2024年 5月 20日 (月)

サイバー攻撃ではなかった...トヨタのシステム障害、国内14工場の停止 ヒューマンエラーならまた起こる?...バックアップ体制の見直し急務

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   トヨタ自動車が車両を組み立てる国内全14の完成車工場(グループ会社を含む)が、また稼働を停止した。

   仕入れ先への部品発注などを管理する「生産指示システム」に不具合が起き、部品メーカーに部品を発注する際のデータが正常に送られなくなったとう。このため、2023年8月29日朝から工場が相次いで停止した。30日までに復旧し、順次生産を再開した。

   トヨタでは2022年昨年3月にも、取引先の部品メーカーがサイバー攻撃を受けて部品の供給が滞り、一時、全14工場を止めたことがあった。

   今回はサイバー攻撃ではないが、ひとたびシステム障害が発生すれば部品の供給網にも大きな影響が出ること改めて明確になった。

  • トヨタのシステム障害、部品の供給網にも大きな影響が(写真はイメージ)
    トヨタのシステム障害、部品の供給網にも大きな影響が(写真はイメージ)
  • トヨタのシステム障害、部品の供給網にも大きな影響が(写真はイメージ)

部品の発注処理に必要な複数サーバーの一部が利用できず...原因は、保守作業中のエラー

   8月29日朝から「プリウス」や「カローラ」を手がける堤工場、元町工場(いずれも愛知県豊田市)、トヨタ自動車東日本の岩手工場(岩手県金ケ崎町)など12工場などが停止した。

   また、朝から動いていた高級ブランド「レクサス」車を生産するトヨタ自動車九州の宮田工場(福岡県宮若市)や「ルーミー」などをつくるダイハツ工業の京都工場(京都府大山崎町)も同日夕に止まり、計14工場28ラインで生産がストップした。30日朝から順次再開し、同日夕までに全工場が稼働した。

   当初から「サイバー攻撃ではない」と説明していたが、9月6日に原因と経緯をまとめ、ホームページで公表した。

   それによると、システムの不具合は8月28日に発生し、部品の発注処理をする複数のサーバーの一部が利用できなくなった。

   前日の27日に定期的な保守作業をした際に作業用のディスク容量が不足していたためエラーが発生し、複数あるサーバーが同じシステムで作動していたため、バックアップ機でも同様の障害が起きて切り替えができず、工場停止に至ったとしている。

   29日に容量の大きいサーバーにデータを移し、システムが復旧。工場は翌30日から再稼働した。

◆発表文では、サイバー攻撃ではなかったと強調

   トヨタの発表文は「関係の皆様にはご心配をおかけいたしましたが、サイバー攻撃によるシステムの不具合ではないことを、改めてお知らせするとともにお詫び申し上げます」と、サイバー攻撃ではなかったことをことさら強調していることが目立った。

   また、作業用のディスクの容量不足がなぜ生じたのかについての言及はない。ようは、誰かの判断ミス、つまり、広い意味でのヒューマンエラーということだろう。

   対策として唯一具体的に揚げたのは「保守作業の手順見直し」だった。作業のマニュアルに、ディスク容量の確認といった項目を加えるのだろうか。

23年1~6月の世界生産台数が「過去最高」のトヨタ 回復してきた生産に、冷水を浴びせる

   トヨタでは22年3月、取引先の部品メーカーの小島プレス工業(愛知県豊田市)がハッカー集団からサイバー攻撃を受けて部品供給に支障が出たため、国内全14工場の稼働を停止した。身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウエア」の感染だった。

   この時はトヨタの約1万3000台の生産に影響が出た(J-CAST 会社ウォッチ2022年3月11日付「トヨタの『一穴』を突いたサイバー攻撃 強さの象徴『かんばん方式』に盲点?」参照)。

   また、23年7月には輸出拠点である名古屋港のコンテナシステムがサイバー攻撃を受けた際、トヨタも、部品供給の遅れにより愛知県内を中心に一部の生産に影響が出た。

   トヨタは「トヨタ生産方式」「かんばん方式」という効率生産で名をはせた。必要なものを必要なだけ生産するため、部品などの在庫を極力減らすことが眼目だ。そのためには、部品を使用した分だけ発注するシステムと、それを支える物流が大前提になる。

   名古屋港のトラブルは物流を直撃したが、今回と22年3月の小島プレスのトラブルは発注システムを傷つけた。

   トヨタの2023年1~6月の世界生産台数は、前年同期比12%増の489万台と過去最高を更新した。このうち国内生産は164万台で、新型コロナウイルス禍での生産調整や半導体不足の緩和で29%増えた。

   トヨタによると、全工場を1日停止することで、約1万3000台程度の影響が出るという。今回のトラブルについては、「1、2日程度の工場停止であれば、生産への大きな影響は少ない」(トヨタ関係者)としているが、せっかく回復してきた生産に冷水を浴びせるものだった。

取引先のセキュリティー対策に力を入れてきたが、今度は自社で

   小島プレスのトラブル後、トヨタは取引先のセキュリティー対策に力を入れてきたが、今度は自社でもシステム障害を発生させてしまった。

   今後、自社、取引先を含め、改めて再発防止に取り組んでいくことになるが、今回のトラブルがヒューマンエラーなら、同じようなことは起こり得るということでもある。

   システムに詳しいメーカー関係者は「最大の問題は起こったしまった後の対応。バックアップ機がありながら、同一のシステムで作動していたため、同様の障害が発生し切り替えができず、工場の稼動停止に至ったことと説明されており、バックアップ体制の見直しが必要だろう」と指摘している。(ジャーナリスト 済田経夫)

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