神戸市の独自SDGs施策...持続可能な都市づくり「森の未来都市 神戸」、資源循環モデル「こうべ再生リンプロジェクト」の現在地

下水汚泥からリンを回収→再生リン肥料として活用

   もう1つの重要な「資源循環」の取り組みでは、輸入依存度の高いリン資源の国内生産への貢献を目指す「こうべ再生リンプロジェクト」に力を注ぐ。

   2011年度から取り組むこのプロジェクトでは、下水汚泥からリンを安定的に回収し、再生リン肥料として市内の農家に供給する。再生リン肥料は、神戸産農産物の生育に活用し、さらに市民の食卓や学校給食へと循環させることに成功した。

   「神戸市内で全て完結できる」強みをもつこのプロジェクトは、リンの市内需要以上の供給も見据えた全国の先駆けとなるモデルだと、黒田氏は自信をのぞかせた。

   「こうべ再生リンプロジェクト」について、神戸市建設局下水道部計画課・清水武俊氏が登壇し、リン資源循環の技術や普及などを説明した。

   農業に不可欠なリン資源だが、現在は100%海外(主に中国)からの輸入に依存しており、国際情勢の変動による価格高騰は農家の家計を圧迫する。こうした課題解決と食料安全保障への貢献をめざして、下水汚泥からのリン資源化プロジェクトを進めてきた。

   技術的には、汚泥に水酸化マグネシウムを加え、高濃度のリンを結晶化・抽出(MAP法)し、不純物の除去、洗浄・乾燥を経て、粉末状の「こうべ再生リン」(肥料の原料)を回収している。

   さらに、「こうべ再生リン」の普及に向けて、各作物に適した配合がなされている肥料「こうべハーベスト」を開発、農家が散布しやすい形で製品化した。当初は「汚泥由来」というネガティブなイメージや安全性・成分安定性などへの懸念があったものの、農家のみなさんへのデータや情報提供などを行うことで、払拭されているという。

   現在、再生リンを活用して栽培された10種類以上の野菜や米は「BE KOBE農産物」として販売されたり、市内の学校給食にも活用されたりしている。今後に向けて、年間400トンの市内農地の必要量に対し、現在の供給量200トンをもう1基増設して300トンまで拡大したいという。将来的には、市内のみならず全国での資源循環への貢献を目指したい考えだ。

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