2019年 12月 15日 (日)

霞ヶ関官僚が読む本
若手マンガ家が夫婦で乗り越えた「がん」との闘い 病を通じて「生きる」を知る

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「さよならタマちゃん」(武田一義著、講談社)

   2人に1人。日本人が「がん」に罹る確率である。ありふれた病でありながら、「死」を連想させるためか、日頃、多くの人々が気にはなりながらも敢えて意識下に押し込めている病気。しかし、それは突然にやってくる。心の準備など無い中で、突如、告知され、治療が始まる。手術、抗がん剤等の治療の苦しさのみならず、家族、仕事、お金の心配、そして、何より、「死」という究極の問題に向き合うことを余儀なくされる。本人だけでなく、家族も、大きく混乱し悩む。

   本書は、35歳のマンガ家のアシスタントが自らの体験を描いたがん闘病マンガ。病名は、がんの中でも珍しい精巣腫瘍(年間千数百件)。抗がん剤が効く比較的予後の良いがんだが、著者の場合、肺への転移があったため、徹底的な抗がん剤治療が必要となった。

   新聞で本書の紹介記事を読み、筆者自身、家族が最近、類似の体験をしたこともあり、思わず手に取った。

1冊のマンガに「人生」が詰まっている

「さよならタマちゃん」
「さよならタマちゃん」

   プロローグを含めて全26話、わずか278ページの1冊のマンガに、がん患者と家族が体験する様々な状況、そして、心の中に湧き起こる感情や気持ちが、しっかり描き込まれている。

   最近流行りの医療ドラマのようなヒーローはどこにもいない。名医も、ナイチンゲールも、また、がんを潔く受け入れ「立派に」死んでいく患者も登場しない。ただ、そこに描かれているのは普通の私達。突然、がん患者という境遇になり、戸惑い、混乱し、そして、葛藤の中にあって、「生きることとは何か」を感じとっていく様子が、淡々とした筆致で描写されている。

   「重い」テーマであるし、抗がん剤治療の苛烈さ(極度の吐き気、味覚・嗅覚・聴覚の異常、うつ症状等)、同室の高齢のがん患者の再発・死亡、治療後の再発の恐怖など、数々の厳しい現実が描かれているが、不思議にも、読む者に深く、静かな感動を与える。絵柄や筆致の影響もあるのだろうが、著者が自らの体験、そしてその時の心持ちを十分に咀嚼した上で、力むことなく、素直に、表現しているからだろう。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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