2024年 5月 3日 (金)

大阪IRを国内初認定も...国内に広がる「しらけムード」のワケ

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   政府は2023年4月14日、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の第1号として、大阪府・市の整備計画を認定した。大阪の人工島・夢洲(ゆめしま)でカジノ計画が本格的に動き出すが、問題は山積している状況だ。

  • 大阪の夢洲(ゆめしま)
    大阪の夢洲(ゆめしま)
  • 大阪の夢洲(ゆめしま)

観光の起爆剤として期待 だが、地盤沈下や交通の便などに懸念

「計画実現に向けた大きな一歩だ」

   政府の認定を受け、大阪府の吉村洋文府知事はこう強調した。

   計画では、IRは2029年秋~冬頃の開業を目指す。カジノのほか国際会議場やホテル、シアターなども整備予定で、年間来場者数は約2000万人、年間売上は約5200億円を見込んでいる。

   夢洲では25年に大阪・関西万博の開催が予定されており、IR認定前日の13日には岸田文雄首相も参加して起工式が行われた。大阪府・市は万博とIRという二つの起爆剤を生かして観光戦略を前に進めたい――これが大阪府・市の狙いだ。

   ただ、大盛り上がりの地元を尻目に、国内では冷めた見方が広がっている。

   不安要素の一つは、夢洲そのものにある。

   埋め立て地である夢洲は地盤沈下が起きやすく、基準値を超えるヒ素やフッ素も検出されている。大阪市は土壌汚染対策などのため約788億円の公費負担を表明しているが、IR慎重派は「それだけで賄えるのか。今後、公費負担がさらに膨らむ可能性が高い」と懸念する。

   交通の便の悪さも懸念事項だ。

   夢洲では万博開幕に向けて地下鉄の延伸工事が進められており、JRや民間鉄道各社も乗り入れを検討している。ただ、巨額の整備費用が必要な鉄道の延伸が予定通り進む保障はない。

   アクセスが貧弱なままでは、万博やIRの集客に大きく響く恐れもある。

計画の具体化段階で「つまづき」が 安倍氏が推進したIRの機運、当初より盛り下がり

   IRを運営するのは、米国のカジノ大手MGMリゾーツインターナショナルの日本法人やオリックスを中心に、地元企業なども出資した「大阪IR株式会社」。

   計画の具体化に向けていよいよ動き出すタイミングで、さっそくつまずいた。

   MGM日本法人が大阪府・市に提供したIRのイメージ図や動画で、世界的美術家である奈良美智さんや村上隆さんの芸術作品を無断使用していたことが判明。府・市はホームページなどから関連動画を削除し、MGM日本法人は謝罪に追い込まれた。

   建設業界などで人手不足が深刻化する中、大阪IR株式会社は今後、巨大施設の整備に向けた調整など難しい課題に挑むことになる。「初っ端からこれでは先が思いやられる」。地元からこんな声が上がるのも当然だ。

   そもそもIR整備は安倍晋三政権下の2018年に関連法が成立し、全国で候補地探しが始まった経緯がある。

   当初は多くの自治体が誘致に関心を寄せたが、収益性などを懸念して海外のカジノ大手が相次ぎ撤退を発表するなど、計画が次々と頓挫。安倍氏も亡くなり、IR誘致にかける国内の機運が大きく減衰しているのは間違いない。

   慎重派が懸念するギャンブル依存症への対応なども、まだ十分に詰められていないのが実情だ。

IR計画を推進してきた維新に「恩を売った」?

   国内の逆風が強い状況で、政府が大阪IRの認定を急いだ背景には、政治的な事情が見え隠れする。

   大阪でIR計画を推進してきたのは大阪維新の会。統一地方選では大阪維新が躍進しており、重要政策で維新の協力を得たい政府の打算も見え隠れする。

   「計画認定で維新に恩を売ることができた」。官邸周辺からはこうした声もきこえるが、この先、大阪IRが大混乱に陥れば、見切り発車を承知で認定した政府の責任も糾弾される可能性がある。

   国内カジノは大阪と政府にとって吉と出るか、凶と出るか。まさに「大ばくち」ともいえる状況だ。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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