就職人気企業ランキング20年にみる「栄枯盛衰」...「銀行」「航空」凋落、いま「商社」「出版」...トップ10に19回も入り続けた会社は?

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   「10年ひと昔」というが、浮き沈みが激しいビジネスの世界で20年もたつと――。

   就活中の学生に人気の企業にも厳しい栄枯盛衰があることが、就職情報サービス「学情」(東京都千代田区)が2023年2月15日に発表した2005年卒から2024年卒までの20年間における「就職人気企業ランキング20年比較」でわかった。

   あらためてランキング表を見直すと、中島みゆきさんの歌詞「♪まわる まわるよ 時代は回る...」を思い浮かべずにはいられない。だが、トップ10位に20年間で19回も入り続けている企業があることに驚かされる。さて、それはどこだろうか。

  • この会社に入って本当によかった(写真はイメージ)
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まわる、まわるよ、人気業界は回る

   学情の「就職人気企業ランキング10年比較」によると、20年間に19回もトップ10にランクインした企業は伊藤忠商事だ。日本最大の企業、トヨタ自動車でさえ3回しか入っていない。ざっと20年間を振り返ると、こんな流れが読み取れる。

(1)20年前(2005年卒)は「電機メーカー」が人気。ソニー、富士通、日本電気(NEC)、松下電器産業(現:パナソニック)がトップ10にランクイン。
(2)19~15年前。2006年卒~2008年卒はサントリーが3年連続で首位。2009年卒・2010年卒は資生堂が2年連続首位。
(3)14~10年前。2011年卒~2015年卒は、「旅行」「金融」が支持を集める。
(4)9~6年前。2016年卒~2019年卒は、ANA(全日本空輸)が4年連続で首位を獲得。
(5)5年前~現在。2020年卒~2024年卒は、伊藤忠商事が5年連続で首位を独占。

キャッチコピーで企業イメージを高めたサントリーと資生堂

   もう少し細かくみていこう。

【20年前の2005年卒】

(図表1)2005年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)
(図表1)2005年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)

   20年前にあたる、2005年卒の「就職人気企業ランキング」では、1位ソニーを筆頭に、5位富士通、7位日本電気(NEC)、8位松下電器産業(現:パナソニック)と、上位10社のうち「電気機器メーカー」が4社を占めた。また、2位サントリー、10位キリンビールと「食品メーカー」も2社ランクインしているほか、3位にトヨタ自動車が入るなど、20年前は「メーカー」が7社も独占し、根強い人気を集めていたことがわかる。

【19~15年前の2006年卒~2010年卒】

(図表2)2006年卒~2010年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)
(図表2)2006年卒~2010年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)

   2006年卒~2010年卒はサントリーが3年連続で首位。続く2009年卒、2010年卒は資生堂が2年連続首位と、メディアにもよく取り上げられた花形企業が上位を独占する時代だった。サントリーは「水と生きる」というキャッチコピーが環境に配慮した企業イメージを大きく高め、資生堂も「わたしが変わる。世界を変える」といったキャッチコピーが、化粧品の美を越えて、女性の生き方にまでアピールした。

   また、「食品」「消費財」「電気機器」「自動車」など、幅広いメーカーが上位を占める傾向が続いた。

「半沢直樹」人気の銀行、最後の黄金時代

【14~10年前の2011年卒~2015年卒】

(図表3)2011年卒~2015年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)
(図表3)2011年卒~2015年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)

   2011年卒~2015年卒は、「旅行」「金融」が支持を集めた。各年度のランキングの1位をANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)、JTBグループ、オリエンタルランドなど「旅行」「航空」関連の企業が占める結果に。

   また、三菱東京UFJ銀行(現:三菱UFJ銀行)や三井住友銀行など金融もトップ10の常連となった。2013年に大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」の影響もあってか、「銀行」の黄金期だった。

   銀行は安定性・社会的地位の高さ・給与の高さから、公務員や総合商社と並ぶ人気業種の1つだった。しかし近年では収益力が低下し、店舗の統廃合が進み、メガバンクを中心に人員削減が行われており、就活生の人気は急落している。

【9~6年前の2016年卒~2019年卒】

(図表4)2016年卒~2019年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)
(図表4)2016年卒~2019年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)

   2010年代初めから続く「旅行」「レジャー」ブームの影響もあり、2016年卒~2019年卒は、ANA(全日本空輸)が4年連続で首位を獲得した。JAL(日本航空)もトップ10に入り続け、現在の社会人4年目から7年目にあたる世代が就職活動をしていた時期は、「航空」が高い人気を誇っていたことが伺える。JTBグループやオリエンタルランドなど、「旅行関連」も人気を集めていた。

   コロナ禍に見舞われた2020年、ANAが一転して大量の希望退職者を募り、やっと2021年暮れに2023年卒の新卒採用再開を決めたことが大きなニュースになったことを思えば、隔世の感がある。

ゲームや電子コミック、動画で復活した出版業界

【5年前~現在の2020年卒~2024年卒】

(図表5)2020年卒~2024年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)
(図表5)2020年卒~2024年卒 就職人気企業ランキング(学情の作成)

   2020年卒~2024年卒は、5年連続で伊藤忠商事が首位を独占した。丸紅も2020年卒、2021年卒に連続してランクインするなど、銀行に取って代わって総合商社人気が定着した。また、「ゲーム」業界もこの時期に人気を伸ばし、任天堂は、2021年卒で9位に入って以降、2022年卒6位、2023年卒5位、2024年卒2位と、どんどん順位を上げている。

   2022年卒のランキング以降、講談社や集英社がトップ10の常連となったことが目を引く。「出版不況」と言われ続けてきた出版業界だが、ゲームや電子コミック、動画などデジタルコンテンツを提供して成長軌道に乗ったことが、デジタルネイティブである学生から支持を集めていることが分かる。

   業績が好調な「小売り」のイオングループも、2022年卒からから2024年卒までランクインを続けている。コロナ禍で「巣ごもり消費」や「ステイホーム」を支えた企業が、引き続き支持を集めていることがわかる。

   なお、最新の「2024年卒対象 就職人気企業ランキング」の調査は、2022年4月1日~2022年10月31日まで、2024年3月卒業予定の大学3年生、大学院1年生を対象にアンケートが行われた。有効回答は8345人だった。(福田和郎)

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