日本社会が抱える4つの課題、ノバルティスファーマが注力する3つの優先事項
スイスに本拠を置くノバルティスは1996年に設立。この数十年間、同社は大きな変革の道を辿った。もともとは多角的ヘルスケア企業だったが、現在では革新的な医薬品に特化した製薬企業へと変わった。この結果、過去5年にわたって売上高および利益率を大幅に伸ばしている。
だが、革新的な医薬品を提供するためには莫大な研究開発費が必要だ。24年度では、93億米ドルが研究開発に支出。そのうち33億7000万米ドルは基礎研究と、応用を必要とする探索的な研究・開発と振り分けている。研究開発部門の従業員数は1万8000人以上にのぼる。
その後、プリシーノ氏は日本社会の課題について言及。それは以下の4点だ。(1)高齢化社会(2)社会保障費の増大(3)ドラッグラグとドラッグロス(4)イノベーションへの公平なアクセス――である。
(3)のドラッグラグとは、すでに海外で承認されている薬が日本での承認を得るまでの時間の差を意味する。また、ドラッグロスとは、すでに海外で使われている薬が日本では開発されていない状態を指す。
こうした日本社会の課題に対し、ノバルティスファーマは3つの優先事項に注力するという。(1)イノベーションを患者さんへ届ける(2)開発を推進する(3)イノベーションエコシステム全体へ貢献する――ことだ。プリシーノ氏は次のように強調した。
「(必要とする患者のためにも)しっかり患者のもとにイノベーションを届ける。また、これからの開発を推進していく。グローバルのパイプラインの中でも、日本のニーズに合わせた研究開発をしているが、さらに、基礎研究から始まり、医薬品の商業化、供給、そして最終的に患者の元に届くまでの過程において、意義のある形でポジティブな医療への貢献に努めたい」
この取り組みは、ノバルティスファーマの売上高にも表れている。24年度は3576億円であり、前年の23年度(3381億円)から5.8%成長した。「この成長は2025年度でも継続していくと予測している」。
プリシーノ氏は、「革新的な医薬品を患者さんに届けることは、未だ満たされていない医療のニーズを埋めていくということ」と説明する。過去5年間、日本で取得した医薬品の承認件数は32件で、そのうち新薬は11件。また、約40の臨床開発プログラムにも取り組んでいる。