2024年 4月 26日 (金)

えっ?退職には「自己都合」と「会社都合」があるの? 転職時代の基礎知識...Z世代も知っておくと、いつか役立つメリット、デメリット

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   「ええっ、退職には『自己都合』と『会社都合』というのがあるの?」。ネット上で驚きの声が若い世代から上がっている。

   2023年2月15日、政府の「新しい資本主義実現会議」で岸田文雄首相が「『自己都合』で退職した場合の失業給付のあり方を見直す」と述べたことがきっかけだ。

   さっそく、2月17日のNHK「おはよう日本」のWebニュース「よく読まれている」ランキングでは、「自己都合退職と会社都合退職」関連ニュースが1位と5位に躍り出るなど、いま、あらためて話題を集めている。

   退職をめぐり、いったい何が問題になっているのか。ここで、「自己都合退職」と「会社都合退職」の違いをざっとおさらいしてみよう。

  • 「自己都合退職」と「会社都合退職」の違いとは?(写真はイメージ)
    「自己都合退職」と「会社都合退職」の違いとは?(写真はイメージ)
  • 「自己都合退職」と「会社都合退職」の違いとは?(写真はイメージ)

自分から辞める「自己都合」、クビやリストラに遭う「会社都合」

   報道をまとめると、2月15日に開かれた「新しい資本主義実現会議」では、構造的な賃上げなどの実現に向けた取り組みの意見が交わされた。この中で、岸田首相は「働き方が大きく変わっている。労働者が自らの選択で労働移動できるようにしていくことが経済のさらなる成長のためにも急務だ」と述べた。

   そして、「デジタルやグリーンなどの成長産業も含めて、労働移動の円滑化を図る必要がある。自己都合で離職した場合の失業給付のあり方を見直す」ことを明らかにしたのだった。

   失業給付は、仕事を失った後にハローワークで手続きをすることで、直近の賃金の5~8割程度の金額を90~330日間にわたり受け取ることができる制度だ。その際、退職の仕方に大きく分けて2種類がある。「会社都合退職」と「自己都合退職」だ。

自分から退職届を出す「自己都合退職」(写真はイメージ)
自分から退職届を出す「自己都合退職」(写真はイメージ)

   「会社都合退職」とは、解雇やリストラ、事業所閉鎖、退職勧奨など会社側の都合により労働者との雇用契約を終了すること。早期退職者募集に自ら応募した場合も基本的には「会社都合」になる。

   一方、「自己都合退職」は、結婚や転職、そのほか労働者側の都合で退職すること。労働者が自由な意思で退職した場合には、基本的に「自己都合退職」と扱われる。

圧倒的にメリットが大きい「会社都合退職」

   辞める側にとって、失業給付を受ける際、どちらが有利かというと、圧倒的に「会社都合退職」のほうがメリットは大きい。まず、給付期間が違う。「会社都合退職」の場合は、原則90日から最大330日まで支給されるが、「自己都合退職」の場合は、原則90日から最大150日までと半分以下の期間だ。

   また、「会社都合退職」の場合は、ハローワークに書類を申請後、7日の待機期間を経てすぐに支給されるが、「自己都合退職」の場合は、7日の待機期間を経た後、さらに2か月間も支給を待たされる(=給付制限)【図表1】。

(図表1)失業給付金支給の流れ(厚生労働省の公式サイトより)
(図表1)失業給付金支給の流れ(厚生労働省の公式サイトより)

   このことが、現在、「転職しようとする動きの妨げになっている」と問題になっており、岸田首相がこの2か月間の給付制限を短縮するよう制度変更の検討を指示したのだ。

   それにしても、なぜこんな理不尽に見える「格差」があるのかというと、「会社都合退職」の場合は、「会社の都合」で労働者が犠牲になるため、補償を手厚くするという考え方がある。これに対して、「自己都合退職」の場合は、「労働者の自己都合」で会社に迷惑をかけるとして、辞めにくくするという考え方が背景にあった。

   もうひとつ、「格差」が設けられた理由として、就職と退職を頻繁に繰り返し、意図的に失業給付を受け続けることを防ぐ狙いもあるのだ。

   しかし、終身雇用制度が崩れ、人材の流動化が進んだ。そのため、2020年10月の雇用法改正で、それまで原則3か月だった「自己都合退職」の給付制限期間を2か月に見直した【図表2】。岸田政権は、転職を促すため、さらに見直しを進めようとしているわけだ。

(図表2)自己都合退職の給付制限期間(厚生労働省の公式サイトより)
(図表2)自己都合退職の給付制限期間(厚生労働省の公式サイトより)

「いっそ、クビにしてくれたらよいのに」と何度思ったか

   今回の政府の「自己都合退職」の失業給付制限の見直しについて、ヤフーニュースコメント欄では、さまざまな意見が相次いだ。とくに、給付制限期間の短縮については、「当然だ」とする賛成意見が寄せられた。

「自己都合でもあまりタイムラグなく失業保険は受け取れるようにはするべきだと思う。会社都合とも言える雇用条件の変更からの退職が、自己都合扱いで困っていた知人がいた。知人は交通の足がなく、店舗閉店で他の店舗で働いてくださいと言われたが、通勤困難のため退職。ハローワークに相談したが、ほかの店舗への往復が4時間以上だと会社都合退職となると言われた。さすがに条件厳しすぎない?と思った」
「派遣社員は契約満了退社しても、自己都合扱いにされてしまう場合がある。 その辺の事も考慮しての見直しだとすれば、たいしたものだ」
「長年勤めた派遣先を退職する決心をしたところです。何年も前から『将来のために収入を増やさなければ』と思いながらも、制限期間があるために退職できずにいました。
今のご時世、生活をするのに精いっぱいで、制限期間分の生活費を貯蓄して余裕をもって転職活動なんてなかなかできません。『いっそのこと、クビにしてくれたらよいのに』と何度思ったことか。なので、制限期間の短縮は賛成です」
「何年間も途切れることなく失業保険を払い続けて、いざ失業したら謎に疑われて待機させられるというのがおかしな話なのだ。特に、初めて受給する人については、無条件の支給でも現実的に何の問題もないはず。
前回受給から一定期間あいていないと受給できないルールや、1回受給したら加入継続期間がリセットされ、次回受給時の受給可能期間が短くなるルールもすでにある。制限期間がなくても『失業手当パラダイス』にはならない」
転職で新しい道に挑戦(写真はイメージ)
転職で新しい道に挑戦(写真はイメージ)

   また、実際は「会社都合」なのに、「自己都合」を押しつけられている現実を訴える声もあった。

「ハラスメントなどで実質、会社都合で退職に追い込まれた場合でも、よほど時間と労力と強い意志を持った人以外は、自己都合退社となる場合が多い。自分で積み立てた失業保険を、数か月待たないと受給できないなんておかしいだろう」

3社倒産したが、1度も失業給付を受ける余裕はなかった

「『自己都合』で退職した場合の失業給付のあり方を見直す」と、岸田文雄首相
「『自己都合』で退職した場合の失業給付のあり方を見直す」と、岸田文雄首相

   一方、岸田首相が制限期間の短縮の目的を「転職を促し、労働移動を円滑化する」とした点については、疑問の声が多かった。

「雇用の流動化が目的なのであれば、考え方がまったく的外れだと思います。自己都合で退職した大部分の人は、次の職のめどをつけてから退職します。なぜかというと、退職後に失業手当を受給できるのが3か月先になるから、間をあけずに働くためです。
なので、単に自己都合退職後の待機期間を短くすることは、退職を考えている人が次の職のめども立たないままに安易に退職してしまいかねず、雇用の流動化にはつながりません。むしろ逆効果です」

   また、制限期間を短くすると、悪用して失業保険で食いつなぐ人が増えるのでは、という指摘もあった。

「何らかのルールや規制をかけないと、必ず悪用するやつが出るのよ。コロナの時も協力金、雇用調整金、給付金...すべてで性善説では防げなかった。必ず監視と悪用に対する厳罰はセットでお願いします」

   最後に、こんな人の意見を紹介したい。

「私は、子ども2人を保育園に預けて、当時5万円近く保育料を払って、共働きでした。そして、現在までずっと非正規雇用で働き続けています。その間勤め先が3社倒産して、今は4社目の勤務先です。ずっと雇用保険はかけてきましたが、一度も受け取ったことがありません。
受け取って職探ししている余裕などなく、すぐに働ける場所を探しました。これが労働者の現実です。ボーナスもなく、サービス残業をさせられて、支払う税金ばかり増えて、子育て支援だの、育児手当だの言っていますが、幼い子どもの世話は年金暮らしの祖父母がしている現状を政治家の方たちは理解していない。今一部の方々を除いて、若い世代も、中間世代も、年金暮らしの世代も、みんな貧困」

(福田和郎)

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