2024年 4月 20日 (土)

孤独をむしばむものは? 配偶者の有無、世帯年収、「ゆとり」ある暮らし向きが影響...内閣官房調査(鷲尾香一)

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   内閣官房の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)」によると、2022年に「孤独を感じることのある人」は40.3%で、前年よりも3.9%増加した。傾向として、男性では50代、女性では30代が強い孤独を感じている。

孤独感が「ある」は計40.3%...前年から3.9%増加

   この調査は、全国の満16歳以上の個人2万人に対して行われたもので、2021年に続き2回目。回答数は1万1218人だった。

   「どの程度、孤独であると感じることがあるか」との質問に対して、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は4.9%と前年の4.5%から0.4%増加した。

   「時々ある」が15.8%で同14.5%から1.3%増加、「たまにある」が19.6%で同17.4%から2.4%増加しており、「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」の合計(以下、「ある」の合計)は40.3%と前年の36.4%から3.9%増加している。(表1)

   孤独感を年齢階級別にみると、孤独感を最も強く感じている「しばしばある・常にある」と回答した人の割合が最も高いのは、30代の7.2%、次いで20代の7.1%となっている。また、「ある」の合計では20代が47.9%で最も高く、次いで50代の46.2%が続いた。なお、20~50代で40%を超えている。(表2)

   男女別では、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は男性5.1%(前年は4.9%)、女性が4.6%(同4.1%)となっている。

   男女の年齢階級別にみると、「しばしばある・常にある」の割合が最も高いのは、男性は50代で7.3%、女性は30代で7.9%となっている。「ある」の合計において、割合が最も高いのは、男性は50代の47.6%、女性は20代の50.3%となっている。

同居人がいない30代の孤独感、「しばしばある・常にある」15.1%と高く...80歳以上の10倍

   配偶者の有無は、孤独感に大きく影響している。

   孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、配偶者がいる場合には3.0%なのに対して、未婚では9.7%となっている。ただ、男女別では男性が離別したケースで10.7%と最も高いのに対して、女性では未婚が9.1%と最も高くなっている。

   これは、世帯の状況にも現れている。

   孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合が最も高いのは、「単身世帯」で9.5%と圧倒的に高い。男女別で見ると、男性の単身世帯では、11.9%、女性の単身世帯では7.0%となっている。

   また、同居人の有無で見ると、同居人がいない30代の孤独感が「しばしばある・常にある」との回答が15.1%と最も高く、最も低い同居人がいる80歳以上の1.5%の10倍となっているのが目を引く。

孤独感に影響する「暮らし向き」、「ゆとり」の差で大きな開き

   孤独感は経済的な状況にも左右される。

   世帯の年収には、孤独感の状況が見事に表れている。

   孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合が最も高いのは、年収が「100万円未満」で8.1%(前年は7.3%)となっている。その割合は年収の高さに沿って、徐々に低下していき、年収1000万円以上では2.3%(同2.7%)まで低下する。(表3)

   「ある」の合計で見ても、年収100万円未満が45.2%で最も高く、年収1500万円以上が34.4%で最も低くなっている。

   年収よりも明確に孤独感が現われるのが、暮らし向きだ。

   孤独感が「しばしばある・常にある」との回答は、暮らし向きに「大変ゆとりがある」では4.2%、「ゆとりがある」では3.2%、「普通」では2.3%なのに対して、「やや苦しい」では5.3%、「大変苦しい」では14.2%となる。「大変苦しい」は「普通」の6倍以上も孤独感を感じている。(表4)

   「ある」の合計でも、「大変ゆとりがある」が29.8%なのに対して、「大変苦しい」では59.1%と倍近くなっている。

   孤独の感じ方は、人それぞれだろう。ただ、調査結果では配偶者や同居人に有無、あるいは経済的な状況などが孤独を感じる一因となっていることが明かになっている。

   孤独感は自殺の一要因にもなっており、孤立や孤独を感じることのない社会の実現が求められる。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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