルが多い。国民生活センター(所管は消費者庁)では、自費出版などに関して、早くから注意を促がしている。そのため、正しい情報を入手した方がいいだろう。では、どのような情報が必要になるのか? 知りたければ、ぜひ本書を読んでいただきたい。

   今回紹介した一冊は、出版業界をつまびらかに理解することができる。いまの時代は、出版しても売れる保証はないから、出版社の判断も早い。私がいずれセミナーで話したい内容。それは「出版業界をおおっぴらにした話」かもしれない。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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