2024年 4月 25日 (木)

西郷どんが残した「人生の教え」 わずか20ページに重厚な中身

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南洲にまつわるエピソードが興味深い

   佐藤一斎の『言志四録』も夙に有名だが、第二章は、南洲の手によるその抄録である。一斎の箴言とその読み下し文を掲げた後、編者はそこに寸評を加える。終章の「逸話」と併せ、そこに示される南洲にまつわるエピソードが興味深い。

   例えば、箴言四七に続く評は以下の如くである。

「某氏南洲に面して仕官を求む。南洲曰ふ、汝俸給幾許を求むるやと。某曰ふ、三十圓ばかりと。南洲乃ち三十圓を與へて曰ふ、汝に一月の俸金を與へん、汝は宜しく汝の心に向うて我が才力如何を問ふべしと。其人復た来らず。」

   己がその俸給に値するかを自問せしめたこの南洲の言葉は、福島県二本松城にある戒石銘にもつながろう。戒石銘は、二本松藩の五代藩主・丹羽高寛公が、儒学者・岩井田昨非の勧めに従い、藩士の戒めとするべく碑に彫らせた文である。

   二本松城址に赴くと、登城するための緩やかな坂道の途上に、大きな花崗岩の碑が鎮座している。「爾俸爾禄 民膏民脂 下民易虐 上天難欺」とあるその銘文の意味は、「お前がお上から戴く俸禄(給料)は、民の汗と脂の結晶である。下々の民は虐げ易いけれど、神をあざむくことはできない」(二本松市ホームページより)とされる。

   南洲は若き頃、薩摩藩の徴税吏であったが、納税が滞る民に自らの俸給を施すなどしていたと聞く。本書でも、西南の役で戦線拡大を提案された南洲は「戰地を廣げると農作を荒らし、民家を燒き、人民の苦しみとなる。戰は城(熊本)で定まる。戰地を廣げること相成らず」と下命したなどの逸話が出てくる。

   戒石銘の精神を体現した人物というべきではないか。

   かつての内務官僚は戒石銘を貴んだと聞くが、戦後の歴代自治次官の中にも、新入省者への訓示でこの銘文を紹介した方があるという。

   戒石銘は、現代にあっても、否、現代だからこそ、官吏がその上下を問わず服膺するべきと思う。同時に、この実践と言える南洲遺訓も座右に置くべきものであろう。

酔漢(経済官庁・Ⅰ種)

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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