アリナミン製薬、飲みやすい工夫として錠剤をイチゴ風味に
では、PPIはこれまでの既存のOTC医薬品とはどのように違うのか? 今回タケプロンsを発売したアリナミン製薬・プロダクト戦略本部 サイエンスコミュニケーショングループの川上亙氏は次のように語る。
「胃酸は3つの神経伝達物質の関与により、胃粘膜にあるプロトンポンプという機構が働くことで分泌されます。
従来の胃酸関連のOTC医薬品は、分泌された胃酸を中和するか、いずれかの神経伝達物質の関与を抑えるものでした。
これに対し、PPIは胃酸分泌の最終段階であるプロトンポンプの働き自体を抑えるため、強い胃酸分泌抑制作用を発揮します」
ちなみに、アリナミン製薬が発売したタケプロンsは、錠剤が口の中で唾液に触れると素早く崩れることで水なしでも飲める「口腔内崩壊錠」という技術を採用したことに加え、薬っぽさを緩和して飲みやすくするため、錠剤にイチゴ風味まで添加している。
さらにPPIの有効成分は、胃酸と触れると壊れてしまうため、タケプロンsでは、錠剤の中に7層コーティングを施した直径約0.3mmの有効成分の細粒を約5000粒含む設計にし、胃酸の影響を受けずに有効成分が腸に届いて吸収されることを実現した。実はこの技術は、ほかにも利点をもたらしているという。
「胃から十二指腸への食物通過を調節する出口機能とも言える幽門がありますが、ここは閉じている時でも直径約2mmの隙間があります。
タケプロンsの有効成分を含む細粒はそれよりも小さいため、胃の動きに関わらず幽門を通過しやすく、腸への到達時間を短縮できます。
さらに、細粒を小さくしたことで、服用時に口の中で感じる不快なざらつきを軽減しています」
今回、タケプロンsは、薬剤師が対面で情報提供と指導を行ったうえでの販売が義務付けられている要指導医薬品となる。そのため購入希望者は、予め用意されたチェックシートを使って症状、基礎疾患、アレルギー歴、他の服用薬の有無などを薬剤師から確認を受け、問題がなければ購入が可能になる。
なお、使用上の注意では、3日間服用しても症状が改善しない場合は服用を中止して医師・薬剤師に速やかに相談すること、たとえ効果を感じていても2週間以上の服用は避け、医療機関を受診することも求めている。これは重大な病気などを見過ごさないようにするためである。
昨今、「セルフメディケーション」という言葉をよく耳にするようになったが、この言葉の意味を医療機関を受診せずに自力・自己判断で症状改善を実現することと誤解している向きもある。しかし、真の意味は、「医師・薬剤師などの専門職に適宜相談をしながら、自身の健康管理に自発的に取り組むこと」である。
PPIのようなスイッチOTC医薬品は、今後増えてくることが予想されている。身近な医師や薬剤師に相談しながら、こうした薬剤を上手に活用したい。