2024年 5月 8日 (水)

イオン、首都圏「最後のピース」いなげや連結子会社化へ スーパーマーケット再編進む...今、何が起きているのか?ねらいは?

   流通大手のイオンは首都圏で食品スーパーを展開するいなげや(東京都立川市)を連結子会社化する。セブン&アイ・ホールディングス(HD)も傘下の総合スーパー、イトーヨーカ堂と食品スーパー、ヨークを2023年内にも統合する方針。日本のスーパーマーケットに何が起きているのか、そしてどうなっていくのか。

  • 食品スーパーの統合相次ぐ(写真はイメージ)
    食品スーパーの統合相次ぐ(写真はイメージ)
  • 食品スーパーの統合相次ぐ(写真はイメージ)

いなげや、24年11月にイオン傘下のUSMHと統合へ...食品スーパーで国内首位に

   イオンといなげやが2023年4月25日に合意し、発表した。

   イオンがまず数百億円を投じ、いなげやへの出資比率(現在17%)を、2023年11月をめどで51%に引き上げ、連結子会社にする。さらに追加出資したうえで、24年11月にはイオン傘下の食品スーパー「マルエツ」などを抱えるユナイテッド・スーパーマーケットHD(USMH)と統合する。いなげやは上場廃止になるが、いなげやの屋号は維持するとしている。

   株式取得の手法については、いなげやによる第三者割当増資やTOB(株式公開買い付け)などを検討している。USMHに統合する際のイオンの出資比率など細部は、今後詰めるという。

   いなげやとUSMHが統合すると、単純合計で売上高は約9600億円と、同じイオン傘下で中四国地盤のフジ(23年2月期で7849億円)を抜き、食品スーパーで国内首位に躍り出る。

   いなげやは1900年に東京都立川市で鮮魚店として創業し、戦後に食品スーパーに転換した。現在は首都圏4都県で食品スーパー「いなげや」など、約270店舗を展開。イオンは2002年、不動産会社からいなげや株を取得し、筆頭株主となっていた。

   いなげやの足元の業績は芳しくない。23年3月期の連結業績見通しは、売上高にあたる営業収益が2520億円と前期から横ばい、純利益は29%減の17億円にとどまったとみられる。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要の反動減に加え、物価高による買い控えや光熱費などのコストアップが重荷になっている。

   イオンは2015年にマルエツなど首都圏スーパーの系列3社をUSMHに統合したが、加わらなかったいなげやは残された「最後のピース」だった。総合スーパーが苦戦する一方で必需品に集中する食品スーパーは好調と言われてきたが、物価高など環境の厳しさが、いなげやの背中を押したかたちだ。

ポイントは、プライベートブランド強化&デジタル化推進 グループの総合力活かす

   具体的に、いなげやは何を必要としているのか。

   イオンの吉田昭夫社長は発表会見で、「研究開発(R&D)やプライベートブランド(PB)商品の開発などを積極化できるスケールが必要。(統合で)売上高1兆円を目指す」と述べたように、今回の連結子会社化のポイントはPBとデジタル化だ。

   PBは一般に、価格が割安なうえに利益率はメーカー品を大きく上回り、いまやスーパーの収益のカギを握る存在。イオンのPB「トップバリュ」は食品だけで約3000品目あり、イオンが持つ国内のスーパーなど約5300店の販売力を基盤に収益を支えている。

   いなげやの店舗網も加え、商品調達力をさらに上げる一方、いなげやもトップバリュの導入品目数を大幅に増やすことで収益向上を図ることになる。

   もう一つのデジタル化の推進とは、電子商取引(EC)対応や顧客データを活用したマーケティングなどだ。

   イオンは今夏に英ネットスーパー大手と組んで新しいネットスーパーサービスを東京都内などで始めることを計画している。こうした動きがあるなか、いなげやが持つ東京など大都市部の顧客の購買情報はイオンにとっても大きな魅力だという。

   いなげやとしても、単独でのジタル投資には限界があり、イオンのグループの力を活かせるのは大きな魅力だ。

セブン&アイHDもスーパー再編へ 物価高、デジタル投資の負担は、業界共通の課題

   イオンのライバルであるセブン&アイHDも、J-CAST 会社ウォッチが「セブン&アイHD、ヨーカドー店舗2割削減&『祖業』衣料品は『完全撤退』 だが、必ずしも『スーパー事業』の見切りではない理由」(2023年03月17日)で報じたように、スーパーの再編に動く。

   井阪隆一社長は23年4月28日の日本経済新聞朝刊で、総合スーパー「イトーヨーカドー」を運営するイトーヨーカ堂と、食品スーパー「ヨークマート」などを運営するヨークを、2023年内にも統合するとの方針を示している。

   セブンの動きの背景には、物言う株主である外国ファンドが「コンビニ特化」を求めていることに対抗するねらいもある。だが、PB、デジタルなどスーパー自体が抱えるイオンと共通する課題が大きいのも確か。こうした全国的な規模の追求が、今後のスーパー業界で主流になるのは間違いないだろう。

   同時に、文字通りの地域密着で固定客層をがっちりつかむオオゼキ(首都圏に42店舗)、「エブリデー・ロープライス」の低価格路線を進めるオーケー(同142店舗)なども、それぞれの強みを生かして業績を伸ばしている。

   こうした、全国チェーンとは一線を画しているスーパーにとって、物価高やデジタル投資が負担になっているのは同じ。独自の道を行くのか、大手に吸い寄せられていくのか、今後の動向が注目される。(ジャーナリスト 済田経夫)

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