トヨタ自動車が往年の名車「AE86(ハチロク)」の「生誕40周年」を記念した「GR86」の特別仕様車を2024月2月に発売する。1980年代に青春を過ごしたシニアはもちろん、その後にハチロクを知った若い世代にとっても注目の一台となるのは間違いない。初代と同じ向きで並ぶ画像に感無量 「ハチクロの名に恥じることなく、ハチロクを超える楽しさを」トヨタが公開した特別仕様車の画像はたまらない。手前に白いGR86がフロントノーズを右に向け、その奥にモノクロの白いAE86(スプリンタートレノ)が同じ向きで並ぶ。こうして2台のサイドビューを比較して見ると、意外にも共通性のあるシルエットであることがわかる。いずれもフロントエンジン・リヤドライブ(FR=後輪駆動)のスポーツカーなので、ドライバーがリヤタイヤの少し前に着座するなど、理想のレイアウトになっている。一言でいえば、どちらもカッコいい。2台の画像の横には「40thyearofPureSportsCar」のコピーとともに「40年前。1台のクルマが走り出した。その名はAE86。走ることを楽しむという純粋な喜びを、多くの人に伝播させていった。いま、その道をGR86が走っている。ハチロクの名に恥じることなく、ハチロクを超える楽しさを追い求めて」という文章が並ぶ。姉妹車「レビン」と「トレノ」でデビュー...幅広い世代に愛され、いまも街で見かける初代ハチロクことAE86は1983年、後輪駆動最後のカローラレビン、スプリンタートレノとしてデビューした。レビンとトレノは姉妹車で、型式が共通のAE86であることから、ハチロクと呼ばれた。当時としては比較的安価で高性能なスポーツカーで、全日本ラリー選手権などモータースポーツでも活躍した。初代ハチロクは1987年に生産終了となるが、今も街中で走っているのをたまに見かける。筆者は路上で初代ハチロクを見かけるたび、どんなドライバーが運転しているのかウォッチしている。筆者と同じ還暦前後のシニアはもちろん、30歳前後と思われる若者が運転しているケースもあり、ハチロクが幅広い世代に愛されていることに驚く。もちろん、40年も前のハチロクを維持するのは並大抵の苦労ではない。トヨタは純正部品の一部復刻を始めたが、部品調達は困難だ。現役を維持するには膨大な手間とコストがかかるのは、旧車を所有するオーナーなら、誰もが直面することだ。そんな苦労を乗り越え、長く愛される日本車はハチロク以外には見当たらない。強いて言えば、日産のハコスカ(1968年発売の3代目スカイライン)くらいだが、現存する台数ではハチロクにかなわないだろう。9月末から期間限定で「商談予約の抽選受付」...一体どんな商談? 発売は24年2月ごろそのハチロクが40周年と聞くと、筆者のようなアラカン世代には感慨深いものがある。トヨタもGR86の特別仕様車で、この世代を狙っているのは間違いない。GR86の特別仕様車はRZグレード(ラリー、レーシング+究極を意味するZ)をベースに、初代ハチロクの「赤黒」と「白黒」のツートーンカラーをイメージさせる専用デカールを装備する。「赤黒」と「白黒」のツートンはハチロクの代名詞だった。コックピットにも「SINCE1983」などAE86を感じさせる専用ロゴや加飾が並ぶ。40周年の特別仕様車「RZ40thAnniversaryLimited」は200台限定だ。全国のトヨタの専門販売店「GRGarage」を通じ、「9月25日から10月9日までの期間限定で商談予約の抽選受付を行い、10月25日から商談を開始、2024年2月頃から販売する」というから、ややこしい。どんな商談をするのかわからないが、トヨタが強気なのは間違いない。価格はMTが382万2000円、ATが392万円と、ベースモデルのRZより35万円ほど高い。筆者のようなアラカン世代なら、退職金で生誕40周年記念のハチロクを購入する強者もいるのではないか。年金でローンを組む「かつての若者」もいるかもしれない。(ジャーナリスト 岩城諒)
記事に戻る