2020年 1月 27日 (月)

今の日本企業に欲しいアーティスト思考

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■『Art thinking アート思考』(著・秋元雄史 プレジデント社)

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   「We are artists, not engineers.」これはスティーブ・ジョブズがアップルの社員に伝えた言葉だ。アーティストは経済活動とは遠く離れた存在だと、自分自身思っていたところがある。だが、歴史を遡れば、レオナルド・ダ・ビンチも、芸術家であると同時に、科学、工学、建築、土木等の多様な分野で顕著な業績を残しており、科学者やエンジニアとしての才をみることができる。また、アート市場は7兆円とも言われる一大産業でもある。

   本書の著者は、地中美術館を中心としたベネッセアートサイト直島を成功に導き、その後、金沢21世紀美術館を国内美術館最多の来館者数となる年間255万人を達成する現代美術館に育て上げた立役者である。評者は両方とも行ったことがある。地中美術館はモネの睡蓮のほか現代アートを安藤忠雄設計の建築と一体となって感動的に演出してくれる。さらに、古民家を芸術作品に改修した「家プロジェクト」を含め、島全体を現代アートでプロデュースし、国内以上に海外で有名な観光地になっている。金沢21世紀美術館は、今や、古都金沢のキラーコンテンツであり、市民にも親しまれている。

芸術家と科学者や起業家との発想の近さ

   本書では、現代アートの見方を説明するにとどまらず、アート思考と経済・社会における思考との間において、アート思考の有用性を興味深く語ってくれている。この有用性は、アーティストと科学者や起業家との発想の近さに見られるという。すなわち、アーティストに求められるのは、社会に対する問題提起、つまり新たな価値を提供し、歴史に残るような価値を残していけるかどうかという姿勢を極限まで追求するところにあるとする。その際、答えを引き出す以上に、俯瞰した視点で問いを立てることで「思考の飛躍」が可能になるとしている。また、科学者や起業家には芸術家のような創造的な才能が必要で、芸術家にもまた現実主義的な視点が必要であるとしている。

   こうしたアート思考の分析の上で、不確実性が増している現代社会において、現代アートは自らの頭で主体的に考えることができるトレーニングになるものであり、また、企業のトップにはアート的な発想が求められるとしている。とりわけ、日本の企業経営では「改善」の価値が強調されるが、単なる「改善」ではなく、既存のものとは全く異なる発想を行うときに求められるのが、ゼロから何かを生み出すアーティストの思考方法としている。職人を過度に美化し、イノベーションを起こせなくなった日本企業に最も欠けている部分かもしれない。

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