2018年 7月 22日 (日)

権利とは作られたり、作られなかったりするものである

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■『ゲーム理論と法哲学』(伊藤泰著、成文堂)

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   フォン・ノイマン、モルゲンシュテルンによる『ゲームの理論と経済行動』(1944年)の出版以来、ゲーム理論の発展は著しい。経済学にとどまらず、政治学、進化生物学など様々な学問で、思考を組み立てる上で不可欠の道具となっている。

   本書『ゲーム理論と法哲学』(2012年)は、ゲーム理論を用いて、法哲学、具体的には立憲プロセスにおける憲法上の権利の創設という課題に挑んでいる。本書が議論の基礎においているのは、ゲームのなかでも、「男女の争い」といわれるゲームである。「男女の争い」とは、次のような利得構造を持つ。

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「男女の争い」とは? 「相関戦略」とは?

   男性と女性のカップルがいるとして、デートの行き先に、男性はボクシングを観にいくことを希望し、女性がバレイを観にいくことを希望する。しかし、電話が通じない等の理由により、ふたりは相手がどちらに行こうとしているのかわからない。彼らはそれぞれが好きなものを単独で観るよりは、あまり気の乗らないイベントであっても一緒に出かけたいと思っている。すなわち、IIIはもちろんのこと、IIの利得もふたりともゼロである。

   この利得構造は、利害対立が存在するものの、なんからの妥協を図ることで、IかIVを選ぶことで互いに利得を高めることができるという政治環境の基本構造をうまく取り出している。この認識が本書の出発点にある。

   さて、カップルは、IとIVのどちらを選べばよいのか。そのためには、IかIVのどちらかを目立たせることができればよい。そのための戦略をゲーム理論では、「相関戦略」と呼ぶ。コイントスでどちらかを選ぶというルールに事前に同意することもひとつの例である。そして、政治環境で多用される、多数決もまたひとつの相関戦略であるという。

   立法段階と対比される、立憲段階でのゲームでは、まさにこの相関戦略としてどのようなものがよいかが問題になる。立法段階では、ある特定の相関戦略(例えば、単純過半数)を前提にして、ある法案の採否が問われる。他方、立憲段階では、どのような相関戦略(単純多数決か、全会一致かなど)が問題になる。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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