2020年 4月 3日 (金)

HY、原点を見失わない
どこかほっとする希望の見えかた

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沖縄発のラブソングを届けるために

   DISC1に「そこにあるべきではないもの」という曲がある。一位になった2004年のアルバム「TRUNK」の中の曲だ。

   歌われているのは「老婆」である。炎天下の砂浜で「そこにあるべきではないもの」を拾い歩く姿を見て思うこと。「捨てる軽さ」と「拾う重さ」と「手を差し伸べられないふがいない僕」。悲しみも憎しみも全て飲み込んで輝くこの島。「この地に似合わないものは思い出とともに持ち帰って」と歌われている。

   歌詞の中に「そこにあるべきではないもの」が何であるのかは歌われていない。

   夏休みに沖縄に行かれた方、「この地に似合わないもの」はきちんと持ち帰ったでしょうか。

   HYを全国区の存在にしたのは、何と言っても2010年の「紅白歌合戦」だろう。その時に歌われたのがDISC2に入っている「時をこえ」だった。

   全曲解説には許田信介がこう書いている。

「実際に泉が戦争を体験したおばあちゃんから話を聞いて、命の尊さを歌いあげた曲。また、沖縄の伝統であるエイサーの太鼓が命の鼓動のように響いてくる一曲です」

   おじい・おばあから聞いた戦争体験と「命どう宝」という言葉。伝えなければいけないかけがえのないもの。曲の中にはアメリカ人のゴスペルコーラスも加わっている。アルバム発売当時、作者の仲宗根泉は、「この曲は彼らと一緒に歌わないといけないと思った」と話していた。

   結成18年。2013年には東京の事務所から独立。自分たちのレーベルも持った。海辺に作ったスタジオがその拠点となっている。

   原点を見失わない。時の流れに惑わされず音楽に向き合っている。家族、友人、そして自然――。

   沖縄の海は青い、そして空は広い。

   彼らの曲を聞きライブを見る。そして話をするたびにどこかほっとするのは、そこにいくつもの希望を見るからなのだと思う。

   HYは、9月から来年にかけて3度目の全都道府県ツアーに出る。

   沖縄発のラブソングを届けるためにだ。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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