2024年 5月 3日 (金)

間伐材を利用した「名刺」や「香るストロー」 「木」から学ぶSDGs

来店不要なのでコロナ禍でも安心!顧客満足度1位のサービスとは?

   リモートによる会議やミーティング、商談......。コロナ禍で大きく変わったのが、こうした「対面」でのシーンが激減したことだろう。名刺を直接交換する機会も減ったことは間違いない。

   そうしたなか、「木の名刺」や「木のストロー」などを制作、販売するクレコ・ラボ(東京都港区)の興津世禄(おきつ・せいろく)社長は、「『木』の名刺は、ジワリと売り上げが伸びているんです」と、「対面」を大事にする「逆バリ」で成果を上げている。

   同社の「木の名刺」は、ホンモノの木から作られている。そのため、木目を印刷した紙では生まれない、木の香りや質感といった自然の温かみや味わい深さを感じさせてくれる。

  • 香りや質感も楽しめる「木」の名刺
    香りや質感も楽しめる「木」の名刺
  • 香りや質感も楽しめる「木」の名刺

「木は持続可能な素材」 いろいろな「個性」がある

   初対面の時のコミュニケーションツールとして使われる名刺は、相手に自分のことを知ってもらうための情報が詰まった一枚だ。

   クレコ・ラボの興津世禄社長は、

「『木の名刺』はホンモノの木で作られているから、手紙のように真心や温かみを相手に感じてもらえます。木の名刺なら、名刺を渡した時に自然と生まれる会話が弾むこと、請けあいです」

と話す。

   木は、サステナビリティ(持続可能)な素材だ。同社の木の名刺はすべて手作業でつくられ、一枚一枚が木目も色みも異なる。名刺のほか、ストローやはがき、折り紙なども品揃えされ、紙としてだけではなく壁紙やシール、布など、いろいろな素材として使用できるという。

   その素材は、職人が木材をうすくスライスして、厚さ0.1~0.15ミリメートル以下の極薄シートに加工。裏地に紙などを貼り合わせて生まれる。使用する木材はすべて国産で、ヒノキや赤松、黒松、スギ、桜などさまざまだ。

   白みを帯びた明るい色みが特長のヒノキは、一番人気。つるつるとしていて、匂いもかすかに感じる。桜は、広葉樹のため全体的に赤みがあり、スギはやや濃い色合いで、香りが残る。

   たとえば、赤松の名刺は、岩手県久慈市の木材を継続的に使用しているという。もともと東日本大震災の前から使っていたが、津波による海水で他の名刺が全部ダメになったなか、赤松の名刺は海水をかぶっても、再度乾かすことで使えるようになるなど、通常の紙よりも耐久力のある丈夫な素材だそうだ。

   ほかにも、黒松(島根県)や、大胆な木目とざらっとした質感が特徴の琉球松(沖縄県)など、その土地の木材を使用してオリジナルの木の紙を制作。観光地のおみやげや限定商品、ノベルティなどの地域に特化した商品に使っている。

   ホンモノの木を使っているから、湿気や時期、樹種によって反ることがある。また、経年変化によって木の色も少しずつ変わっていき、時間とともに風合いが楽しめる。樹種によって特徴が変わるのも、魅力の一つ。名刺になっても「木」は生きている。

「木のストロー」プロジェクトで森林を育成

   「木の名刺」や「木のストロー」の材料には、間伐材を含む国産材を使っている。

   植林されているスギやヒノキは成長とともに木が太くなり、木と木の間隔が狭くなる。そのため、放っておくと地表まで十分な陽が当たらず、土や草、低い木まで栄養がいかなくなる。そのため、一定程度の伐採(間伐)が必要になるのだが、近年は林業の衰退で、多くの山や森林の育成が放棄される状況が少なからずある。

   そのことが、豪雨による洪水や山崩れ、倒木などの災害を引き起こす原因となることもわかってきた。人々を自然災害から守るためにも、森林の育成・管理は欠かせない。間伐材をムダなく使う「木の名刺」や「木のストロー」は、森林管理にも寄与しているというわけだ。

   興津社長は、

「全国の間伐材を活用した『木材ストロー』を開発、導入を広めることで、森林に光を入れ、間伐材の活用促進や災害防止などの持続的な森林経営の一助となればと考えています」

と説明する。

日本の水や森林問題に「気づき」を与えたい 

豪雨災害から生まれた「木のストロー」
豪雨災害から生まれた「木のストロー」

   木のストローの開発に至った、もう一つの大きな理由に、欧米ではじまったワンウェイプラスチック廃止の流れが加速していることがある。

   プラスチック製のストローによる海洋汚染に端を発した動きだが、そんなプラスチック製の代用品として「木のストロー」が重宝されるようになった。

   興津社長は、「木のストローを通じて、日本の水や森林問題に『気づき』を与えていきたい、と考えていました。」と言う。

   たとえば、鳥取県では小学校の授業で木のストローを教材に使って、子どもたちに「森があるから水がある」「人工林は人が手入れをしないと荒廃する」「木を使う(買う)ことで森林のサイクルを経済的にまわしていくことが大切」であることを伝える、SDGsの授業を開いている。

「木のストローは、『水』と深い接点を持つアイテムです。この木のストローが『橋渡し役』となって、子どもたちはもちろん、大人にも、日本の水と森について関心を持ってもらいたいと、期待を持っています。 日本の水資源、森林資源をどうやって守っていくのかを考えてもらう取り組みである『木のストロー プロジェクト』を、前に進めていきたいと考えています」

と、興津社長は力を込める。(J-CAST 会社ウォッチ編集部)

8「働きがいも経済成長も」
11「住み続けられるまちづくりを」
12「つくる責任 つかう責任」
13「気候変動に具体的な対策を」
14「海の豊かさを守ろう」
15「陸の豊かさを守ろう」
の目標の実現を目指す
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