2024年 4月 28日 (日)

なぜ花火の色はカラフルなのか? 「原理がわかる手持ち花火」開発者は、国産ロケット「H2」も手掛けた火薬研究のスペシャリストだった!【前編】/グリーン・パイロラント社長・松永猛裕さん

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   花火といえば、エンターテイメントの王道。2023年の夏は各地の花火大会が4年ぶりに開催されたというニュースが相次いで報じられ、花火が打ち上がるシーンが放送されるなどした。久々の花火を楽しんだ方は多いようだが、その花火にどんな仕組みで色が付いているのかを考えたことはあるだろうか――。

   茨城県つくば市にある産業技術総合研究所(産総研)の敷地内にある花火会社「グリーン・パイロラント」が2023年7月1日に送り出したのは、花火になぜ色が付くかが学べる「花火の原理がわかる手持ち花火I 色火剤(いろびざい)」だ。

   「手持ち花火I 色火剤」には7本組14本の手持ち花火、そして、分光シートがセットになっている。この分光シート(簡単にいうと、光を分けてくれるシート)をスマホのカメラに貼り付けて燃え盛る花火を撮影すると、花火が放つ光のスペクトルを観測できる。そして、花火に色を付けている元素が何かを分析できる――そんな商品だ。

   おぼろげながら頭に浮かぶ「炎色反応」という言葉を意識しつつ、J-CAST会社ウォッチ編集部記者は同社を訪問したのだった。

  • 「株式会社グリーン・パイロラント」代表取締役社長の松永猛裕氏
    「株式会社グリーン・パイロラント」代表取締役社長の松永猛裕氏
  • 「株式会社グリーン・パイロラント」代表取締役社長の松永猛裕氏

テーマパークの打ち上げ花火は、「燃えカスの少なさ」が要求される

   グリーン・パイロラントは2011年に産総研発のベンチャー企業として誕生。代表取締役社長を務めるのは産総研に研究員として定年まで勤めた松永猛裕(まつなが・たけひろ)氏だ。

   同研究所で長年にわたって火薬などの爆発を研究してきたという松永氏に対し、会社設立のきっかけについて質問すると、意外や意外、話は初の国産ロケット「H2」にまで拡大したのだった。

――会社設立のきっかけは松永様の希望、それとも、産総研からの勧めでしょうか。

松永氏 設立の5、6年前に、大学や研究所からベンチャー企業を誕生させていこうというブームがありまして、その際に手を上げて、準備期間を経たうえで2011年に設立しました。産総研への勤務も定年まで続け、今はグリーン・パイロラントで仕事をしています。

――御社は2023年7月1日に新商品として「花火の原理がわかる手持ち花火I 色火剤」を発売されました。それ以前には、テーマパーク用の花火を発売されてきたそうですね。テーマパーク用の花火ということは、つまりは、打ち上げ花火ということでよろしいでしょうか。

松永氏 そうですね。開発のきっかけはテーマパーク側からお願いされたからでした。というのも、打ち上げ花火は、実は、打ち上げる場所の近くにいると、けっこう燃えカスが落ちてくるんですよ。しかも、打ち上げていますから、観客はみんな上を向いている。というわけで、「目にゴミが入った!」といった苦情が多発するんです。

――あー、たしかに!

松永氏 そして、その苦情というものに対し、花火大会はほとんど問題視しませんが、テーマパークは気にする傾向にあるので、「燃えカスが少ない打ち上げ花火」というものに対する需要が以前から高かったため、開発に踏み切りました。

「花火の原理がわかる手持ち花火I 色火剤(いろびざい)」

――松永様と花火の出会いとは何でしょうか。

松永氏 私が火薬、それも花火に携わったきっかけは30歳ごろ、1992年に茨城県守谷市で起きた花火工場の爆発事故でした。当時、私はすでに産総研で火薬の研究員として働いていましたが、事故があったということで、調査員として現地に向かいました。その後、事故の検証をしていく中で、「花火はまだまだ事故が多い。我々にやれることはある」と、花火の安全性の向上に資する研究をすることを思い立ちました。

――事故の現場検証を担当されたのがきっかけだったんですね。

松永氏 また、これとは別に全く違う方面でも、実は、私は火薬に携わっていました。1994年に国産ロケット「H2」の発射が成功しましたが、これについて、私は1990年ごろから「ロケット推進薬の爆発危険性」というテーマで研究を行っていました。ロケットの火薬と花火の火薬は仕組みとしては、酸化剤と燃料(ロケット工学では推進薬)で構成されるという点で共通しているんです。

――そんなところに共通点があるんですね!

松永氏 ただ、そうした中で思ったのは、かたや、最先端技術に基づいて安全性をこれでもかと確保したうえで、火薬が作られている。それなのに、かたや家内制手工業のようなかたちでも火薬が作られている。――「同じ火薬なのに、なぜここまで作り方が違うのか?」という思いから、その2つの間に何とか接点を見出して、花火づくりを安全にできないか、ということを目指すようになりました。
その後、国内で花火を公的機関で研究している人間が他にほとんどいないこともあり、そのような研究を進めるうちに、花火の安全な作り方についての問い合わせが、全国の花火師の方々から来るようになったのです。
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