2024年 6月 16日 (日)

日本企業の生成AI活用率は9%、検討も含めると6割が前向き...でも、「利用の社内ルールなし」が7倍!「イメージが湧きにくい」と困惑する企業4割

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   対話型生成AI(人工知能)「ChatGPT」がニュースにならない日はないが、日本企業での生成AIの利用はどの程度進んでいるのだろうか。

   帝国データバンクが2023年6月20日に発表した「生成AIの活用に関する企業アンケート」によると、「ChatGPTブーム」が追い風になり、生成AIを活用・検討している企業が6割を超えることがわかった。

   しかし、大きな課題も残っている。それは――。

  • AIの活用はどれくらい進んでいる?(写真はイメージ)
    AIの活用はどれくらい進んでいる?(写真はイメージ)
  • AIの活用はどれくらい進んでいる?(写真はイメージ)

「情報漏洩リスク」を懸念、使用禁止の企業も6%

   帝国データバンクの調査は、全国の1380社が対象だ。まず、生成AIを業務に活用しているかどうかを聞くと、「業務で活用している」と答えたのは9.1%だった。また、「業務での活用を検討」している企業は52.0%で、「活用・検討」している企業の合計は61.1%と、6割を超えた【図表1】。

(図表1)生成AIの活用状況(帝国データバンクの調査)
(図表1)生成AIの活用状況(帝国データバンクの調査)

   ただし、「業務で活用している」企業9.1%のうち、利用に関する社内ルールがある企業は1.2%にすぎず、その一方では約7倍の7.8%の企業で社内ルールを設けていなかった。生成AIには情報漏洩や著作権侵害、虚偽情報の拡散など多くのリスクがある。その点で、安全上に大きな課題が残る結果となった。

   一方、「業務での活用を検討していない」企業は約4分の1の23.3%だった。そのうち、「業務での利用が認められていない」企業が5.6%【再び図表1】。その理由を聞くと、「情報漏洩リスクが懸念されており、グループ全体で使用禁止になっている」(電気機械製造)などの声があった。

   また、「活用を検討しているが、現時点では活用イメージが湧かない」という企業もけっこう多く、4割弱(37.8%)と全体の中で最も高かった。企業からは「業務とのつながりがイメージできない」(機械・器具卸売)、「使用したいが、使い方がよく分からない。詳しい社員もいないのでしばらくは静観するしかない」(輸送用機械・器具製造)といった声があがった。

   自社の業務に生成AIの活用を前向きに検討していきたいが、現時点では具体的なノウハウがなく、イメージが湧きにくいという実態がみられた【再び図表1】。

   さらに活用したことがある、または活用したい生成AIサービス(文章・コード生成AI)を具体的に聞くと、「ChatGPT」(オープン・エーアイ社、米)が87.9%で突出して多かった。次いで、「Bard」(グーグル社、米)が27.2%、「Smartling」(Smartling社、米)が4.7%で続いた【図表2】。

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(図表2)活用したことがある、または活用したい生成AIサービス(帝国データバンクの調査)

金融業「社内の『よくある質問とその回答集』から始めたい」

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ChatGPTはどこまで広がるか(写真はイメージ)

   企業からのコメントをみてみよう。まず、業務で活用している企業からは――。

「小規模な会社のため、ルールの策定はせずに対応できている。社内のアイデア出しやビジネスチャットにおける雑談相手、教育用途ではそのままの状態で十分実用になる。個人情報や非公開情報を入力しないなど、一般的な注意事項を守れば、社内での利用を厳しく制限するのはデメリットのほうが大きい」(不動産)

   このように、社内ルールを設けない企業が目につく。

「まだ個人レベル利用している。業務にも活用しているが、会社全体で統一化した活用法については未定」(出版・印刷)
「アイデアに困ったときのヒントとして利用。社外秘情報や個人情報を含む質問は行わない」(機械・器具卸売)
「自分が相談する人脈のなかに、新たに有益な人物が加わったという感覚」(不動産)
「営業文書や品質文書の作成、技術的な課題の解決で利用している。誤った回答が多いので検証は必要だが、将来的にそこはクリアされると考えている」(鉄鋼・非鉄・鉱業)
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生成AIをどう活用する?(写真はイメージ)

   業務での活用を検討している企業からは――。

「ChatGPTを試しに利用しているレベル。文書作成やアイデア出しのたたき台としては使えそうな感触を得ている」(専門サービス)
「さまざまな質問に端的なアドバイスがもらえるので感心しているが、あくまでもアドバイス程度ととらえている。文献を調べる手間が省けて便利」(建設)
「まずは社内のFAQ(よくある質問とその回答集)的な部分から活用してみたい」(金融)
「不動産業における活用方法のイメージが湧かないため、業界で提案、指示、方法等の研修会が開催されるのを待っている」(不動産)

   業務での活用を検討していない企業からはこんな声があった。

「結論を導く一助とはなるであろうが、生成AIで得た情報が正確なものであるか、公序良俗に反してはいないかなど、信頼できるレベルにはないと思っている」(建設)
「我々の属する業界では、現在でもFAXが主流の通信手段で、AIサービスがシステムに組み込まれる状態にはまだなっていない」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)
「現時点では活用を検討していないが、業界的には今後調剤の業務自体が自動化され、生成AIも活用されるようになると思う。薬剤師はその最終確認のみの業務となり、大幅な生産性向上が期待できる」(医薬品・日用雑貨品小売)
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AI時代をどう生きる?(写真はイメージ)

   帝国データバンクではこうコメントしている。

「生成AIについて、自社の業務で活用・検討すると前向きに 取り組む企業は 6 割超に達した。しかし、全体の4割弱は活用の意向があるものの、自社の業務 での具体的な使い方や活用場面が想定できておらず、イメージが先行しておりビジネスでの活用にはもう少し時間がかかりそうだ。
話題となっているChatGPTは公開されてまだ半年余りという、新しいサービスである。現時点ではビジネス上の直接的な利用において課題を抱えているが、これから急速に修正・改良されていくであろう。今後、生成AIのさらなる機能の開発や国による適切なルール作りが進むにつれ、企業による活用や普及を通じて、生産性向上や人手不足の解消に貢献していくことが期待される」

   調査は2023年6月12日~15日、全国の企業1380社(うち大企業176社、中小企業1204社)にインターネットでアンケートを行なった。(福田和郎)

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