あの英BBCが推しコメント! 長野県・白馬村が「2023年世界の観光したい村」選出 ニセコ、京都に続いて「Hakuba」に外国人観光客は殺到するのか?(井津川倫子)

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   自然豊かな観光地として知られる長野県の白馬村が、2023年度の「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に選ばれました!

   国連世界観光機関(UNWTO)が21年から始めたもので、23年度は世界中から54のビレッジを認定。日本からは北海道の美瑛など4地域が選出されましたが、初年度にあたる21年度は2地域、昨年はゼロだったことを考えると、日本の躍進ぶりが目立ちます。

   「知る人ぞ知る」観光地が世界的に認知される絶好のチャンスですが、華やかな「国際デビュー」にはマイナス面もあるようです。21年に選ばれた京都の美山町では、外国人観光客が急増して「ある問題」が起きていました。

まるでミシュランの「里山版」? 英BBC、白馬を「おもてなしマインドが、すばらしい!」と絶賛

   「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」は、観光を通じて人口減少に悩む地方の活性化を図ることを目的に、「自然環境を保存しているか」「環境的持続可能性へのコミットメント」「文化遺産の保存」など、9つの基準に基づいて選出しているそうです。

   なんだか、ミシュランの「里山版」のようなイメージですが、「人口1万5000人以下」という条件からもわかるように、いわゆる観光地ではなく、世界的に「ほぼ無名」の地域が対象なのが特徴。23年度は事前にノミネートした55か国260地域のなかから、29か国54地域が選ばれましたが、うち日本が4地域を占めるという結果となりました。

Japan has four of the best tourism villages in the world for 2023
(ベスト・ツーリズム・ビレッジの選考で、2023年は日本の4地域が選出:タイムアウト誌)

   白馬村、美瑛と並んで選ばれたのは、岐阜県の白川と宮城県の奥松島。「認定」の有効期限は3年間で、この間は「認定ロゴ」を使用した広報活動が認められたり、UNWTOの情報発信サポートを受けられたりと、世界的に知名度がアップする効果が期待できるようです。今回選ばれた4地域は、晴れて世界的な観光地の仲間入りをした、と言えるでしょう。

   なかでも注目を集めるのは、長野県の白馬村です。なんと、あの英BBCが、「ベスト・ツーリズム・ビレッジ2023」に選ばれた54地域から、さらに「ベスト」な5地域を選びぬいた「ベスト・オブ・ベスト」の5地域に、白馬村を選んだのです! 日本から選ばれたのは白馬だけですが、なぜ、BBCは「白馬推し」なのでしょうか。

   BBCが「白馬推し」の理由として挙げているのは、「Hakuba's culture of hospitality(白馬のおもてなし文化)」です。20年近く前に白馬を訪れたオーストラリア人が、観光シーズンでどのホテルも満室だったにもかかわらず、「廊下に布団を敷いて歓迎してくれた」体験を紹介。オーストラリア人はその後、白馬に移住して今でもホテルを経営しているそうですから、よほど白馬の自然と人々に魅了されたのでしょう。

   この「白馬のおもてなし文化」について、冷静な分析を試みているのが「堅物」BBCらしいところです。BBCによると、雪が降り積もり、時に道路が閉ざされることがある白馬では、観光客が足止めになったり、立ち往生したりすることがあり、「困っている人は泊めてあげる」精神が根づいているから、だそう。

   雪の多さや交通の不便さでは、白馬よりも厳しい条件の観光地もありますから、このBBCの分析はちょっと説得力に欠ける気がします。それでも、「白馬は冬のスキーだけでなく、秋の紅葉も楽しめる」「onsen(温泉)が人気」(いずれもBBC)など、魅力あふれる地域であることは間違いありませんから、「白馬推し」も頷けます。

   ちなみに、今回、「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に選ばれた国では、日本の4地域が最多で、チリと中国の3地域が続きます。G7(主要国首脳会議)のメンバーでは日本とイタリアだけです。

   日本がノミネート活動に熱心なのか、それとも他の先進国と比べて自然豊かな観光地が多いのか真偽のほどは定かではありませんが、歴史的な円安を追い風に海外からの観光客をさらにひきつけることは間違いないでしょう。

21年に選ばれた京都の美山町では、外国人観光客の「トイレ問題」が勃発!

   過去に「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に選ばれて「国際デビュー」した地域には、世界中から観光客が訪れているようです。たとえば、21年度の「初代ベスト・ツーリズム・ビレッジ」には、北海道のニセコと「かやぶきの里」として有名な京都府南丹市の美山町が選ばれました。

   すでに、国際的観光地として名前が知られていたニセコと異なり、「知る人ぞ知る」観光地だった美山町には、「認定後」に訪日観光客が急増。休日には大型バスが1日10台以上訪れるなど、「コロナ禍前のピーク時に近づいている」(地元関係者)と歓迎する一方で、訪日観光客が引き起こす「トイレ問題」に頭を悩ませているそうです!

   美山町の公衆トイレは、大半が旧来の和式便器のまま。使い方が分からない外国人観光客が間違った使い方をしたり、大量のトイレットペーパーが散乱したりと、異臭や汚れが問題になっているというのです。

   コロナ前から「トイレ問題」はあったものの、海外での知名度アップや歴史的な円安を背景に訪日観光客が急増した結果、以前よりも問題が目立つようになった、と報じられています。

   同じく初代「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に選ばれたニセコでも、冬のスキーシーズン中は、タクシー不足で地元住民の生活に影響が出るという「オーバーツーリズム」が課題になっていました。先日、シーズン中は札幌や東京からタクシー車両と乗務員を派遣する案が発表されましたが、果たして効果のほどはいかに、といったところでしょう。

   「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」に選定された地域では、喜びに沸く地元観光協会や政治家たちの様子がニュースになっています。静かな村々に訪日観光客が押し寄せて大丈夫なのか、オーバーツーリズムが生じても「白馬のおもてなし文化」は健在なのか...。心配が稀有に終わることを望むのみです。

   それでは、「今週のニュースな英語」は、「hospitality」を使った表現を紹介します。「ホスピタリティ」としてすっかり日本語でも定着していますが、「おもてなし」を表す単語として覚えておきましょう。

Thank you for your kind hospitality
(手厚いおもてなしに感謝いたします)

I'm working in hospitality industry
(サービス業で働いています)

Your hospitality has been great!
(あなたのおもてなしは、すばらしい!)

   自然豊かな「ビレッジ(村)」の知名度を上げて、世界中から観光客を誘致するという発想は理解できます。それでも、選定リストに並ぶ「名前を聞いたことがないような田舎の村」を見ると、「こんな田舎に観光客が押し寄せて大丈夫なのかな」という心配が先立ちます。

   いろんな地域に足を運んで、理想の地を「やっと見つけた!」という喜びこそが旅のだいご味だと思いますが、みなさんはいかがでしょうか。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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