2020年 12月 1日 (火)

人口問題を通して持続可能な社会保障制度を考える

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■『人口で語る世界史』(著・ポール・モーランド 文藝春秋)

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   世界最高水準の超高齢社会、日本。これは同時に、人類史上、初めて直面する状況でもある。行政面でも、社会保障制度の整備や財政の持続可能性など、課題は多い。この我が国の人口問題を世界史の中でみると、どのように位置づけられるのか、そんな問題意識で手に取ったのが本書である。

マルサスの人口論が当てはまるのは18世紀まで

   本書は、19世紀に入ったころからの200年間をターゲットにしている。10万年とも500万年とも言われる人類史の中で、この200年に焦点を当てているには理由がある。それは、産業革命以降、人類は急激な人口動態の変化に直面しているからである。人口論は突き詰めれば、死亡率、出生率、移民で人口動態を整理できる。この極めてシンプルな構造の中で、この200年の激動の時代を興味深く描いている。

   人口論と言えば、マルサスを思い浮かべるが、人口の増加は食料等の生活資源、そしてそれを生み出す土地によって制約されるというこの論理は、18世紀までは当てはまるが、マルサスと同時代に起きた産業革命により、理論的にも実績的にも破綻し、人口は急増していく。

   すなわち、産業革命以前、今から考えれば、人類の寿命は短く、乳児死亡率も極めて高かった。産業革命はこの人類を取り巻く環境を大きく変えた。乳児死亡率は劇的に低下し、寿命も延伸を続ける。その後、次第に出生率は低下するが、その間のインパクトにより、人口増加トレンドは続く。そしてその一部が移民となって新たな大陸を開拓していく。この人口動態の激変は英国、アイルランドを含むブリテンに始まり、急増する人口は、軍事力・経済力の基礎となるとともに、大量の移民により、米国、カナダ、オーストラリア等の国家を作っていくことになる。この爆発力はすごい。英語を国際共通言語にしてしまった!

   さらに、マルサスの理論を覆す第2波が、ベビーブーム世代である。日本でも団塊の世代として語られるこの現象は、日本の人口動態に大きな影響を及ぼしたが、日本は比較的短期間(3年程度)で収束したのに対し、米国はかなり長く影響が及び、今日の超大国の基礎になっている。

   既に、中国、日本、韓国等の東アジア諸国はピークを越え、急速に老いゆく局面にあり、他方、現在、政情不安が続く中東と北アフリカは平均年齢が若く、まさに人口動態の影響を受けている。若さが政治的不安定要素であるともする。そして、今後は、サハラ以南のアフリカにこの大きな波が及んでいく。50年後、世界の勢力地図の変化は、確実な未来なのである。

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