2020年 10月 1日 (木)

世界を変える「ものの考え方」―地球温暖化問題の場合

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世界の哲学者はどのような「ものの考え方」をしているか

   世界の哲学者は温暖化問題に際して、どのような「ものの考え方」を提示してきたのか。この論題については、第2章「気候正義の分配原理」(宇佐美)、第5章「気候変動の正義と排出をめぐる通時的問題」(井上彰)がまとまった整理を提示している。地球温暖化問題が他の世界的課題と異なるユニークな点は、問題が世界規模のものであるにとどまらず、複数世代にまたがる長期の問題であることにあり、その意味では、特に第5章に書かれていることが重要である。

   東京大学の井上准教授は、第5章で、世代間問題としての地球温暖化問題の抱える困難として、非同一性問題と非互恵性問題の存在を指摘している。非同一性問題とは、温暖化対策を実施しなかった場合に一見被害を受けているようにみえる未来の人々は、温暖化対策を実施した場合には生まれてこなかったはずの人々であるから、実のところ、被害者としての資格を欠くのではないかというパラドキシカルな議論である。非互恵性問題とは、後続世代は先行世代に対して助けることも危害を加えることもできず、互恵性が成立しないことから、世代間には協働の基礎がないという問題である。本章では、ロールズの契約論(その変形としてのガスパート&ゴセリーズの議論)、互恵性を前提としない合理的契約論(ゴーティエ、ヒース)、左派リバタリアン、運の平等論といった議論が俎上にのせられている。井上准教授は、これらのいずれも満足のいく「ものの考え方」ではないという判定を下している。ガスパート&ゴセリーズの議論は、将来世代が正義原理を遵守するという理想的状況が前提となっており、非理想的状況ではうまく機能しない。ヒースの議論は、定常状態を前提しており、急激な気候変動への対策にはならない、などといった具合である。惜しむらくは、本章はポジティブな考えの提示を欠いている。どのような「ものの考え方」ならばよいのか出口を提示するに至っていない。それでも、この問題の抱える困難の基本構造を理解する上で、本章は有益な論考を提示している。

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