2024年 5月 3日 (金)

「正露丸」「クレベリン」でおなじみ...大幸薬品社員の平均給与はいくら? 気になる業績や株価の推移もチェック!【よくわかる企業分析】

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   就職先や転職先、投資先を選ぶとき、会社の業績だけでなく従業員数や給与の増減も気になりませんか?

   上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、ラッパのマークの「正露丸」で知られる大幸薬品です。

   大幸薬品は、1902年より販売されていた「忠勇正露丸」の製造販売権を、創業者の柴田音次郎氏が継承する会社として1946年に設立されました。2005年に「クレベリン」の販売を開始。2009年に東証二部上場、2010年に東証一部(現プライム)に市場変更しています。

過去最高売上・利益から一転、大幅減収・赤字へ

   それではまず、大幸薬品の近年の業績の推移を見てみましょう。

   大幸薬品の売上高は2017年3月期の83億円から右肩上がりとなり、コロナ禍の2020年12月期には決算月の変更により、9ヶ月決算にもかかわらず、176億円と過去最高を更新しました。

   営業利益も2016年3月期の13億円から2020年12月期には57億円に。こちらも過去最高を更新と絶好調でした。

   ところが2021年12月期になると、12ヶ月決算にもかかわらず売上高は前期比35.7%減となり、営業損益は49億円の赤字に転落。翌2022年12月期には営業赤字が31億円に縮小したものの、売上高は50億円まで落ち込んでいます。

   なお、2021年12月期は、衛生管理製品「クレベリン」の需要が急激に低下したため、生産を停止して現物の処分を行い、棚卸資産評価損を売上原価に計上。これにより売上総利益が激減するとともに、返品調整引当金繰上額が膨らんで営業赤字に転落しました。さらに、操業停止関連費用や生産設備の減損損失を計上し、最終赤字となっています。

   2022年12月期は、収益認識に関する会計基準等を適用し、顧客へのリベート費用等を費用計上ではなく売上高から減算するなどの変更により、売上高が前期より低く計上されるようになっています(2021年12月期の売上高112.99億円は新基準で99.14億円となる)。

   これに加えて、2022年1月20日および4月15日に「クレベリン」6品目に対し、消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けたことにより、対象製品の多くが店頭から一時撤去になるとともに、多額の返品が生じています。

   2023年12月期の業績予測は、売上高が79億円、営業利益が5億3200万円、当期純利益が5000万円の見込みで、第1四半期決算時には修正はありませんでした。

「クレベリン」の売上高は2年で10分の1以下に

   大幸薬品のセグメントは「医薬品事業」「感染管理事業」「その他事業」の3つで構成されています。

   医薬品事業では、一般用医薬品である「正露丸」「セイロガン糖衣A」「セイロガンクイックC」「ピシャット下痢止めOD錠」等の製造販売、および医薬部外品「ラッパ整腸薬BF」の製造販売を行っています。

   感染管理事業では、医薬部外品である衛生管理製品「クレベリン」のハンドジェル、「クレベ&アンド」のハンドスプレー、日用品である「クレベ&アンド」のウイルス・菌除去スプレー、ウイルスプロテクトマスク、ウイルス・菌除去シート、「クレベリン」一般用・業務用・業務用機器の製造販売を行っています。

   その他事業では、木酢入浴液などを製造販売しています。

   2022年12月期の売上高は、医薬品事業が36億2400万円、感染管理事業が14億800万円、その他事業が700万円。同セグメント損益は、医薬品事業が2億9700万円の黒字、感染管理事業が21億7900万円の赤字、その他事業が4400万円の赤字でした。

   なお、業績のピークだった2020年12月期(9ヶ月決算)の売上高は、医薬品事業が35億7500万円と直近とあまり変わりませんが、感染管理事業は140億円で10倍近い売上をあげていました。同セグメント利益は、医薬品事業が11億4400万円、感染管理事業が57億6500万円でした。

平均年収は一時960万円まで上昇したが...

   大幸薬品の連結従業員数は、2019年3月期の229人から233人→274人と増加しましたが、2021年12月期に264人に、さらに2022年12月期には210人にまで減少しています。

   特に感染管理事業に携わる従業員数は、2019年3月期の84人から96人、153人と急増していましたが、2021年12月期に132人、2022年12月期には76人となっています。

   単体従業員数は、2019年3月期の207人から211人、237人と増加。2021年12月期に226人、2022年12月期には175人に減少しています。

   大幸薬品は2期連続大幅赤字を受けて、2022年に希望退職者の募集を行っています。6月13~22日に24人の退職の応募があったと報じられていますが、最終的に前期末と比べ51人減少したことになります。

   大幸薬品の平均年間給与(単体)は、業績ピークの2020年12月期には960万円まで上昇しましたが、その後は下落。2022年12月期には624万円まで下がり、平均年齢41.6歳、平均勤続年数10.8年となっています。

   大幸薬品の採用サイトにアクセスすると、現在は「工事中です」「只今工事中につき、閲覧いただけません」という文字が表示されていました(2023年5月現在)。

「クレベリン」は表示を改善し、今後も製造販売を続ける

   大幸薬品の株価は、業績ピークの2020年8月には2928円の高値をつけましたが、2021年1月には1704円、さらに2022年1月には814円と下がっていき、2023年1月にはついに357円まで下落。現在は400円前後で推移しています。

   大幸薬品は、祖業である「正露丸」が属する止瀉薬(ししゃやく)市場の競争が激化し、自社製品のシェアが45.2%まで下がるなど将来の成長性が不安視されていました。

   そんな中、「クレベリン」の大ヒットによる感染管理事業の成長で、過去最高業績を更新。しかし需要の急速な冷え込みに加え、景品表示法に基づく措置命令という不祥事により、業績が急速に悪化しています。

   なお、企業サイトによると、措置命令ではクレベリンの主成分である「二酸化塩素そのもののウイルスや菌の除去機能」が否定されたわけではなく、あくまでも「表示」の問題に限定されるとのこと。

   大幸薬品としては、表示を改善したうえで今後もクレベリン製品の製造販売を行っていくとのことですが、コロナ禍が収まりつつある中、顧客の理解を回復して以前のような高い業績を生み出すことができるのか。注目されるところです。(こたつ経営研究所)

こたつ経営研究会
こたつ経営研究会
有価証券報告書や決算説明書などの公開情報を分析し、会社の内情に思いをめぐらすニューノーマルな引きこもり。昼間は在宅勤務のサラリーマンをしながらデイトレード、夜はネットゲームをしたりこたつ記事を書いたりしている。好きなピアニストはグレン・グールド。嫌いな言葉は「スクープは足で稼げ」。
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