アベノミクスはなぜ金融政策から財政政策に変わったのか?

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財政積極派の伸長

   菅政権もアベノミクスを継承した。しかし、関心はインバウンドなどミクロな政策に向けられた。その後は、新型コロナウイルスの感染拡大対策にエネルギーを取られた。

   そして、岸田政権が誕生。矢野康治・財務省事務次官による「バラマキ財政批判」の論文を、2021年10月、月刊「文藝春秋」が掲載。アベノミクス批判につながりかねない内容で、政治家からの批判もあったが、直後の総選挙で自民党が勝利し、更迭は避けられたと見ている。

   その後、コロナ復興税、コロナ特別会計など、財務省のアイデアは、岸田首相から棚上げされた。

   自民党の「財政政策検討本部」の最高顧問に安倍元首相が就き、前出の西田議員が本部長となった。同議員のかつて特命委での扱いは、いわゆる「ガス抜き」だったが、状況は大きく変化していた。

   財政積極派は安倍元首相という後ろ盾を得て、財政再建を主張する議員の声を切り捨てるまでに成長。立場は完全に逆転していた。そして、2022年5月19日の報告書には、こう書かれていた。

「PBは重要な指標ではあるが、カレンダーベースでの目標設定が、状況に応じた必要かつ柔軟な政策対応を妨げ、マクロ経済政策の選択肢をゆがめることがあってはならず、今後十分に検証をおこなっていくべき」

   PB目標は邪魔だ、という趣旨の内容だという。

   一方で、岸田首相も日銀の審議委員の人事でリフレ派の後任をリフレ派から出さず、それはアベノミクス離れという意図を感じさせた。そして、7月、元首相銃撃事件が起きた。

   本書はこの事件をプロローグに置き、アベノミクスにかかわった人たちの動静を伝えている。アベノミクスは当初の姿から大きく変貌していた。論を最小限に止め、誰がどう語ったかを淡々と記述したことが、かえって本書の価値を高めている。

   アベノミクスの検証作業の基礎的資料になるだろう。(渡辺淳悦)

「アフター・アベノミクス」
軽部謙介著
岩波新書
968円(税込)

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