違和感拭い去れないチョムスキーの米政府プロパガンダ論考
2015.05.21 15:13
0
主張の行き過ぎ
戦争を絶対悪とし、いかなる国であろうと弾圧や虐殺を決して看過しない。人命尊重と言論の自由をお題目とせず毅然として闘う著者の姿勢は、その後に出された国連の「人間の安全保障」のコンセプトに通じる。著者は徹底したモラリストであろう。
だが著者の議論はさらに広がり、辺見氏のインタビューでは日本の対外政策批判のみならず、天皇の戦争責任を問わない日本の知識人をも批判するに至る。だがこれらも証拠の提示がないのである。
高名な論客である著者の主張に容喙するのはおこがましいが、チョムスキーは先の大戦について何をどこまで知っているのであろうか。一人の人間の情報収集には自ずと限界があり、チョムスキーが言語学者だからといって日本語を読みこなせるわけでもあるまい。米国のことは米国人チョムスキーに譲るとしても、著者の日本に関する主張には行き過ぎがあると言わざるを得ない。