2024年 3月 29日 (金)

大富豪の役割 元村有希子さんが前澤友作氏の宇宙旅を評価する理由

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   サンデー毎日(1月2-9日合併号)の「科学のトリセツ」で、毎日新聞論説委員の元村有希子さんが実業家 前澤友作氏(46)の宇宙旅行を論じている。

   前澤さんは衣料通販サイト運営会社「ZOZO」の創業者。昨年12月8日、ロシアのソユーズ宇宙船で地球を離れ、日本の民間人として初めて国際宇宙ステーションに滞在、12日後に無事帰還した。無重力での生活をリアルタイムで発信したほか「宇宙なう」「地球は確かに青かった」などのツイートが話題に。負担した「旅費」は約100億円とされる。

「はしゃぐ様子に『そんな無駄遣いする金があるなら、困っている人のために使ったらどうだ』などと言う人がいる。けれど、100億円払って『宇宙へ遊びに行く』ことも、大金持ちの役割だと私は思う」

   結論を冒頭に置いた、紙面でいえば社説のような構成である。

「宇宙開発はこれまで、国威発揚とか資源獲得とか覇権競争とか、マッチョな目的で進められてきた。巨額の投資に踏み切れるのは国家ぐらいしかなく、そうなれば多くの人が納得できる、分かりやすい理由を掲げるしかなかった」

   そんな「常識」を、前澤氏を超える大富豪たちが変えつつある。

   元村さんによると昨年は「宇宙旅行元年」で、アマゾンやヴァージンといったベンチャー創業者が本物の無重力を体験した。職業飛行士でなくても、頑強な肉体がなくても宇宙に行ける時代の到来だ。筆者は当然、これも前向きに評価する。

   「無鉄砲で無邪気な彼らの挑戦が近い将来、宇宙利用の裾野を広げ、身近にしていくことは確実だ」「大富豪が、自分の稼ぎで手がけるなら、ハードルは低くなる」と。

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芸術家も月へ

   もちろん、たいていの億万長者は実業家の顔も併せ持ち、宇宙旅行にしても単なる道楽や暇つぶしではない。元村さんは、前澤氏についても「新規ビジネスの布石とみればお値打ちかもしれない」とにらむ。チケット一枚で宇宙に行ける時代を前に、自身が体験した100日間の訓練や12日間の宇宙滞在記録は、最高に美味しいソフトになるはずだ。

   米国の電気自動車大手テスラのCEOとして知られるイーロン・マスク氏は、自ら起業したスペースX社で開発中の宇宙船「スターシップ」で月に行く計画を公表している。数人の芸術家を招待する計画で、どんなインスピレーションがわくのか楽しみらしい。

「〈何用あって月世界へ? 月はながめるものである〉。アポロ11号の月面着陸(1969年=冨永注)を、コラムニストの山本夏彦はこう皮肉った。あれから半世紀余り。私たちは面白い時代の幕開けを見ることになるのかもしれない」

   山本が想像しえなかった「宇宙の民営化」を念頭に、元村さんはこう結んでいる。

「少なくとも芸術の進化の方が、覇権争いよりはるかにわくわくする」

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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