2024年 5月 3日 (金)

大阪・関西万博「黄信号」...パビリオン建設が遅れて、開幕に間に合わない? 八方塞がりにした「戦犯」は?

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   開幕まで2年を切った2025年大阪・関西万博の開催が危ぶまれている。

   パビリオンの建設遅れなど難問は山積しているのだ。実施主体の日本国際博覧会協会はようやく重い腰を上げ、対応に動き始めたが、まだまだ追いつかない。

   政府主催の国際博覧会が失敗すれば、国際的信用を損なうだけではなく、国民負担も生じかねず、事態は大阪・関西だけにとどまらない情勢になってきた。

  • 万博予定地の夢洲
    万博予定地の夢洲
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独自に建設する米国、英国など約50か国・地域のパビリオンは、建設に必要な申請さえ未提出

   万博を開催する大阪市の人工島・夢洲で2023年7月、ある国内大手企業のパビリオンの着工式が挙行された。その様子はテレビ各局のニュースでも放送されたが、映像は式典が催されたテントの室内ばかり。その周囲で進んでいるはずの建設風景を撮ったカットは見当たらなかった。

   なぜ、そんな不自然な映像になったのか。

   在阪記者は「その企業に対して博覧会協会が『マスコミに周囲を撮影させるな』とくぎを刺したらしい」とささやく。開幕までちょうどあと2年となる2023年4月13日、岸田文雄首相も列席して現地で万博全体の起工式が開かれたものの、その後はパビリオンの建設が遅れている。

   大阪・関西万博のパビリオンは出展者と出展方式によって数種類に分かれ、その中でも国内の民間パビリオンは徐々に建設が始まりつつある。

   だが、参加を表明している153の国・地域のうち、それぞれ独自に建設する米国や英国など約50か国・地域のパビリオンは、23年7月上旬の時点で建設がまったく始まっていない。

   それどころか、建設に必要となる申請さえ大阪市に提出していないのだから、事態は深刻だ。

建設費の高騰も一因だが...寄り合い所帯の博覧会協会、電通去って機能不全?

   理由の一つは高騰する建設費だ。

   資材費も人件費も上昇が続いており、凝ったデザインのパビリオンならば建設費が想定より膨張する恐れがある。参加国が日本のゼネコンに建設を打診しても、ゼネコン側が赤字を恐れて二の足を踏むケースが起きているという。

   こうした状況を受け、博覧会協会は7月、工事業者を協会側が確保して、発注を代行する案を参加国に提示した。博覧会協会としてはデザインを簡素化して、工期の短縮を図る考えで、8月末までを期限に、この案に加わるかどうかの回答を求めている。

   大阪市に申請しても、着工までは2か月程度かかる。

   博覧会協会は23年末までに着工できなければ、万博の開幕に間に合わない可能性を示しており、綱渡りのスケジュールだ。そもそも建設費の高騰は数年前には始まっており、関西では早くから懸念されていた。

   それでも問題が放置されてきた要因として関係者が異口同音に挙げるのが、博覧会協会の機能不全ぶりだ。

   博覧会協会は公益社団法人であり、そこで働く人は政府、関西の自治体、民間企業などからの出向者で占められている。会長には十倉雅和経団連会長、事務方トップの事務総長には元経済産業省キャリア官僚で、ナンバー2の経済産業審議官などを歴任した石毛博行氏が就いている。

   ただでさえ寄せ集めの組織であり、在阪の経済人は「意思決定が遅い」と嘆く。

   追い打ちをかけたのは東京オリンピック・パラリンピックを巡る談合事件だ。事件を受けて、行政機関が広告大手の電通や博報堂を指名停止にすると、博覧会協会からも広告大手からの出向者が軒並み引き上げたという。

   大規模イベントの運営に手慣れた人材を失い、博覧会協会はなすすべを失っているのが実態だ。

会場整備費、運営費ともに資金不足は確実? いずれ国民負担も...

   大阪・関西万博を巡る難問は、建設の遅れに終わらない。最大の問題は、資金不足だ。

   万博に関する資金の枠組みは、「ハード」の会場整備費と、「ソフト」の運営費に大別される。

   具体的に、会場整備費は日本政府、大阪府・市、経済界の3社が3等分して負担する。運営費は主に、入場料収入で賄う算段だ。民間や海外のパビリオンに関する費用は、この枠組みとは別で出展者の負担となる。

   会場整備費は約1850億円の計画だが、地元経済界は「(その範囲内で賄うのは)かなり難しい」(関西経済連合会の松本正義会長)との認識で一致している。

   ただ、さらなる財政負担を嫌う財務省が難色を示している模様で、このままでは建設途中で資金が底を突く懸念も広がっている。

   2020年時点で809億円と想定した運営費は、人件費の単価増に加え、雑踏警備や要人警備の体制強化を迫られており、警備費の上振れが確実視されている。

   前売り入場券の購入を事実上割り当てる動きも関西の経済界で始まったものの、開幕が近づいてきて、建設費節約のために質素なパビリオンばかりになりかねないということなら、入場券の売れ行きが失速しかねない。

   万博が終了して資金が不足した場合の負担の枠組みは、はっきりしていない。ただ、国際博覧会は政府主催であるため、何らかのかたちで国民負担を迫られることになる見通しだ。

   いったん動き始めたら、風向きが悪くなっても止められない......。

   そうやって日本が何度も繰り返してきた失敗のリストに、新たに大阪・関西万博が加わるのだろうか。(ジャーナリスト 済田経夫)

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