2018年 7月 23日 (月)

他者のために使う時間こそが貴重―― 大人になって身に染みる「先生」の言葉

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   ■「十歳のきみへ―九十五歳のわたしから」(日野原重明著、冨山房インターナショナル)

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   「生活習慣病」の名付け親にして、百歳超でなお活躍された聖路加病院名誉院長の日野原重明医師。先ごろお亡くなりになった日野原医師が、小学校での講演活動を重ねる中、より多くの子供たちにメッセージを発したいと書かれたのが本書である。

   著名人のベストセラーに書評を加える余地などないものの、日野原医師の業績に敬意を表するとともに哀悼の意を込め、ご紹介したい。

大人にも示唆に富む人生哲学の書

   諸賢ご案内のとおり、日野原医師には多くの著作がある。『生き方上手』などと並ぶ代表作とされる本書は、十歳の少年少女に宛てながら、大人にも示唆に富む。

   良きキリスト教徒であった医師の面目そのままに、著者は相手の痛みを理解する想像力を重視する。これが無宗教あるいは仏教的素養の日本人にも受け入れやすいのは、著者が普遍的な人間真理を語っているためと言えようか。

   巻末に小学生の読後感想文が掲げられている。

   曰く、

「今その時どきの年齢に一生けん命に命を注ぎながら生きなさいということ。注がれた命は、どんどん私の中にたまっていき、将来たくさんの人や社会に役立つ人間になるための大切な宝物になっていく」

   あるいは曰く

「自分のためだけに時間を使っているようでは駄目なんだと言う先生の言葉に、サッカーボールが顔面に直撃したくらいショックを受けました」

著者の人生哲学を真っ直ぐ受け止める子供たちの感受性、まぶしいばかりである。

   だらしない評者のような親が子に説教しても説得力はないものだが、長い人生を通して実践を怠らなかった医師の言葉は通じるところも大きかろう。怪しげな自己啓発書の宣伝が幅を利かせる昨今だが、こうした感想文を読み、また多くの大人が本書を子弟に贈っている話を聞くと、この社会もまだまだ捨てたものではないと感じる。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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