2024年 4月 26日 (金)

大学改革が行きつくところ

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ほとんどの大学の幹部は、表面的な数値目標だけ達成しようとする

   また、現場で、「大学改革」に巻き込まれている関係者の心中を理解するのに最適な、問題提起の1冊が、「FOOL on the SNS―センセイハ憂鬱デアル」(仲正昌樹著 明月堂書店 2017年7月)である。この本は、明月堂書店のブログ「月刊極北」に、2012年9月27日から2016年9月2日の4年間にわたる連載をまとめたもので、SNS上での瞬間芸的な議論を辛辣に批判する。

   仲正氏は、2004年から金沢大学法学部(法学類)教授で、2017年9月には、NHK・Eテレの「100分de名著」の講師を務め、ハンナ・アーレントの「全体主義の起源」を講じた。「アーレントのメッセージは、いかなる状況においても「複雑性」に耐え、「分かりやすさ」の罠にはまってはならない」だとする。上述の「大学」で学ぶ意義に通じる。

   この本の中に、『「スーパーグローバル大学」とは何か』(2014年11月6日)と題する章がある。このカテゴリーの大学は、国際ランキングを上げるため、留学生の数や英語の授業の割合を増やすことを目標に掲げるが、文科省などはすぐに結果を出すことを求めることから、現場では、入学試験の基準を下げたり、住環境を整えたりして、留学生を増やす。また、英語でやる授業を早急に増やそうとすると、留学生向けの簡単な日本文化紹介の授業でやり、そこに日本人学生を参加させる、というような安易な手法になると、警鐘を鳴らす。「ほとんどの大学の幹部は、(中略)ひたすら各学部、教員にプレッシャーをかけて、表面的な数値目標だけ達成しようとする」という。まさに、「センセイハ憂鬱デアル。」

   大学の現状は、いまや大きな岐路にあることは間違いない。卒業して終わりということではなく、もっともっと多くの国民の関心が集まり、議論が深まることを期待したい。

経済官庁 AK

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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